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アンチジャスティス -魔王戦隊ダークトリニティ-  作者: DD22
第4部:断罪と贖罪編

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第4部 第16話『明日へ渡すもの』

【前回のあらすじ】

公開断罪まで、残り一日。三基のカプセルで治療が進む中、ライガは自分の手で旧サングを破壊した。グリムが呪いを焼き払った先で、今度は他人の命を奪わずに戦うため、エルザたちは新たな変身ブレス「ゾーエ」の開発を進める。



※本作品の執筆にはAIを活用しています。


 朝、エルザはライガの脇腹から包帯を外した。

 傷口は塞がっている。寝台から立たせ、数歩歩かせても、出血はなかった。


「今日は休んで。傷が閉じたからって、使い切った力まで戻ったわけじゃないわ」


「分かっている」


 窓側のカプセルを出たネビュロスは、椅子に座って肩を回していた。入口側から出たヴェルミリオンも、グリムの隣の寝台で追加の処置を受けている。

 三基とも治療を終えたが、ポルクは再び使える状態にしておいた。


 エルザは四人の状態を書き留めると、隣室の作業机へ戻った。

 机の中央には、外装を取りつける前のゾーエ(変身ブレス)が置かれていた。


         *


 エルザが回路図を指し、ポルクへ部品の位置を伝えた。

 その隣では、セイジがサングから取り出しておいた資料を整理している。


「装甲を作るために必要な部分は、こちらだ。組織の命令を受ける部分は分けた」


「ありがとう。取り込む力が途切れた時の処理も確認して。使用者から無理に引き出す動作は残したくない」


「分かった」


 エルザは新しい図面へ書き込み、ポルクと組み立てを進めた。

 入口にライガが立ったのは、その時だった。


「エルザ。少し、いいか」


「どうしたの?」


「間に合わなければ、俺が先に出る。その間に仕上げてくれ」


 エルザの手が止まった。


「何をするつもり?」


「カイに呼びかける。少しでも時間を――」


「またそれかよ」


 入口の脇にいたアシュレイが、壁から背を離した。


「戻ってきたばっかりで、今度は一人で先に行くのか」


「誰かが時間を稼がなければならない」


「だったら、その誰かを勝手に自分に決めるな」


 ライガが黙った。

 アシュレイは作業机を指した。


「こいつらが何のために作ってると思ってんだ。お前が生身で殴られに行くためじゃねえぞ」


「分かっている。だから、完成までの時間を――」


「分かってねえから言ってんだろ!」


 アシュレイの声が部屋に響いた。

 ポルクが手を止める。アシュレイはそちらを見て、口を閉じた。


 レクスが廊下から椅子を運んできた。


「ライガ、座ってくれ。ここで倒れられたら、エルザの仕事が増える」


 ライガは少しためらってから、椅子に腰を下ろした。

 レクスが隣に座る。アシュレイは入口に立ったまま、腕を組んだ。


 エルザはライガの顔色を確かめ、工具を取り直した。


「装置は私が仕上げる。できることと、できないことは、はっきり伝えるわ。だから、私が失敗した時の埋め合わせを、先に一人で決めないで」


「……すまない」


「謝るより、話して」


 エルザは作業を再開した。


         *


「白炎が戻らない…」


 ライガは膝の上に置いた手を見た。


「身体は治してもらった。装置も作ってもらっている。それでも、俺が炎を出せなければ、カイを救う手段がない」


「だから、自分だけでも何かしようとしたのか」


 レクスの問いに、ライガが頷いた。


「明日までに、必ず使えるようにする。だが、もし――」


「その先も、お前が何とかする話だろ」


 アシュレイが口を挟んだ。


「お前たちには、これ以上無理をさせたくない」


 ライガが顔を上げた。


「俺たちだって同じだ、これ以上お前に無理させたくねえんだよ」


 アシュレイは、ライガの前まで来た。


「変身できねえのは分かってる。今のまま殴りかかったって、足手まといだ。それくらいは、俺だって分かる」


 そこで一度、言葉を詰まらせた。


「けどな。だから俺達に何も任せずに、お前だけ行くってのは違うだろ」


 ライガは返事ができなかった。


 レクスが静かに続けた。


「俺も、何かしなければと思うと、先に身体が動く。正しいことをするなら、それでいいと思ってきた」


 包帯を巻いた肩を動かし、わずかに顔をしかめる。


「今も直っていない。だから、一人で行くと言われて、分かったとは言えない。俺もついていこうとする」


「その傷では――」


「お前も、同じことをしている」


 ライガの言葉が止まった。


 セイジが端末を机へ置いた。


「ライガ。君ができないことを挙げるたびに、自分の仕事を増やしてどうする」


「だが、白炎は俺にしか……」


「ああ。だから、それを君に任せたい。そのために私たちが何をするか、決めようと言っている」


 セイジはライガを見た。


「私は資料を調べ、エルザを手伝える。戦いが始まれば、状況を見て伝えることもできる。アシュレイにもレクスにも、任せられる仕事はある。君が全部できるようになるまで、私たちを待たせるな」


