第3部 第21話『白炎と紫雷(後編)』
【前回のあらすじ】
激戦の末、カイは疲れ果てた素顔を晒した。彼は自らの過去と、ライガたちを駒として利用したことを告白し謝罪。三魔王やグリムの言葉に、ライガは「お前を考えられる場所に連れ帰りたかった」と本心を伝える。
カイは一瞬微笑むが、その体は突如として紫の光に包まれ変貌。深紅のスーツに黒い装甲をまとった姿で再び立ち上がった。
※本作品の執筆にはAIを活用しています。
グリムの拳が——無意識に、固まった。
本能だった。
言葉より先に、体が告げていた。
あれは——カイではない、と。
「……待ちや」
グリムは、《魔導外殻》に残った魔力を右拳へ絞り出した。
魔力は——ほとんど残っていなかった。
それでも。
「お前がカイの中にずっとおったんか。……カイを全肯定し続けて、その隙に出てきた」
「そうだ」
レヴェリオは、穏やかに答えた。
「カイの思想が歪んでいくにつれ——私は逆に抑圧された。カイの奥深くへ、押し込まれた。……今夜まで、ずっと」
「そりゃたちが悪いわ」
グリムは、踏み込んだ。
「《紅蓮拳》!!」
残り僅かな魔力を込めた一撃だった。
レヴェリオは——右手を、軽く振るった。
重力が歪んだ。
グリムの拳が、軌道を逸れた。
「ぐ——ッ!!」
グリムが吹き飛んだ。
床を転がり——壁際まで叩きつけられた。
「グリム!!」
ネビュロスが、《魔導外殻》に残った僅かな魔力を絞り出した。
「《氷鎖・零結陣》!!」
冷気の鎖が、レヴェリオへ向かって伸びた。
しかし——その速度も、密度も、本来の半分もない。
レヴェリオは、紫の雷を軽く散らすだけで、鎖を霧散させた。
「ぐ——ッ!?」
ヴェルミリオンが、残り僅かな魔力の全てを蝶に込めた。
「《夢幻蝶》!!」
爆発を伴う幻惑の群れが、レヴェリオへ向かって殺到する。
だが——レヴェリオは微笑んだ。
「カイの記憶の中で、何度も見た。……美しいね」
紫の雷が一閃した。
蝶が、全て散った。
「なッ——!?」
「……魔力が枯渇している。それでも向かってくるか」
レヴェリオの声に——感情はなかった。
称賛でも嘲笑でもない。
ただの、純粋な——好奇心だった。
その時。
生身の三人が——前に出た。
誰も、何も言わなかった。
レクスは無言で、レヴェリオへ向かって走った。
セイジが——構えた。
勝率はゼロだと分かっていた。
でも——動かない理由も、なかった。
セイジは、無言で踏み込んだ。
「——ッ!!」
アシュレイが——叫んだ。
叫びながら、飛び込んだ。
怒りか、悲しみか、自分でも分からなかった。
カイに「扱いやすい駒」と言われた。
カイに謝罪された。
全部ぐちゃぐちゃのまま——それでも体が動いた。
レヴェリオは——三人を見た。
その目に。
初めて——何かが、揺れた。
「……カイが傷つけた人間たちが、立っている」
静かに呟いた。
紫の雷と重力が、同時に解き放たれた。
ドォォォォォンッ!!!
グリム、ネビュロス、ヴェルミリオン——三魔王が、床に叩きつけられた。
レクス、セイジ、アシュレイ——三レッドが、同時に吹き飛ばされた。
全員が——動けなかった。
最上層が——静まり返った。
レヴェリオは、倒れた全員を見渡した。
一人ずつ、確かめるように。
そして——ライガへ向いた。
「……ライガ」
初めて——名前を呼んだ。
「カイは君を、最後まで信じていた。……私はずっと、その理由が分からなかった」
レヴェリオは、静かに続けた。
「今夜、少し分かった気がする」
ライガは——答えなかった。
ただ、まっすぐレヴェリオを見ていた。
「私はこれから、自分の道を定義する。——私自身の物語を」
レヴェリオは、踵を返した。
「また会おう、ライガ。……君とは、もう一度交わることになるだろう」
紫の霧が、レヴェリオを包んだ。
消えた。
最上層に——静寂が戻った。
次の瞬間。
モニターが——赤く染まった。
『アーネストシティ計画——同期率98%。最終統合シークエンス、残り時間——5分』
セイジが——荒い息の中で叫んだ。
「まずい……! 残り5分でノクタリア全市民の意識が飲み込まれる……!! コアを物理的に破壊しなければ止められない……!!」
「コアってなんや!!」
グリムが叫んだ。
「タワーの中枢だ——このシステム全体の心臓にあたる。あれを破壊すれば計画は止まる。だが——」
セイジは、全員を見た。
「コアはジャスティスフェイスの特殊合金で作られている。通常の魔力では傷一つつかない。……破壊できるのは」
全員が——ライガを見た。
「白炎だけだ」
