第21話『決別の赤、そして』
【前回のあらすじ】
組織の闇を知り、魔王たちと共に死地を脱出したライガ。
彼は全ての元凶であるカイ(ユナイト)を問いただすため、ボロボロのスーツのまま、聖断空母ジャッジメントへと帰還する。
※本作品の執筆にはAIを活用しています。
爆発の余波が残る地上施設を背に、ライガは空を見上げていた。
遥か上空に浮かぶ銀色の要塞、聖断空母ジャッジメント。
かつては希望の象徴に見えたその巨体が、今は冷たい墓標のように感じられた。
転送ポイントまでの足取りは重い。
一歩進むごとに、かつての仲間たちの笑顔や、カイと語り合った理想の日々が脳裏をよぎる。
だが、そのすべてが「嘘」の上に成り立っていたとしたら。
胸元のドッグタグが、心臓に合わせて重く脈打つ。
(行かなきゃならない。俺が……終わらせるために)
光に包まれ、彼は空へと昇った。
聖断空母ジャッジメント
足を踏み入れる。
変身を解除する余裕すらなく、装甲は砕け、煤と血にまみれた満身創痍の姿。
だが、その赤いバイザーの奥にある瞳だけは、かつてないほど澄んだ光を放っていた。
「戻ったか」
広大なフロアの最奥。
無機質なデスクの向こうで、カイ・レグリオは顔も上げずに言った。
モニターの光に照らされたその横顔は、彫像のように冷たく美しい。
「兵器開発局の消失は確認した。……侵入者(魔王たち)は始末したのか?」
「……逃がしたよ」
ライガは静かに答える。
「いや、あいつらに助けられたと言うべきか」
カイの手が、キーボードの上でピタリと止まる。
ゆっくりと顔を上げ、感情の読めない冷徹な瞳でライガを見据えた。
「何の話だ」
「とぼけるな。あそこで行われていた実験のことだ。
魔族を生体部品にする……あんな非道な真似をしてまで、俺たちは何を守ろうとしていたんだ?」
「……見たのか」
カイは表情一つ変えずに立ち上がった。
悪びれる様子など微塵もない。むしろ、「それが何か?」と言わんばかりの態度だ。
「ならば話は早い。あれは必要な犠牲だ。
魔族という予測不能な危険因子を、管理可能な『力』へと変換する。これこそが最も合理的で、無駄のない平和維持システムだ」
(合理的……? 命を、数字で測るのか?)
ライガの脳裏に、瓦礫の下で動かなくなった少女の姿が蘇る。
だが、カイの言う「平和」は、その少女のような犠牲の上に成り立つものなのか。
「ふざけるな!!」
ライガが叫び、拳をデスクに叩きつける。
強化されたガントレットが金属の天板をひしゃげさせる。
「命を部品扱いすることの、どこが平和だ!
俺たちが目指したのは、誰もが笑って暮らせる世界だったはずだろ!
