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アンチジャスティス -魔王戦隊ダークトリニティ-  作者: DD22


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第4部 第1話『灰燼の夜明け』

【前回のあらすじ】

ジャスティスタワー最上層での死闘の末、ライガは神聖バーニングレッドとして《真紅の白炎クリムゾン・プロミネンス》でカイの《統合のユニフィケーション・レイ》を真正面から相殺し、カイを撃破した。仮面を脱いだカイは、施設での孤独、レヴェリオとの出会い、ある科学者との邂逅、そしてジャスティスフェイス創設の全てを語り——セイジ、レクス、アシュレイへの謝罪を口にした。三魔王はそれぞれの言葉でカイに「やり直す機会」を与えた。しかしその直後、カイの内側で眠り続けていた別人格・レヴェリオが顕現。圧倒的な力で全員を叩きのめし、アーネストシティ計画(統合都市計画)の最終シークエンスが起動する中、ライガは全員を転送させ一人タワーに残った。《真紅の白炎クリムゾン・プロミネンス》でコアを破壊し、計画を停止させたライガ——しかしタワーの崩壊と共に、その姿は消えた。

※本作品の執筆にはAIを活用しています。


 夜が、明けようとしていた。


 ノクタリアの空が——東の端から、じわりと白み始めていた。


 ジャスティスタワーがあった場所には。


 瓦礫の山だけが、残っていた。


 夜通し燃え続けた炎が、ようやく収まりつつある。


 白い煙が、朝の空へ細く立ち昇っていた。


 グリムは——その瓦礫を、ずっと見ていた。


 立ったまま。


 動かないまま。


 夜明けが来ても——動けなかった。


「……グリム」


 ネビュロスの声が、後ろから聞こえた。


「座れ。その足では、いつ倒れても不思議ではない」


「……うるさい」


 グリムは、動かなかった。


 ネビュロスは——それ以上、何も言わなかった。


 ヴェルミリオンが、瓦礫の残骸に腰を下ろし——煙の立ち昇る方向をぼんやりと見ていた。


 いつもなら何か言う。


 軽口の一つでも叩く。


 だが——今は、何も出なかった。


「……ライガさんの反応、まだ探してます」


 ポルクが、震える声で言った。


 端末の画面が、青白く顔を照らしていた。


「どこにも——どこにも、ないんです。タワーの中にも、周辺にも……」


 ポルクは、端末を握りしめたまま、俯いた。


「俺が、もっと早く転送できていたら……」


「ポルク」


 エルザが、静かに言った。


「あなたのせいじゃない」


「でも——」


「ライガが決めたことよ」


 エルザは、瓦礫を見たまま言った。


 その目が——かすかに、潤んでいた。


 レクスが——巨体を地面に下ろし、膝に肘をついていた。


「……私は、最後まで何もできなかった」


 重々しい声だった。


「ただ突っ込んで、弾き飛ばされただけだ」


「それでも向かったやろ」


 グリムが、振り返らずに言った。


「……それだけで、十分や」


 レクスは——何も言わなかった。


 ただ、拳を——静かに握りしめた。


 セイジが、空を見上げていた。


「……演算できない」


 静かに言った。


「ライガの生存確率も、今後の行動方針も——今の私には、何も計算できない」


 一拍おいて。


「計算できないことが、こんなに苦しいとは、知らなかった」


 アシュレイは——瓦礫の一つを、静かに蹴った。


「……チクショウ」


 それだけ言った。


 朝の空気の中に——その言葉が、溶けていった。


         *


 その時。


 遠くから——声が聞こえた。


 一つではなかった。


 怒号と、悲鳴と、何かが割れる音が——混じり合っていた。


 グリムが——顔を上げた。


 タワーの瓦礫の向こう。


 リドラムの街の方向から。


 声は——だんだんと、大きくなっていた。


「……何や」


 グリムが、立ち上がろうとした。


 足が——ガクリと折れた。


「グリム!!」


 アシュレイが駆け寄った。


「動くな……! お前の足、まだ動けないだろ!!」


「離せ——気になってしゃあないわ!」


「分かってる! でも今お前達は休んでろ!!」


 グリムは——歯を食いしばった。


 アシュレイの言葉が、正しいと分かっていた。


 魔力は枯渇している。体はボロボロだ。


 それでも——行かなければならない気がした。


「……俺たちが行く」


 レクスが、立ち上がった。


 セイジとアシュレイが——その隣に並んだ。


「あの声を、放っておけない」


 セイジが、静かに言った。


「行くぞ」


 アシュレイが——先に走り出した。



 ただ——真っ直ぐな、足音だけがあった。


 レクスとセイジが、その後を追った。


 グリムは——三人の背中を見ていた。


「……頼んだで」


 低い声だった。


 届くはずのない声だったが——それでも言わずにはいられなかった。


         *


 リドラムの街。


 タワーが崩れた夜、住民たちは誰も眠れなかった。


 あの爆発が、街中の窓を震わせた。


 夜の内から人々は家を出て、タワーの方角を見上げていた。


 煙が上がっていた。


 炎が見えた。


 やがて——轟音と共に、タワーが崩れ落ちた。


 その瞬間、街に静寂が落ちた。


 誰も、言葉を発しなかった。


 あの塔が——消えた。


 夜明けを迎えた頃には、広場に人が溢れていた。


 ジャスティスフェイスがリドラムに最初に現れてから、もう六年が経つ。


 街は白とグレーに塗り潰され、音楽は禁止され、集会は監視された。


 その六年間の支配が、あの塔に集約されようとしていた。

 

 完成したばかりの、漆黒の楔。

 

 それが——消えた。

 