ライガは、床に片膝をついたまま——コアのある方向を、見ていた。
白炎のオーラが。
薄れていたが——消えていなかった。
「……分かってる」
ライガは——立ち上がった。
全身が、悲鳴を上げていた。
それでも——立った。
「ポルク。俺達をこの場から転送できるか?」
通信機から、ポルクの声が飛び込んできた。
『ラ、ライガさん……!』
「ポルク——」
エルザの声が、割り込んだ。
いつもの冷静さが——わずかに、崩れていた。
『聞いて、ライガ。今ポルクはタワーのシステムへのハッキングで座標を特定して、外への強制転送をかけられる。でもコアを破壊した瞬間——タワーの全システムが落ちる。そうなったらアクセスが切れて座標が特定できなくなる。崩壊が始まれば通信も——』
エルザは、一瞬——止まった。
『……コアを壊したら、もうあなたを転送できない』
最上層が——静まり返った。
全員が、その言葉の意味を、理解した。
グリムの目が——赤くなった。
「……ッ」
言いたいことは、山ほどあった。
行かせたくなかった。
「グリム」
ライガは——笑った。
満身創痍の、それでも確かな——笑顔だった。
「お前に何度救われたと思ってる。……今度は俺の番だ」
グリムは——歯を食いしばった。
ライガの目を見れば、分かった。
この男は——もう決めている。
「……絶対死ぬなよ」
震える声だった。
「絶対や。絶対どこかにおれ。……俺が、必ず見つけたる」
ネビュロスが——静かに言った。
「……生き延びろ。お前にはまだ、やることがある」
ヴェルミリオンが——床に倒れたまま、ライガを見た。
「幕を下ろすのは、君じゃない。……また舞台に立て」
レクスが——重々しく、一言だけ言った。
「……生きて戻れ」
セイジが——静かに言った。
「計算外だが——必ず戻れ」
アシュレイが——顔を逸らしたまま、絞り出した。
「……死んだらぶん殴るからな」
ライガは——全員を見た。
言葉は、出なかった。
ただ——頷いた。
その頷きに、全てがあった。
「ポルク——転送、頼む」
転送光が、全員を包み始めた。
グリムは——最後まで、ライガを見ていた。
ライガも——グリムを見ていた。
転送光が、グリムを飲み込んだ。
最上層に——ライガだけが、残された。
*
ライガは立ち上がった。
全身が、悲鳴を上げていた。
白炎のオーラが——消えかけていた。
胸のドッグタグを——握った。
冷たい金属の感触。
あの日、救えなかった少女が残してくれたもの。
ずっと——鎖だと思っていた。
だが。
(お前が俺に残してくれたこれが——ずっと、俺を生かしてくれた)
ライガは、タワーのコアへ向かって歩いた。
一歩。
また一歩。
『残り2分』
白炎の残り火が——揺れていた。
(だから俺は——諦めない)
コアの前に立った。
残った白炎を——全て、右拳に込める。
最後の一撃。
「《真紅の白炎》——!!」
ドォォォォォォォンッ!!!!!!
タワーのコアが、白炎に飲み込まれた。
『アーネストシティ計画——停止。全システム——シャットダウン』
そして——最上層が、崩れ始めた。
*
タワー外。
グリムは——崩れ落ちるジャスティスタワーを見上げた。
「ライガ……」
グリムの声が、震えた。
ポルクが、端末を必死に操作していた。
指が震えていた。
何度も、何度も——検索をかけた。
「……ライガさんの、生体反応が……」
ポルクの声が、詰まった。
「……見つかりません」
端末を、落としそうになった。
「どこを探しても……タワー内にも、周辺にも……反応が——」
ポルクは、画面を見つめたまま——動けなかった。
沈黙が、落ちた。
全員が——タワーの残骸を見ていた。
グリムは——拳を、握りしめた。
震えていた。
それでも——顔を上げた。
「……アイツはこんなことで死なへん」
低い声だった。
震えていたが——確かだった。
「俺と約束したんや。どこかにおれって言うたら——おるって頷いたんや」
グリムは、夜空を見上げた。
「ライガァァァ——————ッ!!!」
叫んだ。
夜空に、届けるように。
(第3部完/ 第4部へ続く)
第3部完結しました。
圧倒的な強さを誇るレヴェリオとの戦い、そして「アーネストシティ計画」を阻止するための最後の希望が描かれました。仲間たちの想いを受け止め、一人残る決断をしたライガ。それぞれのキャラクターの覚悟と絆が強く感じられる回になったかと思います。
第4部もぜひ見届けていただけると嬉しいです。
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次回もお楽しみに!




