表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/16

第12話:魔導具が救った命――否定派の学者が沈黙した日

学会壇上での発表から一夜明け、俺は控え室で一息ついていた。

 会場の外ではまだざわめきが続いているらしい。


 何人もの研究者が「もう一度話を聞かせてくれ」と訪ねてきたが、正直、疲れた。

 そんな中――


 


「セイル……お前、やっぱり本物だったんだな」


 


 その声に、俺は顔を上げた。

 立っていたのは、かつて俺を“無能”と罵り、研究成果を横取りした元同僚・ダリス=モーンだった。


 


「なにしに来た。皮肉でも言いに?」


「……違う。ただ、お前に謝りに来たんだ」


「へぇ、太陽でも落ちたのか?」


 


 ダリスは苦笑いを浮かべて、椅子に腰を下ろした。


「なぁ、覚えてるか? お前が“生体魔導フィルター”の実験してた頃、周囲からどれだけ笑われてたか」


「笑われたっけな。爆発もしたしな」


「でも――お前が試作したそのフィルター、今、王都の病院で“魔導器過敏症”の治療に使われてるんだよ。お前の名は消されてたが、構造式は、まんまあれだった」


「……盗んだんじゃなくて、パクったって言い訳?」


「違う。本当に知らなかった。お前の追放後に引き継いだ研究室に残ってた資料を、“自分たちの功績”として処理してたんだ……。俺も、それを知って、やっと全部つながった」


 


 ダリスの顔には、言いようのない疲労が刻まれていた。

 傲慢で、自信過剰で、周囲を蹴落としていた頃の彼ではない。


 


「で、今さら謝って、俺に何を求める?」


「……弟子にしてくれ、とは言わねぇ。でも……一緒に、何かを作りたい。今度は正しく、堂々と、名前を並べて」


 


 俺はしばらく黙ってから、冷めた茶に口をつけた。


「じゃあ……その時は、まずは**“現場”に来いよ**。俺のギルドに。話はそれからだ」


「……本当に行ってもいいのか?」


「うちには今、子どもや元軍人や精霊の声が聞こえる少女までいる。優秀な奴は歓迎するよ。誰でもな」


 


 ふっと、ダリスが涙をこぼしながら、頭を下げた。




 その後、学会の研究報告会では、セイルの魔導具を用いた“実地での症例”が次々に提出された。


・魔導病の抑制に“魔力拡散装置”が効果あり

・共鳴核を用いた魔導災害の予兆感知

・風精霊共鳴装置による気象予測の実用化


 


 それらの事実が、「魔導具は玩具にすぎぬ」と断じていた保守派の学者たちの口を、徐々に閉ざしていった。


 


 やがて、議長席にいた重鎮がこう述べた。


「評価とは何か。“学会の定義”ではなく、“命の現場”で問うべきではないか」


 


 この日を境に、《魔導具工学》という分野の再評価と見直しが進むことになる。

 そしてその中心にいたのが、かつて“評価ゼロ”だった男――セイル・アーヴであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