夜勤?〘食ったら動け〙の友人の言葉
その日の夜。
私は、プロレスを一緒に観るため
あの
『食ったら動け』
の友人と 出掛けていた。
実習の送迎をしていることは
事前に話してあったため
気を遣ってくれたのか
「会場まで乗せてくよ~」
そう言って
車を出してくれることになった。
そして、会場へ向かう車内で
私は、これまでのことと
仕事についての悩みを
ぽつぽつと話し始めた。
黙って話を聞いていた友人は
「ふーん……まぁ、確かに気は使うわな」
そう、ぽつりと言った。
「そうなんだよね~……
尻ぬぐいさせるのも嫌だし
なによりさ……息子に
〘寂しかった〙って言わせたのも、さぁ……」
そう言いながら
私は、流れていく景色へ視線を向けた。
高等部へ上がってから
息子と、一緒に
自力登校
そして、自力下校の練習をしてきた。
そして今では、一人で登下校が
出来るようになった。
だから、どこかで
(もう、息子は一人でも大丈夫)
そう、甘えていた自分もいたのだと思う。
でも……
昼間、帰っても
誰もいない静かな家。
親が帰ってくるのは、夜遅く。
それまで
ずっと、一人で部屋で過ごす。
そんなこと
本当は、簡単に想像出来たはずだった。
なのに私は
自分のことで手一杯で
息子の〘気持ち〙にまで
頭が回っていなかった。
「私からするとさ~
鍵っ子の子って
自立すんのも早い気がするけどね
実際、アンタも、私もそうだったじゃん?」
そう言ってから
友人は、少しだけ笑った。
そして
「でもさぁ
〘寂しかった〙っていう、息子の言葉をさ
アンタが無視出来るわけないんだから
だったらもう
働き方、変えるしかないじゃん?」
「まぁ、ね~」
相変わらず
サラッと言ってのける友人に
私は、少し笑ってしまった。
でも……実際その通りだった。
すると友人は
「前から思ってたんだけどさ~
夜勤って、どうなの?」
そう言った。
「アンタ、どうせ寝るの遅いんだし
寝ても途中で起きるって言ってたじゃん?
だったら、その時間働き行けば?」
そう言われた瞬間。
(……あ、そっか
その手があったか)
そう思ったものの
すぐに、昔のことを思い出した。
息子がまだ小学生だった頃
一度だけ、五時間ほどではあったけれど
夜勤の仕事をしていたことがあった。
〘寝ている時間に働けばいい〙
当時の私は、そんなふうに考えていた。
でも……
働き始めて、一ヶ月ほど経った頃から
息子が
夜中に起きてくるようになってしまった。
もちろん、他にも色々な要因はあったけれど
だけど、それも原因の一つになって
結局、その会社は
半年も経たないうちに辞めてしまった。
でも、今の息子はもう高校生だ。
夜中に起きてきたとしても
もう、特に問題はないだろう。
方向性は決まった。
あとは、会社へ話をするだけだ。
でも
「……会社に話すの、気が重いな~……」
そう、ぽつりと呟くと
友人は、呆れたように言った。
「は?家族優先にしたいから
辞めたいって言ってんのに
そこでグズグズ言う会社なんか
ろくでもないわ
なんか言われるようなら
退職届、投げて帰ってやれば?」
そうバッサリ言うと
友人は、タバコを咥えたまま
ニシャッと笑った。
その顔を見て
私は、少し肩の力が抜ける。
「……ありがとう」
そう言って
私も、タバコに火をつけた。