 人々はその事実を、まだ理解できていなかった。


 だが——何かが、変わった。


 その感覚だけが、確かにあった。


 そしてその広場の一角で。


 ジャスティスフェイスの兵士たちが、住民と向き合っていた。


 十数名。全員が武器を携えていた。


 タワーが崩れ、通信が途絶えた今も——彼らは兵士として立っていた。


 しかし。


 指示がない。


 命令がない。


 六年間、命令に従うことだけを続けてきた人間たちが、初めて「次に何をすべきか」を自分で考えなければならない場所に立っていた。


 そしてその周囲を——住民たちが、取り囲んでいた。


「お前たちのせいだ……!」


 誰かが、叫んだ。


「俺たちの街を、何年も——ずっと縛り続けてきた!!」


「息子が再教育施設に送られたのも、お前たちのせいだ!!」


 声が、重なっていく。


 怒りが、熱を帯びていく。


 兵士の一人が——銃を構えた。


「下がれ。これ以上近づけば——」


「撃つのか!? 俺たちを撃つのか!!」


 緊張が、頂点に達しようとした。


 その時。


「待て——!!」


 三つの影が、広場へ飛び込んだ。


 レクス、セイジ、アシュレイだった。


 住民たちが——振り返った。


 兵士たちも——銃口の向きを変えた。


 一人の若い兵士が、目を見開いた。


「ジャ……ジャッジ様……!?」


 その声が、広場に伝わった。


 兵士たちの間に、動揺が走った。


 スーツは着ていない。武器も持っていない。


 しかし——あの体格、あの立ち姿は、間違いなかった。


「セイジ様も……ブレイズ様も……」


「なぜここに……タワーが崩れて、我々の指揮系統が——」


 兵士たちがざわめく中、住民の一人が叫んだ。


「ジャスティスフェイスの幹部か!! こいつらも同じだ!!」


「そうだ、捕まえろ!!」


 住民と兵士、双方の目が三人に集まった。


「……元、だ」


 レクスが、重々しく言った。


 その一言で——広場が、静まった。


「私たちはかつて、ジャスティスフェイスの幹部だった。……この街を踏みにじった側にいた」


 住民の目が、険しくなった。


「なら——お前たちも同じだろう!!」


 兵士の中の一人が、逡巡するように銃口を向けた。


「……ジャッジ様、それはどういう——」


「撃つなら撃て」


 レクスは——動じなかった。


「だが、聞け」


 その声の重さに——引き金を引こうとした指が、止まった。


「私たちは間違えた。この街を、この人々を、傷つけた側にいた。……それは事実だ」


 広場が——静まった。


「だが——」


 レクスは、銃を持つ兵士たちを見た。


 次に——住民たちを見た。


「この者たちを今ここで叩きのめして、何が変わる。傷ついた人々が癒えるか。壊れた街が戻るか」


「……ッ」


「私は長い間、法という名の盾の後ろに隠れて、自分で考えることを放棄してきた。……だから今、初めて自分の言葉で言う」


 レクスは、住民たちを——まっすぐ見た。