 作業机で、小さく工具の音がした。

 エルザは会話を遮らず、ポルクと部品を組み続けていた。


 ライガは三人を見た。

 自分の力が戻るかどうかを確かめることばかり考えていた。その間も、彼らは明日のために動いていた。


「……頼みたいことは、ある」


「だったら遠慮なく言えよ」


 アシュレイがすぐに返した。


「俺たち、ここにいるだろ」


         *


 ライガはレクスへ向き直った。


「明日、住民を会場から逃がしてほしい。兵士もだ。俺たちが戦っている間、誰も取り残さないよう、そちらの指揮を頼む」


 レクスは頷き、作業机の端から紙を取った。


「救護所までの道を先に確かめる。運べる人数も、ポルクと相談しておく」


「アシュレイ。レクスを支えてくれ。レクスが負傷者を背負おうとしたら、代わってやってほしい」


「そこまで言わなくても分かってる」


 アシュレイはレクスの肩を見た。


「聞いたな。明日、勝手に突っ込むなよ」


「お前もだ」


 二人が顔を見合わせた笑った。

 ライガも緊張が解け、ようやく少し笑った。


「セイジは、エルザと戦闘状態を見ていてくれ。異常があれば知らせてほしい。」


「ああわかってる」


 ライガは、今度は作業机へ顔を向けた。


「エルザ。完成を待つ。俺が焦っても、必要な確認は省かないでくれ」


「そのつもりよ」


「ポルクは、戻ってきた者を頼む。俺たちも、住民も」


「はい。受け入れられるようにしておきます」


 レクスが紙へ道順を書き始めた。

 アシュレイがその横から覗き込み、荷車の置かれている通りを指す。二人は、何を先に片づけるか相談していた。


 ライガは口を挟まず、二人に任せた。


 セイジが、声を落として尋ねた。


「ライガ、タワーで白炎が出た時、出し方を知っていたのか?」


「いや。あの時は、使えることさえ知らなかった」


「何をしようとしていた」


「グリムたちを助けたかった。カイを止めて、連れて帰りたかった」


 答えてから、ライガは自分の手を見た。


「……決戦までに炎が出なかったらどうするかばかり考えていたな」


「だが、出せるようになるまで君一人で背負う必要はない」


 セイジはそれだけ言い、エルザの隣へ戻った。


         *


 午後、レクスとアシュレイは退避路を確認し、通りを塞ぐ荷車を兵士たちと移した。

 戻った二人から報告を受け、ライガは会場から救護所までの道を確かめた。


 その後、グリム、ネビュロス、ヴェルミリオンとも話した。


「皆にはサポートしてほしい。白炎を当てられても、一瞬でカイを分けられるとは限らない」


「せやな。触れたところで弾き飛ばされたら、やり直しや」


 グリムが紙に描かれた会場を見た。


「近づくまでと、触れてから。両方、俺らで押さえる」


「一人に攻撃が集中しないようにしよう。僕も位置を変えるよ」


 ヴェルミリオンが、自分の立つ場所を示した。

 ネビュロスは魔導書を膝に置き、二人の動きを確認した。


「私は、彼女が力を使う時の変化を見たい。カイの中に別の意識を留める術式があるなら、分離の手掛かりになる」


「まだ仮説だが、何がカイを縛っているのか、確かめずに焼くわけにはいかない」


「分かった。」


 ライガは三人と動きを確認した。

 誰かが倒れた時の援護も決め、一人だけで前へ出ないことを約束した。


         *


 夕方、エルザが白銀の腕輪を持って治療室へ来た。


「完成したわ。ゾーエ(変身ブレス)よ」


 ライガは椅子から立ち、腕輪を受け取った。

 

「あなたの炎を受け止めて、装甲へ変える新しい力。」


「今は無理に引き出すこともできないから出せる分で、試してみて」


「ああ」


 ポルクが測定器をつなぎ、セイジが表示を確かめた。

 レクスとアシュレイも、部屋に残っていた。


 ライガは掌を開いた。


 明日、カイを連れて帰る。


 自分が受け持つのは、白炎でカイを解放することだ。

 できるかどうかは、まだ分からない。だが、その不安まで一人で隠す必要はなかった。


 ライガは、ゆっくり息を吐いた。


 掌に、小さな白い炎が灯った。


 ゾーエ(変身ブレス)が白く光る。

 ポルクが測定器へ身を寄せた。


「来てます!」


 炎は二度揺れ、消えた。

 装甲は現れなかった。


 ライガは掌を下ろし、エルザを見た。


「どうだった?」


「ゾーエ(変身ブレス)は確かに動いたわ。けど変身を保つには、もう少し長く炎を出す必要があるわね。」


 アシュレイが隣へ来て、白炎の灯っていた手を見た。


「前に進んだじゃねえか」


「ああ」


 ライガはアシュレイ、セイジ、レクスへ顔を向けた。


「皆ありがとう、助かった。明日は頼む」


「任せろ」


 レクスが答えた。

 セイジは測定結果を保存し、端末を閉じた。


「今日はもう休め。私たちも休む」


「そうだな」


 ライガは部屋を見回した。


「明日は全員揃って帰るぞ」


「お前も入ってるんだからな」


 アシュレイがすぐに言った。


「分かっている」


 今度は、ライガも思いっきり笑って答えた。


(17話へ続く)

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


エルザたちがゾーエ(変身ブレス)を作る一方、三人のレッドは、一人で背負い込もうとするライガに声をかけました。助けられるだけでも、全部を引き受けるだけでもなく、仲間を信じて役目を任せる。その先で、白炎が小さく戻ります。


次回、公開断罪の日。それぞれが引き受けた役目を胸に、決戦へ向かいます。


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