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アンチジャスティス -魔王戦隊ダークトリニティ-  作者: DD22
第4部:断罪と贖罪編

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第4部 第14話『救われる側の言い分』

【前回のあらすじ】

第六居住区から脱出したライガは、リドラムの救護所で仲間たちとの再会を果たした。持ち帰った二枚の記録は、連行された人々と古い組織を結ぶ手掛かりだった。しかし、街ではレヴェリオの断罪が続いている。傷ついたライガたちは治療を進めながら、カイを取り戻す方法を探り始めた。


※本作品の執筆にはAIを活用しています。


「兵士の名前は、知らないんです」


 広場で、配給の袋を抱えた女が答えた。

 レヴェリオの前に立たされてから、同じことを三度言っていた。


「顔は覚えている?」


「何人も来ましたから……」


「ここにいる者の中には?」


 レヴェリオが元兵士たちへ顔を向けた。

 女もつられて見たが、すぐに目を伏せた。


「分かりません」


「怖がらなくていい。君が話したことで、誰かに傷つけられることはない」


 女は袋を抱え直した。


「家に子供を置いてきたんです。帰らせてください」


「その子のためにも、確かめておこう」


 レヴェリオは、兵士に書かせた名簿を女へ見せた。

 女は受け取らなかった。


 救護所の入口で、レクスが口を開いた。


「今、話せることはないと言っている」


「君には聞いていない」


「帰りたいという言葉は聞いただろう」


 レヴェリオはレクスを見た。


「ここで帰して、後からあの人だったと思い出しても、逃げられていたら遅い」


「覚えていない者に答えを迫れば、誰かの名前を言わせるだけになる」


 女が小さく頷いた。

 レヴェリオの視線が戻ると、慌てて下を向く。


 その様子を見ていた父親が、救護所から出てきた。


「その人を帰してやってくれ」


 女の前まで来て、レヴェリオに向き直る。


「俺も息子のことで話がある。だが、ここで誰かを指さしたいわけじゃない」


「連れていった者を知る必要はあるよ」


「知りたいさ。どこへ連れていったのか、帰すにはどうすればいいのか。それを聞きたいんだ」


「そのために、関わった者を集めている」


 父親は演台の毛布を指した。


「あの人からは、もう聞けないだろう」


 レヴェリオは答えなかった。

 広場の後ろで、誰かが「でも、あいつは」と言いかけた。父親が振り向くと、言葉は止まった。


「俺は、あいつが何もしてないなんて言ってない。あいつを許してくれとも頼んでない」


 父親はレヴェリオへ顔を戻した。


「俺の話を聞くと言ったなら、最後まで聞いてくれよ」


         *


 治療室では、ライガが寝台に座っていた。

 ポルクはグリムのカプセルの表示を確認してから、ライガの腕のサング(変身ブレス)へ測定用の端子を当てた。


「通信と認証は動いています。でも、変身に必要な出力がありません」


 ライガは右手を開いた。

 タワーでは、ここから白い炎が上がった。

 今は、包帯に覆われた指がわずかに曲がるだけだった。


「……出ないな」


「無理に力を込めないでください。傷が開きます」


 ポルクが測定器を外す。


「タワーでは、白炎がサング(変身ブレス)に入ってから変身できたんですよね」


「ああ」


「だったら、装置だけ動かしても……」


「神聖バーニングレッドには、なれない」


 ライガは自分で言い、腕を下ろした。

 怒りはある。カイを助けたい気持ちも変わっていない。それでも、炎は出なかった。


 外で、父親の声が大きくなった。


「帰りたいと言ってるんだ! 答えられないから帰すなって、おかしいだろう!」


 ライガは顔を上げた。

 エルザが入口へ向かい、アシュレイも立つ。


「俺も行く」


 ライガが寝台から脚を下ろした。

 アシュレイは一瞬睨み、机の椅子を持ち上げた。


「入口までだ。座って話せ。それ以上は動かせねえぞ」


「分かった」


         *


 エルザは女のそばへ行き、子供の年齢を尋ねた。

 女が答える途中で、レヴェリオが名簿を下げた。


「話は、まだ終わっていない」


「その子が一人で待てるか、確かめているの」


 エルザは女の肩へ手を添えた。


 ライガは入口の椅子に腰を下ろし、レヴェリオを見た。

 カイの顔だった。こちらへ向ける目も、声も、よく知っているはずの身体から出ている。


