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アンチジャスティス -魔王戦隊ダークトリニティ-  作者: DD22
第4部:断罪と贖罪編

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第4部 第17話『裁く者の名前』

【前回のあらすじ】

一人で背負い込もうとするライガに、アシュレイ、レクス、セイジは自分たちを頼れと伝えた。仲間へ役目を任せたライガは、エルザたちが完成させたゾーエ(変身ブレス)を試し、小さな白炎を取り戻す。まだ変身には届かないまま、一行は公開断罪の日を迎える。


※本作品の執筆にはAIを活用しています。


 正午を告げる鐘が鳴った。


 タワー跡の前には、数十人の住民が集まっていた。

 崩れ残った石段にレヴェリオが立ち、その下には命令書を積んだ机と、並ばされた元兵士たちがいる。撮影装置は、カイの顔をした彼女と、これから裁かれる者たちを各地へ映していた。


 ライガたちは、住民と石段の間で足を止めた。

 正面にグリム、左にネビュロス、右にヴェルミリオン。ライガは三人の少し後ろへ立つ。


 左腕には、ゾーエ(変身ブレス)がある。

 昨日は白炎を受け取った。だが、装甲を作り、戦い続けられるかは分からない。


 ライガは住民の後方へ顔を向けた。

 レクスが退避路の入口に立ち、アシュレイと元兵士へ道順を伝えていた。道の先では、エルザとポルクが救護所への受け入れを準備している。


 セイジは通りの角から、戦場と退避路の両方を見ていた。携帯の通信機を口元へ寄せる。


『ライガ、聞こえるか。こちらは配置についた』


「聞こえる。周りの状況は頼む」


『分かった。君は前を見ろ』


 ライガは石段へ向き直った。


         *


「命令した者も、従った者も、自分がしたことを話して」


 レヴェリオに呼ばれ、兵士の一人が机の前へ進んだ。

 連行した住民の人数を答え、命令書を差し出す。


「誰の指示?」


 兵士は紙を握り直した。

 答えは書いてある。それでも、目の前の顔へその名を告げることをためらっていた。


「読んで」


「……カイ・レグリオ様です」


 住民の間から声が上がった。

 兵士は命令書を持ち上げ、レヴェリオに向けた。


「あなたの承認が入っています。俺たちは、この命令で動きました」


「命令があったことは分かった。君自身は、何をしたの?」


「答えます。ですが……なぜ、あなたが俺たちを裁いているんですか」


 レヴェリオの視線が、紙から兵士へ移った。


「今、君と話しているのはカイではないよ」


「同じ顔で、同じ身体です。別の名前で呼べと言われても、俺には……」


「彼が命じたことを、私の命令にはしないで」


 兵士は紙を下ろした。

 カイの命令に従ったことを問い詰めているのは、カイの身体を使う者だった。問い返しても、その矛盾に答えてはもらえなかった。


「俺も、その命令を部隊へ伝えた」


 レクスが退避路の入口から声を上げた。


「住民を拘束させた。それは俺がしたことだ。カイに命じられたからといって、責任が消えるとは思っていない」


 レヴェリオが彼を見る。


「だが、命じたカイにも話をさせるべきだ。お前が代わりに裁くのではなく、あいつ自身に答えさせろ」


「彼は、もう間違えた。私は同じことを繰り返さない」


 今度はセイジが、通りの角から口を開いた。


「カイはタワーで話した。一つの正しい秩序があれば誰も泣かずに済むと、君が勧めたこともだ」


「彼を支えた。それが悪いの?」


「何を支えてしまったかを聞いている」


 レヴェリオは答えなかった。

 机の命令書を押さえ、兵士へ視線を戻した。


「そいつらの言い訳を聞きに来たんじゃない!」


 住民の一人が叫んだ。


「俺の家は、その兵士に焼かれたんだぞ!」


 兵士が顔を伏せた。

 レヴェリオは、その住民へ向き直った。


「覚えていることを話して」


         *


 家を焼かれた男は、兵士に外へ追い出された後、家へ火を放たれたと話した。止めようとした時には殴られたという。


 兵士は否定しなかった。


「隠れている反逆者を出すために、焼けと……」


「俺たちは、もう外にいた!」


「……はい」


 レヴェリオが石段を下り、兵士の前へ立った。


「中に誰もいないと、分かっていたんだね」


「分かっていました」


「それでも焼いた」


 兵士は頷いた。


 レヴェリオが右手を上げた。

 兵士の両腕が身体の脇へ押しつけられ、首を見えない力が締め上げる。爪先が地面を離れた。


「待て!」


 レクスが一歩踏み出した。

 隣のアシュレイが腕を掴む。その先では、すでにグリムが動いていた。


「殺させへん!」


 グリムが腕輪へ魔力を流し込む。

 ネビュロスとヴェルミリオンも、それぞれの腕輪を掲げた。


「「「魔導展開(マギア・ブースト)!」」」


 グリムの身体から赤熱した魔力が噴き上がり、胸と肩を覆った。魔力は冷え固まった黒曜石のような重装甲となり、腕から脚へ組み上がっていく。背部の排熱口から熱気が噴き出し、装甲の継ぎ目が赤く光った。


 ネビュロスの周囲では、蒼銀の氷晶が重なり合った。胸、肩、肘、膝を隙間なく覆い、全身を守る甲冑を形作る。足元に霜が走り、吐く息が白く曇った。


 ヴェルミリオンには、深紫の艶を持つ外骨格がまとわりついた。昆虫を思わせる滑らかな装甲が四肢を包み、背中で半透明の翅が開く。そこから舞う細かな粉が光を曲げ、輪郭を二重に見せた。


