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第11話:評価0の魔導具師、学会の壇上に立つ

煌びやかな光の都、アルカディア魔導都市。

 王都よりもさらに南、魔導研究の粋が集まるこの地で、五年に一度の《世界魔導学会》が開かれる。


 国内外の学者、魔法使い、貴族、研究機関、魔導兵器開発者たちが集うこの舞台。

 そして今年――


「まさか、俺がここに呼ばれるとはな……」


 


 会場は石造りのドーム式講堂。

 壇上には名だたる魔導教授たちが並び、その中央に、ぽつんと設置された“発表席”。


 ――そこが、俺の“戦場”だ。


 


「次の発表者、辺境魔導具開発ギルド、セイル・アーヴ氏――壇上へ」


 


 名前を呼ばれ、足を踏み出す。


 観客席からはざわめき。

 「誰だ?」「あれが例の辺境の?」「あんな格好で?」

 嘲り混じりの視線。スーツでもローブでもなく、俺はいつも通りの作業服姿。


 


 壇上に立った俺を出迎えたのは、かつての“元上司”であり今は学会役員の男――


「……よくここまで来たな。だが、この場は“お遊び”ではないぞ、セイル・アーヴ」


「お遊びじゃねぇから来たんだよ」


「……ふん。持ち時間は20分。“魔導具とは何か”を語ってみろ。評価は“学会基準”に則る」


 


 俺は、懐から一枚のスクロール(巻紙)を取り出した。

 だが文字はほとんど書かれていない。代わりに、カバンの中から一つの魔導具を取り出した。


 


 それは、村で使っていた“水を無限に出す壺”の試作機。


 


「――俺は、魔導具を“語る”つもりはない。見せる。

 それが、俺の研究のすべてだからな」


 


 壺に魔力を注ぎ、起動。会場中央に設置したタライに、こんこんと清水が湧き出す。


 観客席がざわめく。


 


「これは、“無詠唱・無刻印”で作動する自動魔力変換式具――」


「そんなもの、理論上不可能だ!」


 学者の一人が叫んだ。


「魔力変換装置は常に触媒と精密な制御式が必要だ。それがないこれは――」


「全部、壺の内部でやってるんだよ」


 


 俺はさらに、浮遊靴・音遮断枕・温熱布団・共鳴核人形などを順に提示。

 一つひとつが、“辺境の暮らし”で実際に人を救ってきたもの。


 


「魔導具は、特許でも学術論文でもない。

 人を救って初めて、魔法として生きるんだよ」


 


 その一言に、聴衆が静まり返る。


 


 学会役員が、苦々しく呟く。


「……実用性があるとでも言うのか? そんな粗末な構造で」


「じゃあこの中で、村一つ救った装置を作ったやつ、どれくらいいる?」


 


 返す者はいない。


 


「俺は、評価も称号も魔法等級もいらない。

 でも、俺の作ったものが“誰かの命をつなぐ”なら、それでいい」


 


 静寂のなか、一人の老人が立ち上がった。


「……若者よ。おぬしの名を、もう一度尋ねたい」


「セイル・アーヴ」


「ならば、セイル・アーヴ。わしは本日を以て、魔導具工学第三部門代表を辞する。次の代表に、おぬしの名を推挙する」


 


 講堂が揺れるようなどよめき。


 セイル・アーヴ。追放された“評価ゼロ”の男が、

 世界魔導学会の壇上で、最も重い評価を得た瞬間だった。

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