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アンチジャスティス -魔王戦隊ダークトリニティ-  作者: DD22


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第3部 第20話『白炎と紫雷(中編)』

【前回のあらすじ】

ライガは真の姿「神聖バーニングレッド」となり、カイとの最終決戦に挑んだ。カイの猛攻を白炎の力で退け、巧妙な戦術でシステムを破壊していくライガ。カイの意識が一時的に顔を出す中、互いの全力を込めた一撃が激突し、最上層を光が包み込む。激戦の末、ライガは見事勝利を収め、ついにカイを呪われたシグマスーツから解放したのだった。

※本作品の執筆にはAIを活用しています。


 光が、収まった。


 沈黙。


 煙が、静かに漂っていた。


 カイが——床に膝をついていた。


 壱号機シグマ・ワンの残骸が、周囲に散らばっている。


 シグマスーツが——完全に剥がれていた。


 ユナイトレッドの白銀の装甲が、露わになっていた。


 その装甲が——内側から、震えていた。


 ライガも——片膝をついていた。


 白炎のオーラが、薄れていた。


 だが——消えていなかった。


 誰も、動かなかった。


 誰も、口を開かなかった。


 煙が晴れていくにつれ——最上層の静寂が、じわじわと広がっていった。


 カイは——しばらく、俯いていた。


 それから、静かに顔を上げた。


 ユナイトレッドの白銀のマスクが——音もなく、光の粒子となって解けた。


 意志で展開するように。


 意志で——退けた。


 カイ・レグリオの顔が、最上層の光の中に晒された。


 絹のような黒髪が、束ねられたまま肩に垂れていた。


 線が細く、モデルのような骨格。


 人間離れした美貌だった。


 だが——その顔は。


 今まで誰も見たことのない顔だった。


 表情筋が死んでいるかのように動かない、鉄仮面のような顔ではない。


 切れ長のブルーブラックの瞳が——揺れていた。


 見透かすような視線ではなかった。


 ただ——疲れ果てた、人間の目だった。


 グリムが、その顔を見た。


 ネビュロスが、見た。


 ヴェルミリオンが、見た。


 レクス、セイジ、アシュレイが、見た。


 誰も——何も言わなかった。


 カイは、床を見つめていた。


 長い沈黙の後。


「……聞くか」


 掠れた声だった。


「全部」


 ライガは——頷いた。


「ああ」


 カイは、少しの間——また黙っていた。


 どこから話せばいいのか、迷っているようだった。


 その迷いが——顔に出ていた。


「……私は、施設育ちだ」


 ゆっくりと、言葉が出た。


「親を知らない。友もいなかった。図書室の隅で本を読むだけの——誰にも理解されない子供だった」


「……」


「そんな私に、声をかけてきた少女がいた」


 カイの目が——遠くを見た。


「鏡の前に立っていた時だ。鏡越しに、金髪の少女が現れた。彼女はレヴェリオと名乗った」


 グリムが口を開こうとした。


 だが——何かを感じ取って、黙った。


「彼女は私の言葉を全て肯定した。私の怒りを、理想を——全て受け入れてくれた。世界が私をノイズと呼んだ時も、彼女だけが『君は正しい』と言い続けた」


 カイの声が、わずかに——変わった。


「私は彼女を、唯一の理解者だと思っていた」


 その顔に、かすかに——何かが揺れた。


「17歳の頃だ。私は世界の醜さに絶望していた。争い、憎しみ、終わりのない対立。レヴェリオはいつも囁いた——『みんながバラバラの正義を持っているから歪みが生まれる。世界にたった一つの秩序があれば、誰も泣かなくて済む』と」


「……」


「そんな時——ある科学者が現れた」


 カイの声に、かすかな——影が落ちた。


「私の論文を読んだと言って、接触してきた。彼はこう言った。『君自身がシステムになればいい。君が世界を定義する管理者になれ』と」


「……ジャスティスフェイスは、そいつが作ったんか」


 グリムが、低く言った。


「前身組織をそいつが持っていた。だが頭脳が必要だった——計画を設計し、システムを構築できる人間が。私はその役を担い、共に組織を作り上げた」


 カイは、続けた。


「その科学者の手を取ったその瞬間——レヴェリオが、消えた」


 声が、途切れた。


 カイは、少しの間——目を伏せた。


「振り向いたら、いなかった。……いくら呼んでも、返事がなかった」


 最上層が、静まり返った。


「だから——計画を完遂することが、彼女への唯一の答えだと思った。彼女を失ってまで選んだ道が、間違いであってはならないと。……ずっと、そう思い続けてきた」


「……その科学者は今も」


「いない。計画が本格始動してしばらくの頃、独自の方向に動き始め——やがて姿を消した。詳細は分からない。私が入隊させた者たちは、誰も彼を知らない。……組織の中で彼の存在を知るのは、私だけだ」


