第10話:“世界魔導学会”からの召喚状──それは、栄光か陰謀か
ある日の昼下がり。
ギルドに届いた一通の封筒が、俺たちの空気を一変させた。
「……セイル様宛て、直筆封蝋。差出人は、世界魔導学会」
ルシアが硬い声で読み上げる。
「……あー、めんどくさいやつ来たな」
「いやいやいや、スルーできる問題じゃないですって!?」
世界魔導学会。
それは全大陸を横断する魔術技術の最高機関。
魔導学の定義・研究・規範を司る、言わば「表の頂点」。
俺はその昔、魔導学園の学生時代に一度だけ、論文を提出したことがあった。
当然、当時は一蹴されて終わった。だが――
「“辺境に現れた異才、セイル・アーヴ。その魔導具群の研究は既存の定義を覆す可能性を秘めており、学会として招集を要請する”……ですって」
「ほら見ろ。なんか嫌な予感しかしない」
「セイル様、このままじゃ“欠席裁判”されかねません!」
「私の勘では……これは“表向きの賞賛”に見せかけた排除フラグよ」
そのとき、フォルトが真剣な声を出した。
「セイル。お前……行くべきだ」
「……フォルト?」
「オレたち、ずっと言われてたじゃん。“認められないから意味がない”、“公式の評価がなきゃ研究じゃない”って。でも、お前の魔導具は、誰よりも多くの命を救ってる」
「…………」
「だからこそ、“真っ正面から、叩きつけてこいよ”。あいつらに、お前の答えを」
しばらくの沈黙のあと、俺は、封筒を開いた。
その中には、学会開催の通知とともに、壇上発表の席が指定されていた。
「……壇上って。俺が喋んのかよ……」
「もちろんですわ!」
「逃げるなセイル!」
「楽しそう!」
「ミリィは、ふうさんといっしょに、うしろから見てる!」
こうして俺は、辺境を離れ、王都よりさらに南の大陸中央――アルカディア魔導都市へと旅立つことになった。
何が待っているかはわからない。
でも一つだけ確かなのは。
かつて“追放”された俺が、
いま、“世界の頂点”に呼ばれたということ。