「間違いを犯した者に、やり直す機会を与えてほしい。……それだけだ」


 広場が——沈黙した。


 セイジが、静かに言った。


「私も、かつては人間を数字として処理していた。効率のために切り捨てることを、正しいと思っていた。……間違いだった」


 アシュレイが——腕を組んで、広場を見渡した。


「俺はあんたらに、許せとは言わない。俺自身が、まだ自分を許せてないから」


 アシュレイは、銃を握ったままの若い兵士を見た。


 自分とそう変わらない年齢だった。


「でも——こいつらをここで叩くのは、違う」


 誰も、動かなかった。


 住民の中の誰かが——小さく、泣いていた。


 広場に、朝の光が差し込んできた。


         *


 リドラムの外れ。


 廃墟と化した区画の外れに——建物が一つ、静かに立っていた。


 その中に、人の気配があった。


 暗闇の中。


 人影が——立っていた。


 座り込んでいたのではない。


 倒れていたのでもない。


 最初から——立っていた。


 まるで、ずっとそこに立ち続けていたように。


 長い黒髪が、肩に垂れていた。


 人影は、ゆっくりと——自分の手を見た。


 細い、男の手だった。


 カイの手だった。


 しかし——その目は。


 カイの目ではなかった。


 レヴェリオは——手を、ゆっくりと握りしめた。


 開いた。


 また、握りしめた。


 肉体がある。


 重力がある。


 空気がある。


 カイの記憶の中でしか知らなかった、全てのものが——今、この身体を通じて、直接触れてくる。


(これが、「在る」ということか)


 レヴェリオは、しばらくその感覚の中にいた。



「カイ」


 静かに呟いた。


「お前は『誰も泣かない世界』を作ろうとした。……それがお前の答えだった」


 一拍おいて。


「私の答えは、違う」


 レヴェリオは、窓から離れた。


 カイが「管理」を選んだなら——私が選ぶのは「断罪」だ。


 泣いている者がいる。傷ついた者がいる。


 誰かが「正しい側」に立つ必要がある。


 そして——「間違った側」を裁く者が必要だ。


 それが、私がこの世界でやるべきことだと——レヴェリオは、この朝の光の中で、静かに決めた。


 (第2話へ続く)

ここまでお読みいただきありがとうございます!


第4部が始まりました。


タワーが崩れた翌朝、全員がボロボロのまま迎えた夜明け——ライガの不在が、静かに全員の上に重くのしかかっています。グリムが動けない中、3レッドが生身で立ち上がった場面、いかがでしたでしょうか。かつて正義の名のもとに動いた者たちが、今度は「やり直す機会を与えてほしい」と自分の言葉で語る——この物語が伝えたいことが、少しでも伝わっていれば幸いです。


そしてレヴェリオが、カイの身体で初めて朝の光を見た瞬間。彼女の物語が、静かに動き出しました。


次話以降、各ラインがどう動いていくのか——ぜひお楽しみに!


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