「カイ」


 レヴェリオが振り返った。


「私に話して、ライガ」


「お前がそこにいるのは分かっている。カイにも聞こえるか、確かめたい」


「彼は答えないよ」


「答えられないようにしているのか」


 レヴェリオは名簿を脇の兵士へ渡した。

 ライガの前まで来ると、椅子に座った彼を見下ろした。


「彼は、最後まで自分の正しさを保てなかった。今ここで必要なのは、迷うことじゃない」


「タワーで、あいつは俺に聞いた。自分の選択が正しかったのか、と」


「だから、苦しんだ」


「自分で考えようとしたんだ」


 ライガは顔を上げた。


「俺は、その続きを聞いていない」


 レヴェリオの眉が動いた。


「カイ。お前を、考えられる場所に連れて帰りたいと言ったな」


 ライガは、目の前の顔へ呼びかけた。


「俺は戻った。お前も戻ってこい。答えは、戻ってから聞く」


「もういい」


 レヴェリオが右手を伸ばした。

 ライガの襟元をつかみ、椅子から引き上げようとする。


 その右手首を、彼女自身の左手がつかんだ。


 レヴェリオが下を見た。

 ライガも、アシュレイも、その手を見ていた。


 左手の指が強く食い込み、右腕を引き戻す。

 襟元をつかんでいた指が緩んだ。


「……離して」


 レヴェリオは、自分の左手へ言った。


 次の瞬間、ライガの身体が椅子ごと後ろへ押された。

 アシュレイが背もたれをつかんで支える。椅子の脚が戸口の段差にぶつかり、止まった。


 レヴェリオは両手を離した。

 左手を握り、開き、もう一度握る。


 今度は、思い通りに動いていた。


「カイなのか」


 ライガが尋ねた。

 返事はなかった。


 アシュレイがライガの前へ立つ。レクスも椅子の肘掛けを握ったが、立ち上がる前にエルザが肩を押さえた。


「彼を奥へ」


 エルザが言った。


 レヴェリオはライガを見つめていた。

 やがて入口の端末に気づき、その向こうにも聞こえる声で告げた。


「君たち全員から、話を聞く必要があるね」


         *


 レヴェリオが撮影装置へ戻る間、書記をさせられていた兵士は、命令者の欄を見つめていた。

 自分が書いた「カイ」という名前。その名の男と同じ顔が、今は命令に従った者たちを裁いている。


「……本当に、カイ様ではないのか」


 隣の兵士にだけ聞こえる声で尋ねた。


「レヴェリオと呼ばれているだろう」


「それは聞いた。だが、俺はあの顔を知っている。別の名で呼ばれたからって……」


 兵士は演台の毛布へ目を向け、口を閉じた。

 さっきから、本人に尋ねる言葉を考えていた。だが、処刑を止めようとした者たちまで倒されるのを見て、声を出せなかった。


「この命令を出したのも、あの方なんだぞ」


「分かってる。声を落とせ」


 隣の兵士も、レヴェリオから目を離さなかった。

 正体に納得して従っているわけではなかった。今は、命じられた作業を止めることさえ怖かった。


 レヴェリオが振り返った。


「各地からの返答を読んで」


 呼ばれた兵士は立ち上がった。

 机に残した紙から、カイの名前は消さなかった。


 記録を集めているという街があった。

 指揮をしていた者がいなくなり、命令書を誰が持っているか分からないという返答もあった。

 今から向かっても、リドラムへの到着は翌日以降になるという連絡が続いた。


「返答のあった街を、全部つないで」


 レヴェリオが命じた。

 兵士が操作すると、受信表示が順に灯った。


「二日後の正午。ジャスティスタワーの跡で、命令した者たちの話を聞く」


 広場の住民が顔を上げた。


「ここでは、命令に従ったという答えばかりだった。なら、その命令を出した者を同じ場所へ集めよう。食い違うなら、本人たちの前で確かめる」


 レヴェリオは、崩れたタワーの方角を指した。


「彼らは、あそこから君たちの暮らしを決めていた。今度はそこで、自分が何をしたのか話してもらう」


 ライガは、アシュレイに支えられたまま聞いていた。

 タワーの崩壊で終わったはずの支配を、彼女は裁きの形で続けようとしている。


「命令書、搬送記録、拘束した者の名簿を持ってきて。間に合わない街は、先に写しと担当者の名前を送りなさい」


 レヴェリオは撮影装置へ向き直った。


「名前を消したり、記録を焼いたりしないで。拒んだ者には、私が会いに行く」


 脇に立っていた兵士が、書類を持つ手を震わせた。

 レヴェリオはその兵士を見ず、救護所へ呼びかけた。


「レクス。セイジ。アシュレイ。ライガ。君たちも来て」


 レクスが顔を上げる。


