バレてた作り笑い
十二月三十一日
私は無事に、最後の仕事を終えた。
数日前から、シフト表の関係で
周囲には、私が辞めることも
知られていた。
本当は、一人一人
ちゃんと挨拶をしたかった。
でも今日は、十二月三十一日。
仕事を終えると
皆、バタバタと帰っていく。
年末特有の慌ただしさもあって
中々、そうもいかなかった。
そんなバタバタした空気の中
私は、同期二人へ
挨拶をしようと思い、姿を探した。
すると
直属の上司と話している二人が目に入る。
(……忙しい、かな?)
そう思って、少し離れた場所から
様子を伺っていると
私に気付いた二人が
わざわざ、こちらへ来てくれた。
「本当に……今日で終わりなんだね~
寂しくなるよ」
そう言ったのは
私より一週間早く入った人。
そして、もう一人が
「短い間だったけどさ
いっぱい笑わせてもらったよ!
ありがとね!!」
そう言いながら
ギュッと、私の手を握ってくれた。
「私こそ……
二人のおかげで本当に楽しい日々だったよ
本当にありがとう」
そこまで言ってから
私は二人を見ながら、少し笑う。
「……元気でいてよね?」
テンションこそ若い二人だったけれど
やっぱり年齢のことを考えると
そこが、一番心配だった。
「まだまだ元気に頑張るから、大丈夫だよ~
人の心配してないでさ
アンタこそ…ちゃんと笑えるようになんなよ?」
そう言って
一人が、ニヤッと笑う。
すると、もう一人も
「そうそう!
今でこそ、だいぶ良くなったけどさ~
最初の頃の作り笑い……
正直、気持ち悪かったからね?」
そう、ケラケラ笑いながら言った。
「……え!?
バレてたの!?
なんで!?」
驚いてそう聞くと
二人は、顔を見合わせて
クスッと笑った。
「何年生きてると思ってんの~
そのくらい分かるぐらいには
歳取ってんのよ」
そう言って
一人が肩をすくめる
すると、もう一人も
「そうだよ~
私たちと同じ歳になれば
分かるようになるって」
そう言いながら
バシッと、私の肩を叩いた。
そして、二人は手を振りながら
笑って去っていった。
(……同じくらい歳を取れば、か
その頃には……笑い話に出来てるのかな)
そんなふうに、少しだけ
未来の自分を想像する。
そして……
もし、歳を重ねるなら
あの二人みたいに
笑って
人の痛みに気付ける
そんな大人になりたい
そう、強く思った別れだった。
見えなくなっていく
二人の背中へ向かって
私は、小さく呟いた。
「本当に……ありがとう」
そう言ってから
私は、事務所へ向かった。