 タワーで強化された、真・魔導外殻《トゥルー・マギア・シェル》。

 三人の魔力を鎧へ変える装置が、再び全身を覆っていた。顔は隠れていない。グリムは牙を剥き、兵士へ向けられた右手に飛びついた。


 装甲に覆われた両手で手首を掴み、上へ押し上げる。

 兵士の首を締める力が緩み、その身体が地面へ落ちた。


「アシュレイ、兵士を!」


 レクスが指示する。

 アシュレイが駆け込み、咳き込む兵士の腕を自分の肩へ回した。腰を支え、引きずるように退避路へ運ぶ。


 グリムは、その二人を背にして踏ん張った。


「罪を認めた相手を、すぐ殺して終わりか。奪ったもんをどう返させるか、聞く気もないんか!」


「また、傷つけられた人に待てと言うんだね」


 レヴェリオが、掴まれた右腕ごと手を下ろした。


 グリムの足元が陥没した。

 両脚が舗装へ食い込み、膝が曲がる。真・魔導外殻《トゥルー・マギア・シェル》が軋んだが、グリムは手首を離さなかった。


         *


「全員、こちらへ! 立ち止まらないでくれ!」


 レクスが退避路を指した。

 元兵士たちが通りの両側へ分かれ、走り出した住民を受け入れる。


 家を焼かれた男だけが、机の前に立ち尽くしていた。


「待て、俺はまだ――」


「話は聞こえた。証言をなかったことにはさせない。今は離れろ!」


 レクスが呼びかける。

 男は助け出された兵士を見て歯を食いしばった。それでも、地面が割れる音に身をすくめ、退避路へ走った。


 ネビュロスが、戦場と住民の間へ氷壁を立てた。

 直後、レヴェリオの背から紫雷が走る。壁の上半分が砕けたが、破片は残った氷へぶつかり、退避路までは届かなかった。


『避難はレクスが進めている。ライガ、右から来る!』


 セイジの声に、ライガが身を伏せた。

 氷壁の端を抜けた雷が、倒れた柱を削る。ライガは柱の陰へ入り、三魔王の動きを見た。


 ヴェルミリオンが右から回り込んだ。

 翅から散った幻影粉が、同じ姿を二つ作る。本体はその間を走り、レヴェリオの右腕へ刃の腹を当てようとした。腕を持ち上げ、グリムにかかる圧力を逸らすつもりだった。


 レヴェリオは左手を向けた。

 刃は肘へ届く前に止まり、柄ごとヴェルミリオンの胸へ押し戻される。紫の装甲が衝撃を受け、彼の身体が後ろへ滑った。


 レヴェリオの背で、白銀の翼が開いた。

 翼の縁を紫の雷が走り、前方へ放たれる。


「離れろ!」


 ライガが叫んだ。

 グリムは手首を放し、両腕を重ねて顔を守った。ヴェルミリオンは横へ跳ぶ。雷を受けたグリムが数歩押し戻され、その踵が舗装を削った。


 レヴェリオは息を乱していなかった。


「前は、立つこともできなかったのに」


 彼女は三人を順に見た。


「今度は、その鎧で止めるつもり?」


 グリムが腕を下ろした。

 黒い装甲の表面には、白く削れた跡が残っていた。


「止めるために、戻ってきたんや」


 答えながら、呼吸を整える。

 傷は塞がり、鎧も展開できた。それでも、魔力を使い切る前に決着をつけなければならなかった。


         *


 レヴェリオの視線が、柱の横のライガへ移った。


「君は、そこから見ているの?」


 右手が伸びる。

 ライガの周囲で石片が持ち上がり、一斉に胸へ向いた。


「ネビュロス、右腕を頼む!」


