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私は二度、三十キロ痩せた  作者: かゆると


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踏み出した一歩、新たなジャンル

私は、次の仕事を探し始めた。


ただ、ひとつだけ

決めていたことがあった。


(人と、あまり関わらない仕事がいい)


接客業は、選ばなかった


でも、それは逃げじゃない


(まだ、完全に戻ったわけじゃない)


そう思っていたからだ。


無理をして


また同じことを繰り返すくらいなら

今の自分に合った場所を選びたい。


それに、これまでとは

違うジャンルの仕事にも挑戦してみたかった。


(今は、人と関わることよりも

 目の前の仕事に集中したい)


そう思った。


求人情報誌を見ながら


次の仕事を探していると

ピッキングの仕事が目に入った。


ピッキングが

どんな仕事なのかは


正直、よく分からなかった。


でも、CMなんかで

見たことはある。


なんとなく

イメージは湧いていた。


(……これ、いいかも)


そう思った。


前の仕事は

市外だったこともあって


帰りが遅くなり

息子と関わる時間が、ほとんどなかった。


だから今回は


〘市内で働けること〙


それも、ひとつの条件だった。


それから、学童の送迎も

自分でしてあげたかった。


だから

その曜日は休めること。


でも、収入も必要。


だからこそ


365日稼働していて

シフトで調整できる場所。


その全部の条件に

ちょうど当てはまったのが


そのピッキングの仕事だった。


(……ここなら

 いけるかもしれない)


そう思って

スマホに電話番号を打ち込む。


(……本当に大丈夫?)


一瞬、ためらう


でも。


「……前に進むって、決めたんでしょ」


そう自分に喝を入れて

電話をかけ、面接が決まった。


そして、面接当日ーー


思っていたよりも

穏やかな雰囲気だった。


受け答えも

大きく詰まることはない。


(……大丈夫そう、かな)


そんな感覚があった。


でも、ひとつだけ

答えに迷う質問があった。


「長く働かれていたようですが

 前のお仕事は、なぜ辞められたんですか?」


その言葉に

一瞬、思考が止まる。


(……なんで、か)


頭の中に

あの頃の出来事がよぎった。


すぐには

言葉が出てこない。


少し間を置いて


深呼吸をして


私は、口を開いた。


「……パートになった途端

 人間関係が

 うまくいかなくなりました」


一度、言葉を切る。


「でも、私にとって

 あの出来事は

 学びだったと思っています」


「もし採用していただけたら

 その経験も活かして

 働きたいと思っています」


嘘では、なかった。


でも……


(……本当に、学びだったって

 言い切れるのかな)


そう思う自分も、確かにいた。


まだ、あの出来事は


完全に過去には

なりきっていなかった。


面接が終わったあと


旦那が

『お疲れ様』の意味を込めて


少しだけお高めのファミレスに

連れて行ってくれた。


席に座り、メニューを開く。


その瞬間


(……あ)


(そういえば、ダイエット)


ここ最近は

仕事のことばかりで

体力を戻すことに集中していた。


でも、そんなことよりも

今日は、とにかく疲れていた。


緊張も


不安も


全部まとめて

身体に残っている感じだった。


(……ま、今日はいいか)


そう思った。


痩せているとか


太っているとか


そんなことは

今は、どうでもよかった。


(甘いもの…食べたい)


そう思って

私は、甘いものから手を伸ばした。

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