順風満帆、そう思っていた
友人と会った後——
焦っていた気持ちは
少し、楽になっていた。
(……言われてみればそうだよな)
ようやく
ちゃんと腑に落ちた気がした。
(ちゃんと……変わってたんだ)
自分では
分からなかっただけで
身体は、ちゃんと変わっていた。
むしろ、最初より
負荷が減っている証拠だった。
(じゃあ、今のままでいいんだ)
無理に増やさなくてもいい。
無理に変えなくてもいい。
ちゃんと
続けていけばいい。
〘継続は力なり〙
そう思ったら
少しだけ肩の力が抜けた。
その日から
〘歩数〙ではなく
〘歩きたいところまで歩く〙
そう、気持ちを変えた。
いつも同じルートだった道も
『今日は、こっちに行ってみようか』
『たまには、あっちを通ってみようか』
そんなふうに
〘楽しんで歩く〙
そこを、意識するようになった。
さらに、当時使っていたイヤホンは
曲の先送りや後戻しが
できないタイプだった。
だから
自分の聴きたい曲が
流れてくるまで歩く。
キリのいいところまで、歩く。
そんなふうに
〘やめるタイミング〙も
音楽に任せるようになった。
気づけば、歩くこと自体が
少しずつ、楽しくなっていた。
そのおかげか……
最初の頃より
少しずつではあるけれど
体重も、順調に落ちていった。
仕事も、ダイエットも順調
そして、家庭も円満。
(順風満帆とはこのことだなー)
呑気に
そう思っていた、矢先だった。
当時、アルバイトだった私に
店長から
「パートにならないか」
そう声がかかった。
パートになるということは
時間も増える。
収入も増える。
その代わりに
旦那の扶養から外れ
自分自身の責任も重くなる。
シフトは週5日。
勤務時間は8時間。
当然……
息子と過ごす時間も減る。
仕事内容は、これまでと大差はない。
でも…責任の面では、大きく変わる。
(……どうしよう)
正直、迷った。
けれど、店長からの打診。
それは
『仕事ぶりを、認めてもらえた』
そんな気がして、嬉しかった。
少し時間をもらい
直属の上司とも
何度も面談を重ねた。
悩みに悩んで出した答えは
〘パートになる〙
ただ、息子の学童の送迎に合わせた曜日に
お休みをもらうことにした。
(自分なりに、とにかく頑張ってみよう)
そう思った。
でも……このときの決断が
のちに
人生で一番の後悔になるなんて。
このときの私は
まだ、知らなかった。