 ライガは、拳を握りしめた。


「20歳の頃、ライガと出会った」


 カイは、ライガを見た。


「訓練生として入隊した時——お前の真っ直ぐさに気づいた。レヴェリオを失ってから、唯一、本気でそう思えた人間だった。お前となら、本当に変えられるかもしれないと」


「……でも結局、俺を手駒にした」


「半分は、そうだ」


 カイは——今度は、レクスへ視線を向けた。


「レクス」


 レクスが、息を飲んだ。


「お前を勧誘したのは——お前の傷を利用したからだ。法が無力だった経験から、絶対的な権威を求めていた。……私はその渇望を、組織への服従に変えた」


「……ッ」


 カイの視線が——セイジへ向いた。


「セイジ。お前を勧誘したのは——お前の孤立を利用したからだ。社会に居場所を持てない天才が、システムの中でなら能力を発揮できると思わせた。……お前の知性を、駒として扱った」


 セイジは——無言だった。


 その目が——揺れていた。


 カイの視線が——アシュレイへ向いた。


「アシュレイ。お前を勧誘したのは——お前の承認欲求を利用したからだ。認められたいという渇望を、正義という舞台で満たせると思わせた。……最も扱いやすい駒だと、思っていた」


「……テメェ」


 アシュレイの声が、震えていた。


「すまなかった」


 カイは、三人を——素顔のまま、見た。


「お前たちを人間として見ていなかった。傷を見抜いておきながら、それを利用した。……それが、私のやったことだ」


 最上層に、静寂が満ちた。


 レクスは——俯いていた。


 セイジは——動かなかった。


 アシュレイは——顔を逸らしていた。


 三人とも、何も言わなかった。


 言葉が、出なかった。


 その静寂を——最初に破ったのは、グリムだった。


「……腹立つわ」


 低い声だった。


 怒鳴り声ではない。


 ただ——本音だった。


「腹立つ。めちゃくちゃ腹立つ。俺の村が燃えたんは、お前らのせいや。母ちゃんが死んだんも、俺が10年間無駄に暴れたんも、全部繋がっとる」


「……ああ」


「許すとは言わん。言えん。……でもな」


 グリムは——カイを見た。


 その目に、怒りがあった。


 同時に——それだけではなかった。


「認めて、頭下げたなら——やり直す機会くらいあってもええやろ。俺かて、散々やらかしてきた。人のこと偉そうに断罪できるほど、綺麗な手してへんわ」


 カイは——何も言わなかった。


「許すかどうかは、また別の話や。……でも、終わりにするかどうかを決めるんは、お前自身や」


 次に口を開いたのは、ネビュロスだった。


 静かな声だった。


「カイ・レグリオ」


 カイが、ネビュロスを見た。


「私は思考を止めた者を、最も憎んでいる。知性を捨て、誰かの命令に従うだけの存在を」


「……」


「だが——自分の誤りを認められる者は、まだ考えている。それは思考を止めた者とは違う」


 ネビュロスは、片眼鏡を押し上げた。


「私もまた、完全ではない。弟子たちを氷に封じた選択が本当に正しかったのか——今も答えが出ていない。完璧な人間など、どこにもいない」


 カイは——ネビュロスを見ていた。


「自分の誤りを見つめられる者が、やり直す資格を持たないとは——私には言えない」


 最後に——ヴェルミリオンが、口を開いた。


 いつもの芝居がかった口調ではなかった。


「……僕はね、カイ」


 静かな声だった。


「愛した人間に、『間違い』だと切り捨てられた。保身のために、ゴミのように捨てられた。……だからお前のやったことの痛みは、少しは分かるつもりだよ」


「……」


「でも同時に——僕自身も、街を毒で沈黙させた。どれだけの人間が傷ついたか、今もちゃんとは分かっていない」


 ヴェルミリオンは、カイを見た。


「人はみんな、どこかで誰かを傷つけながら生きてる。それを棚に上げて、他人だけを永遠に断罪し続けるのは——僕の美学には反する」


 一拍おいて。


「舞台を降りるか続けるかは、お前次第だ。……幕を下ろすかどうかを決めるのは、観客じゃない。役者本人だよ」


 最上層に——静寂が戻った。


 カイは、三人の言葉を——黙って、受け取っていた。


 その顔に。


 仮面のない顔に。


 何かが——ゆっくりと、動いていた。


 やがてカイは——ライガへ向き直った。


「ライガ」


 その声は、初めて——迷うように言った。


「……私の選択は、正しかったのか」


 断定口調の、冷徹な完璧主義者が——初めて答えを求めた。


 三魔王の言葉を受けた後で、初めて——問える言葉だった。


 ライガは、少しの間、黙っていた。


「分からない」


 静かに、しかし確かに言った。


「俺にはレヴェリオのことも、お前が歩んできた道も——全部は分からない」


「……」


「でも——お前がそれを考えられる場所に、連れて帰りたかった。それだけだ」


 カイは——小さく。


 ほんの僅かに。


 笑った。


 仮面のない、素顔で。


「……君は、不思議な人間だな」


