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私は二度、三十キロ痩せた  作者: かゆると


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母ちゃん、ちょ、調子悪いのか!?

エガちゃんねるを聴きながら

眠れるようになってから


朝の目覚めが

少しずつ変わっていった。


これまでは、息子を送るために


重たいまぶたを

無理やりこじ開けて


なんとか身体を起こしていた。


でも、今は違う。


パッと、目が覚める。


そして、そのまま

すっと身体を起こせる。


あの頃みたいな

身体の重さが、ない。


(……あれ?)


ほんの少しの変化。


でも、それだけで


一日の始まりが

まるで違っていた。


眠りは、なんとかなった。


次は〘食事〙だった。


それまでは、食べたい時に

食べられるものを食べる。


そんな生活になっていた。


どか食いではない。


でも、栄養バランスなんて

ほとんど考えていなかった。


ゼリーを食べて

時間が経って


アイスを食べて

また時間が経って


昼ご飯を食べる。


そんな

〘ちょこちょこ食い〙を


一日に4回、5回と、繰り返していた。


それを


〘仕事をしている生活〙へ

戻していく。


今思えば

これが、一番難しかった。


朝は、ブラックコーヒー


昼は、パンを一つ


夜は、普通に食べて

ウォーキングへ行く。


前の仕事をしていた頃は

普通にできていたこと。


でも……


一度崩れた生活リズムを戻すのは

思っていた以上に大変だった。


口が、寂しい。


とにかく

何かを食べたくなる。


そんな感覚が

ずっと、付きまとっていた。


そんな、ある日のことだった。


息子と夕飯を食べ終え


会社へ提出する書類をコピーしようと

旦那の部屋へ向かおうとした。


その時、私は何気なく

息子に声をかけた。


「母ちゃん、しばらく

 お父さんの部屋にいるからね~」


自閉症の息子に対する

いつもの声かけ。


そのつもりだった。


でも、息子は

パッと表情を変えた。


「ちょ、調子悪いのか!?」


思わず、といった感じで

そう聞いてくる。


その瞬間……


息子が、どれだけ

私のことを心配していたのか。


どれだけ

不安を抱えていたのか。


それが、ようやく分かった。


「違うよ~

 お父さんのパソコン借りるだけ」


そう言うと

息子は、ほっとした顔で


「なんだ……

 気持ち悪いとかじゃなくて、パソコンか……」


そう言って、ニヤッと笑った。


そしてまた

ご飯へ視線を戻す。


「そうだよ~

 母ちゃん、元気元気!」


そう言いながら……


私は、息子の頭を

ぐしゃぐしゃっと撫でて


そのまま、抱きしめた。


「……ありがとね」


自然と、そんな言葉がこぼれていた。


そして、思った。


(……口寂しい、とか

 言ってる場合じゃないな)


私が思っていた以上に


息子は、ずっと不安だったんだ。


心配をかけていたんだ。


少しずつ、戻そう。


少しずつ、元気になろう。


そう、強く改めて思った。

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