〘最優先〙の置きどころ
一年生の実習も終盤を迎え
いよいよ、ラスト一日となった日。
その日は、少し早めに実習先へ着いて
私は、福祉施設の玄関で
息子が終わって出てくるのを待っていた。
すると、実習先が同じだった子の
お母さんと話す時間が出来た。
仕事について悩んでいた私は
思い切って、聞いてみることにした。
「仕事って……どうしてる?
やっぱり、時短?」
すると、そのお母さんは
「去年までは働いてたんだけどね~
あの娘が高等部に上がると同時に
旦那と相談して辞めたの」
そう言って
少し、寂しそうに笑った。
「これから先のこと考えると……
とてもじゃないけど、出来ないもんね」
その言葉に
私は、少し申し訳なくなって
「あ……知らなかったとはいえ
なんか、ごめんね
他のお母さんたちって
どうしてるんだろうね?」
そう聞くと……
「なんかね~
社員で働いてたお母さんたちは
春から時短パートにしたとか
パート辞めてアルバイトになったとか
聞くけど……」
そこまで話してから
そのお母さんは
小さく、ため息をついて
「やっぱり……子供のことに手がかかるからさ
満足には、働きたくても働けないよね」
そう呟いた
「やっぱり……そうだよね
時短期間が毎年になって、期間も長くなるし
そこに面談とかも入ってくるようになると……
どうしても、申し訳なさが勝つもんね」
そう言いながら
私は、福祉施設の玄関へ視線を向けた。
すると、そのお母さんも
「そうなんだよね~
周りはさ
〘いいよ、いいよ〙って言ってくれてもさ
仕事って、待ってくれないし
結局……尻ぬぐいする人のこと考えるとね」
そう言って、苦笑いする。
そんな話をしているうちに
福祉施設の玄関から、息子たちが出てきた。
その子たちへ近付きながら
そのお母さんは、ぽつりと言った。
「障害のある子を持つ親にしか
分からない苦労って、あるよね
結局……最優先をどこに置くか、なんだと思う」
そう言って、そのお母さんは
娘さんの手を引きながら、帰っていった。
その後ろ姿を見ながら
私は、ぽつりと呟いた。
「仕事、か……
どうしようかな」
すると、普段あまり多くを話さない息子が
「母ちゃん……疲れちゃったのか?」
そう言いながら
私の顔を、覗き込んできた。
私は、息子の頭を撫でながら
「ううん、大丈夫
…母ちゃんさ~
もし、お仕事辞めて
昼間、お家にいるようになったらどう思う?」
そう聞いてみる。
すると息子は
「うーん……分かんね」
そこまで言ってから
「あ、違う……えーと……」
少し考えるように視線を泳がせて
「寂しかった、だな」
そう、息子なりに一生懸命考えて
答えてくれた。
「そっか……寂しかった、か」
そう呟いて
私は、もう一度息子の頭を撫でた。
「そうだよね
最優先は……アンタだよね」
「ありがとう
母ちゃんは、決めたよ」
そう言って
私は、息子の手を握りながら
一緒に、車へ戻った。




