第22話『赤と銀、交錯する正義(前編)』
【前回のあらすじ】
組織と決別し、自身の意志で再変身したライガ。彼はかつての親友であり、全ての元凶であるカイとの直接対決に挑む。
※本作品の執筆にはAIを活用しています。
「爆熱剛拳!!」
ライガの拳が、真紅の炎を纏って突き出される。
だが、その一撃はカイの目前で弾かれた。
見えない壁――重力障壁だ。
「遅い」
カイが指先を振るう。
ドォン!
ライガの身体が、見えざる巨大な手に叩かれたように床へ沈む。
「ぐ、ぅ……ッ!」
「重力制御。私の前では、上下左右の概念すら無意味だ」
カイが宙に浮き上がる。その背中の光翼が、無機質に輝いている。
「力押しでは私には勝てない。……それは、訓練生時代から変わらない事実だろ?」
「……ああ、そうだな」
ライガは重力に逆らい、軋む装甲を叱咤して立ち上がる。
「お前はいつだって優秀だった。冷静で、賢くて、強かった。
……だから俺は、お前に憧れてたんだ」
「過去形か」
「そうだ。今の冷たいお前には、憧れなんて欠片もない!」
ライガはスラスターを全開にする。
単純な直線攻撃。だが、その加速力は常識を超えていた。
「無駄だと言っている!」
カイが重力波を放つ。
だが、ライガは止まらない。炎の推進力で重力の壁を強引に押し破る。
「なッ……!?」
「理屈じゃねぇんだよ! 俺の炎は!!」
ドガァッ!!
ライガの拳が、カイの胸板を捉えた。
銀色の装甲に亀裂が走り、カイが吹き飛ばされる。
「くっ……!」
カイが体勢を立て直す。その仮面の下で、表情が歪んだ。
計算外。感情の力が、数値を凌駕している。
「なぜだ、ライガ!
なぜ理解しない! 私の計画が完成すれば、もう誰も悲しまなくて済むんだ!
争いも、差別も、理不尽な死もない!
それが一番の幸せじゃないのか!?」
「悲しまなくて済む、だと……?」
ライガが炎の中から歩み寄る。
「俺たちが目指したのは、そんな管理された平和じゃない!
『誰もが自分の足で立って、笑い合える世界』……そう約束したはずだろ!」
「約束だと……?」
カイの声が低くなる。
「ああ、そうだ。私は約束した。
……どんな手段を使ってでも、この世界から『争い』を消し去ると!」
「手段を選ばないなんて言ってない!
俺たちが訓練生時代、あの暴動の鎮圧で守りたかったのは、人々の笑顔だったはずだ!」
「笑顔? 甘い夢を見るな!」
カイが叫ぶ。
「あの日、我々が救おうとした村で何が起きた?
言葉が通じず、些細な誤解から殺し合いが始まり、誰も生き残らなかった!
……お前も見たはずだ! あの地獄を!」
ライガの脳裏に、忌まわしい記憶が蘇る。
初任務での失敗。説得を試みたが失敗し、目の前で村人たちが互いを殺し尽くした惨劇。
ライガにとっては「力不足の悔恨」だった。
だが、カイにとっては違った。
「言葉など無力だ! 対話で救える命など、ほんの一握りだ!
だから私は誓ったんだ。……彼と共に、力による完全な管理を実現すると!」
「彼……? 誰のことだ?」
ライガが怪訝そうに問う。
「俺との約束じゃないのか!?」
「……お前にはわからない」
カイの瞳に、暗く重い執着が宿る。
ライガが知らない時間。あの日、絶望したカイの前に現れ、「統合」という甘美な毒を囁いた男の存在。
「あの日、私が何を失い、何を託されたか。
この『統合都市計画』は、私の贖罪であり、希望なのだ!」
カイの言葉は、ライガには届かない。
ライガの言葉もまた、カイには届かない。
二人が見ている「約束」は、決定的に食い違っていた。
カイの全身から、どす黒い重力波が溢れ出す。
それはもはや正義の光ではない。亡き友への執着と、自身の絶望が形作った、漆黒の闇だ。
「私が……私が世界を『正解』にするんだ!!」
暴走するカイ。
その姿を見て、ライガは悟った。
彼を止めることができるのは、言葉ではない。
すれ違った約束を断ち切る、友としての拳だけだと。
「……わかったよ、カイ。
お前がそこまで頑固なら、俺も全力で答えてやる」
ライガの右腕、ヒート・ガントレットが白熱する。
限界を超えたエネルギーが、紅蓮の炎となって渦巻く。
「俺は、お前の『呪い』ごと、焼き尽くしてやる!!」
(第23話へ続く)




