表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私は二度、三十キロ痩せた  作者: かゆると


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/56

疑問の先にあった、確かな決意

次の日

昼間に、買い物に行く。


そう自分に言い聞かせて

外へ、一歩踏み出した。


いつものウォーキングとは違う

昼間の外。


(……まぶし)


思わず目を細めながら

ゆっくりと、歩き始める。


目的は、コンビニ。


そう決めて


一歩、また一歩と

足を前に出す。


季節は、梅雨に差し掛かる頃。


生ぬるい風が

身体の横を、すり抜けていく。


イヤホンからは

音楽が流れている。


でも……


ほとんど、耳に入ってこない。


頭の中では

辞めた会社での出来事が


何度も

繰り返されていた。


(……なんで

 あんな風に扱われなきゃ

 いけなかったの?)


そう思ったとき

ふと、違和感がよぎる。


(……あれ?)


これまではずっと

自分がダメだったから


あんな風に扱われたんだと、思っていた。


被害者ヅラしてるんじゃないか…

とも思えていた。


自分がもっと

仕事ができていれば


自分がもっと

うまくやれていれば


最初は優しかった人たちを


あんな風に変えてしまったのは

自分のせいなんだと


そうやって

ずっと、自分を責めていた。


でも


今、浮かんできた考えは

それとは違った。


(……全部、私が悪かったの?)


足が、少し止まる。


(私はただ

 仕事をしてただけじゃない?)


(ちゃんと覚えようとしてたし

 休憩時間も

 ずっと書類見てたし)


(ミスだって減ってたし

 二重チェックもしてた)


(なのに……なんで?)


その疑問が、胸の奥に

静かに、残った。


もしかして——


あれは、いわゆる

〘いじめ〙だったのかもしれない。


そう思った。


(……私

 悪くなかったのかも…しれない)


その考えが

ふっと、浮かんだ。


すると

今まで押し込めていたものが

少しずつ、ほどけていくように


次々と、疑問が浮かんできた。


(なんで、あの時……

 なんで、あんな言い方……)


あの時は、こうだった


あの場面では、ああだった


一つ思い出すと


また一つ

繋がるように思い出していく。


本当は……


辞めたあとも

思い出すのが嫌で


ずっと、蓋をしていた出来事。


それなのに

今は、不思議と

ちゃんと思い出せている自分に


少しだけ、驚いていた。


仕事を辞めてから

ずっと、考えていた。


虚無感の中で


本当に、ろうそくの炎みたいに

小さく、小さく灯っていた


〘怒り〙があった。


(……本当は、辞めたくなかった)


あれだけ時間をかけて覚えた仕事


丁寧に積み重ねてきた仕事


アルバイトの頃から


少しずつ、少しずつ

積み上げてきたもの。


(……あんな形で

 終わらせたくなかった)


そう思えた、そのとき

胸の奥で、何かが

はっきりと形になった。


(……立ち止まってなんかいられない)


(元気になって、次の場所で

 ちゃんとやってるって見せてやる)


(このまま、潰されてなんかやるもんか)


その感情は

最初は小さかったけれど


確かに

前に進む力に変わっていた。


ようやく


〘次の仕事を決めよう〙


その気持ちが

誰かに背中を押されたものじゃなく


ちゃんと、自分自身の意思として

確かな決意へと変わっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