あの子のように……守られるべき弱者が、理不尽に泣かなくて済む世界を!」
「お前のやり方は……ただの独裁だ!」
「独裁で構わない」
カイは淡々と告げる。
その声には、迷いも、かつての友への情けも感じられない。ただの「管理者」の声だ。
「愚かな大衆には、導く者が必要だ。
自由を与えれば彼らは争い、傷つけ合う。完全な管理下でしか、恒久的な平和は訪れない。
……ライガ、お前は感情論で理想を語るが、現実はもっと冷酷だ」
カイが指を鳴らすと、司令室の巨大モニターが一斉に切り替わった。
映し出されたのは、『統合都市アーネストシティ』の完成予想図。
人々が同じ服を着て、同じ時間に起き、同じ思想を植え付けられて生活する、巨大な管理社会の縮図。
「これが私の答えだ。
個性を消し、思想を統一すれば、争いは起きない。
誰も傷つかない世界が完成する」
「……それがお前の正義か」
ライガは拳を握りしめ、震える声で問う。
怒りよりも、深い悲しみが胸を満たしていた。
(もう、戻れないんだな。俺たちは)
「俺たちの友情も、あの日の誓いも……全部、このシステムのための踏み台だったのか?」
「感傷は捨てろと言ったはずだ」
カイが背を向け、手元のコンソールを操作した。
それは、ライガ・アランという「友人」を切り捨てる動作だった。
「私についてこられないなら、ここでお別れだ。
……システム、権限剥奪(アクセス拒否)。対象:バーニングレッド」
『了解。変身システムを強制解除します』
無機質なアナウンスと共に、ライガの身体から力が抜ける。
真紅のスーツが光の粒子となって霧散し、ボロボロの生身が晒された。
守るべき鎧を失った彼は、ただの傷ついた青年に戻った。
「なッ……!?」
「お前はもう、ジャスティスフェイスではない。ただの無力な人間だ」
カイは冷たく言い放つ。
その視線は、もはや敵を見る目ですらない。路傍の石を見る目だ。
「消えろ、ライガ。二度と私の前に現れるな」
拒絶。そして無力化。
かつての親友からの、完全なる絶縁宣言。
全てを奪われた。力も、立場も、友情も。
だが、ライガは膝をつかなかった。
むしろ、その瞳には新たな炎が宿っていた。
絶望の淵で、グリムの言葉が蘇る。
『その泥にまみれた手が、お前の本性や』
「……違うな」
ライガは、胸元のドッグタグを強く握りしめた。
冷たい金属の感触。それが、彼に戦う理由を思い出させる。
あの日守れなかった少女。彼女が俺に残してくれたのは、後悔だけじゃない。
「誰かのために立ち上がる」という、原初の想いだ。
「俺は……組織の力で戦っていたんじゃない。
守りたいものがあるから、戦えたんだ!」
バチッ、バチバチッ……!
ライガの腕に残った変身ブレスから、死んだはずの赤い火花が散る。
ライガの熱い想いが、システムの制御コードを焼き切り、強制的に回路を繋いでいく。
『エラー。エラー。……強制接続オーバーライド』
『認証コード……不明。個体名……“俺の正義”』
「俺の正義は……俺が決める!!」
ライガは叫び、火花を散らすブレスを天に掲げた。
「ジャスティス・チェンジ!!!」
爆発的な紅蓮の光が、司令室を染め上げる。
警報音が鳴り響く中、光の中から現れたのは、傷一つない真紅のスーツ。
バーニングレッド。
だが、その姿は以前とは違う。胸のエンブレムが、より激しく、荒々しい炎の形に輝いている。
それは組織から与えられた力ではない。彼自身が勝ち取った、魂の形状だ。
「……システムを、気合でねじ伏せたか」
カイもまた、懐から変身デバイスを取り出す。
その口元には、微かに皮肉な笑みが浮かんでいた。
それは、予想外の事態を楽しむような、あるいは待ちわびていたような笑みだった。
「いいだろう。不適合者は、私が直接排除する。
……ジャスティス・チェンジ」
銀色の光が奔流となる。
ユナイトレッド。
その背中には六枚の光翼が展開し、神々しくも冷酷な輝きを放っている。
「行くぞ、カイ!!」
「来い、ライガ!!」
司令室で、赤と銀が激突する。
かつて背中を預け合った二人が、今は互いの信念を懸けて殺し合う。
爆炎と重力波が交錯し、ジャスティスフェイス最強の二人の戦いが、悲しくも激しく幕を開けた。
(第22話へ続く)
ここまでお読みいただきありがとうございます!
いよいよ、ライガとカイの因縁が激突する回となりました。かつて背中を預け合った二人が、それぞれの「正義」を懸けて対峙する様は、書いていて私自身も胸が締め付けられる思いでした。
今回、一度は力を失ったライガが、組織に依存しない「俺の正義」を叫び、自身の魂の力で変身システムを再構築するシーンは、彼が真の主人公として覚醒した瞬間だと思っています。
カイの掲げる冷徹な「管理された平和」と、ライガの叫ぶ「誰もが笑える世界」——二人の理想が激しくぶつかり合う戦いは、これからさらに苛烈になっていきますので、どうぞご期待ください!
物語は次話でさらに加速しますので、どうぞお楽しみに!
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