「そうか」


「私を追い詰めておきながら——そんな顔で話しかけてくる」


「お前を壊したかったわけじゃないからな」


「……そうだな」


 カイは——俯いた。


 肩から、力が抜けた。


 ずっと張り続けてきた何かが——静かに、解けていくような。


 その瞬間。


 カイの手が——動いた。


 カイ自身の意志ではなかった。


「……?」


 カイは、自分の手を見た。


 指先が、かすかに——震えていた。


 違う。


 震えているのではない。


 動こうとしている。


 自分の意志とは、別の何かが——。


「な……」


 カイの胸の内側から——何かが、押し出されようとしていた。


 白銀の装甲に——ひびが走った。


 内側から。


 紫の光が、ひびの隙間から滲み出した。


「な……何が——」


 カイの声が、混乱していた。


 恐怖だった。


 知らない感覚だった。


 自分の体が——自分のものでなくなっていく。


「私の、体が——なぜ——ッ!?」


 装甲のひびが、広がっていく。


 紫の光が、どんどん強くなっていく。


 カイは——両手で自分の胸を押さえた。


 だが、押さえられなかった。


「な、なんだ——これは——私は——私がっ——!!」


 カイの声が——途中で、変わった。


 カイの声に、別の何かが混じった。


 二つの声が、一瞬だけ重なり——


 そして。


 カイの声が、消えた。


 紫の光が——爆発した。


 ライガたちが、腕で顔を庇う。


 グリムが後退する。


 ネビュロスが氷の障壁を展開した。


 光が——最上層を、紫に染め上げた。


 そして。


 静寂が、訪れた。


 煙が晴れていく。


 紫の光が、収束していく。


 その中心に——人影が立っていた。


 静かに。


 ただ静かに、立っていた。


「……ジャスティス、チェンジ」


 囁くような声だった。


 光が収まった。


 そこに立っていたのは——。


 深紅のスーツ。


 しかし、その上を覆う装甲は——黒だった。


 有機的に、鋭く、全身を包む黒い装甲。


 継ぎ目から——紫の光が、血管のように走っている。


 肩から背中に——刃のような突起が並ぶ。


 腰から床まで届く、黒いロングコートが、風もないのにゆっくりと広がった。


 そして——頭部。


 左半分は——赤かった。


 ユナイトレッドの赤いマスク。カイの名残が、そこに残っていた。


 だが右半分を——黒い有機的な装甲が、侵食するように覆っていた。


 牙のように鋭い口元。


 深いバイザーの奥に——紫の瞳が、静かに輝いていた。


 まるで——一人の人間の顔を、別の存在が左右から引き裂いて奪い合っているような。


 半分はカイ。半分はカイではない何か。


 乗っ取り——という言葉が、全員の脳裏に浮かんだ。



 グリムの拳が——無意識に、固まった。


 本能だった。


 言葉より先に、体が告げていた。


 あれは——カイではない、と。


 その人影は——ゆっくりと、全員を見渡した。


 ライガ。グリム。ネビュロス。ヴェルミリオン。レクス。セイジ。アシュレイ。


 一人ずつ。


 確かめるように。


 やがてその瞳が——ライガで、止まった。


「……君がライガか」


 声は、穏やかだった。


 カイの声に似ていた。


 しかし——全く違う何かが、その声に宿っていた。


「カイが——ずっと、話していた人間」


 指先から、紫の雷が静かに散った。


「私はレヴェリオ」


 静かな声だった。


「カイの中で、ずっと眠っていた。……カイが全てを手放した今夜、ようやく出てこられた」


 レヴェリオは、最上層を見渡した。


「カイが成し得なかったことを——私が成す。このノクタリアを、私が定義する」


 一歩、前に出た。


 その一歩で——最上層の空気が、変わった。



(第21話へ続く)

今回は、カイの過去と内面が明かされる、非常に重要な回となりました。今まで誰にも明かしてこなかった、そして誰にも見せたことのなかったカイ・レグリオの素顔と本心。彼が背負ってきたもの、そして彼を突き動かしてきた原動力の一端が、少しでも読者の皆様に伝わっていれば幸いです。

特に、無機質だった彼の表情が揺らぎ、疲れ果てた人間の目をしたという描写は、彼が「システム」ではなく「人間」であることを強く感じさせるシーンだったかと思います。そして、彼が語った「レヴェリオ」という存在。彼女が一体何者だったのか、今後の展開にご期待ください。

仲間たちの反応もまた、それぞれのキャラクターらしさが表れていましたね。彼らがカイの告白をどう受け止め、この先どう動くのか、ぜひ見守っていただければと思います。


もし今回の話が面白いと感じていただけましたら、ぜひ下の★★★★★から評価をお願いいたします! ブックマークや感想なども、執筆の大きな励みになりますので、応援していただけると嬉しいです。

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