「俺たちが話すことと、街の者を閉じ込めることは別だ。帰してくれ」


 レヴェリオは広場を見渡した。

 残っているのは、答えられない住民と、同じ上官の名前を繰り返す兵士たちだった。


「住民は帰っていい。証言したい者の話は、引き続き受け付ける」


 女が、エルザの腕をつかんだ。

 エルザは頷き、通りへ付き添った。


「兵士は残って。関わった場所と命令者を、まだ書き終えていない」


 帰りかけた元兵士の一人が足を止めた。

 その隣を、住民たちが黙って通り抜けていく。


 レヴェリオは、ライガへ視線を戻した。


「君が持ち帰った移送記録も出して。あの場所へ人を送った者を捜す。その後で、君には戻ってきた地点を示してもらう」


「その記録は、家族を捜すためにも使う」


「調べればいい。二日後には、タワー跡へ持ってきて」


 レヴェリオは演台の端に片手を置いた。


「来なければ、ここで話を聞く。治療室にいても、同じことだよ」


 彼女の指の下で、石の角が崩れた。

 押し潰された破片が足元へ落ちる。


 誰も、その言葉を単なる呼び出しとは思わなかった。


         *


 救護所へ戻ると、ライガは寝台に横になった。

 エルザが傷口を確認する間、アシュレイは端末へ向かった。


「見えたか、今の」


『腕は見えた。左手が右腕を止めたな』


 セイジが答えた。


『声は彼女のものだった。カイ本人だと断定はできない』


「でも、あいつ自身が驚いてた」


『ああ。彼女の意思と違う動きが起きた。その記録は残せた』


 ライガは、自分の襟元を見た。

 あの手は、引き上げようとした右腕を止めていた。


「カイが残っている可能性はある」


「あるねぇ」


 ヴェルミリオンが答えた。


「ただ、次に呼んでも止まるとは限らない。今のを頼みに正面から近づくのは、やめておこうか」


「分かっている」


 ライガは頷いた。


 端末の向こうで、ネビュロスが口を開いた。


『私たちも戻る。生徒たちの封印を確かめてから出る』


『記録の照合は、移動中も続ける』


 セイジが続けた。


『エルザ。到着したら、彼にも治療を受けさせてくれ。右腕を使わずに済ませているだけで、治ったわけではない』


「準備するわ」


 エルザはポルクへ向き直った。


「残りのカプセルも点検して。使える状態にして、治療を回す。グリムは途中で出さない」


「はい」


 ポルクは作業用の端末を取った。

 エルザはライガとヴェルミリオンを順に見た。


「タワーの時は、途中で切り上げて戦わせた。今回は、できるところまで傷を治す。ただし、動けるようになったからといって、力を全部使えると思わないで」


 ライガが腕のサング(変身ブレス)を見た。


「俺には、白炎も必要だ」


「それは治療だけでは戻せない。まず、身体を立て直す」


 ライガはサング(変身ブレス)を外さず、腕を寝台へ戻した。

 カイをシグマスーツから解放した時、白炎は装甲を焼き切った。その力が、今度もカイを傷つけずに届くのか。

 炎を出せない今は、それを確かめることさえできない。


 グリムのカプセルから、一定の間隔で機械音がしていた。

 隣の寝台では、ヴェルミリオンが検査のために袖をまくっている。


 レクスが入口から声をかけた。


「住民の行き先は、俺たちで確かめる。カプセルを使う者は、そっちを優先してくれ」


「お前も座ってやれよ」


 アシュレイが椅子を運んでいく。


 外では、レヴェリオが次の街へ同じ日時を告げていた。

 受信表示が増えるたび、断罪の知らせがノクタリアへ広がっていく。


 エルザは紙に「二日後・正午」と書き、治療室の壁へ留めた。


 ライガはその文字を見た。

 そこまでに、身体を治す。

 白炎を取り戻し、カイへ届く方法を見つける。


「ポルク。変身した時の記録も、残っている分を見せてくれ」


「用意します。治療を受けながら、見られるようにしますから」


 ライガは頷き、差し出された検査用の腕帯に左腕を通した。


(第15話へ続く)


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


助けてほしいという願いと、罰してほしいという願いは、必ずしも同じではありません。帰りたいと話す住民の前で、レヴェリオが何を優先するのかを描きました。


決戦につながる日時が定まり、ライガたちには準備が必要になりました。身体を治すことも、カイを救う方法を考えることも、ここからの戦いの一部です。


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