 ライガは呼びかけ、柱の裏へ走った。

 ネビュロスの氷鎖が、レヴェリオの手首を捉える。鎖の反対側は、彼女の横に立てた氷柱へ巻きついていた。


 レヴェリオは右手を振った。

 氷柱が根元から砕ける。しかし腕が引かれた一瞬、石片の向きがずれ、柱の側面へ突き刺さった。


「長くは持たない。動き続けろ!」


 ネビュロスが叫んだ。

 ライガは頷き、三人の後ろへ戻る。ゾーエ(変身ブレス)へ目を落とすために、足を止めることはしなかった。


『最後の住民が通りへ入った。レクスたちは搬送を続けている』


 セイジから報告が入る。


「分かった。そちらは任せる」


 ライガは前を向いた。


「グリム、正面を。ヴェルミリオンは右から合わせてくれ。俺もそちらへ回る!」


「任せとけ!」


 グリムが踏み込む。

 拳と掌の間で圧力がぶつかり、黒い装甲の表面が削れた。それでも腕を押し込み、レヴェリオの右手を外へ向ける。


 ヴェルミリオンが反対側から刃を差し入れた。

 レヴェリオは左手で刃を止め、半歩下がる。その踵へネビュロスが氷を伸ばした。


 氷を踏み砕こうとした足首に、白い光の輪が浮いた。


 ネビュロスは目を細めた。

 輪の一部に、魔導書で確かめた保存術式に似た線がある。だが、全体はまだ見えない。


「足首に術式が出た。ライガ、まだ焼くな。何をつないでいるのか、確かめる!」


 レヴェリオが彼へ顔を向けた。


「私を調べながら戦えると思っているの?」


 翼が大きく開いた。

 右手でグリムを、左手でヴェルミリオンを押し下げ、二人の膝を地面につかせる。ネビュロスが援護の氷を伸ばすより早く、彼の足元にも圧力が落ちた。


 三人を中心に、舗装が割れた。

 ネビュロスは片膝をつき、魔導書を地面へ落とすまいと抱えた。


 ライガは柱の横で止まった。

 ここで飛び込めば、三人は自分まで庇わなければならない。


 レヴェリオの指が曲がる。

 グリムの肩の装甲に、細い亀裂が入った。


「手を出したんだ。君たちも、そこで裁きを受けて」


 逃げ道を残す言葉ではなかった。

 圧力が増し、ヴェルミリオンの翅が地面へ押しつけられる。


 グリムは歯を食いしばったまま、横の二人へ声をかけた。


「打ち合わせ通りや。……合わせろ」


 ネビュロスが魔導書を開く。

 ヴェルミリオンは刃を持ち直し、先端を地面へ向けた。


 三人はまだ動こうとしていた。

 ライガは左腕を胸の前へ上げ、ゾーエ(変身ブレス)の留め具を確かめた。


 昨日、自分から頼んだ。

 今、その三人が道を作っている。


「右へ回る。そこへ出るぞ」


 ライガが声をかけると、ヴェルミリオンが顔を上げた。


「待っているよ、バーニング」


 ライガは柱の右側へ踏み出した。


(18話へ続く)


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


カイの命令書を前にしても、レヴェリオは裁く側に立ち続けます。罪を認めることと、彼女の処刑を受け入れることは同じではありません。


ライガが仲間へ任せた役目も、実際の行動につながり始めました。住民を守る者、状況を伝える者、前で敵を押さえる者。それぞれの働きの先で、ライガが進みます。


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