きっかけ。そして
旦那と出会うまで
一度も付き合ったことがないわけじゃない。
でも——
どれも、ちゃんとした恋愛とは言えなかった。
最初の彼氏は、高校一年のとき
友達の紹介だった。
いわゆる、
“そういう目的”の人だった。
結局、何もなかったけれど。
二人目は、八歳上
初めてのバイト先の人。
お互い寂しくて
ただ一緒にいただけ。
気づけば、そのまま自然に終わっていた。
三人目は、一つ上
二つ目のバイト先で出会った人。
でも、人前で一緒にいることを嫌がられて
結局、続かなかった。
どれも『付き合った』と言えるのかどうか
今でも分からない。
デートらしいことも
ほとんどなかった。
それでも
これが、私の恋愛だった。
それでいい。
後悔は、ない。
——そう思っていた。
そんなある日。
アルバイト先に
短期で入ってきた人がいた。
それが、今の旦那だ。
出会ったのは、私が19歳のとき。
体重は、変わらず89キロだった。
最初のきっかけは、ほんの些細なことだった。
マニュアルビデオを見終えて
どうしていいか分からず
戸惑っていた彼に気づいた私が
「終わったみたいです」と
マネージャーに声をかけた。
ただ、それだけだった。
それから、仕事を通して
少しずつ話すようになった。
優しくて、よく笑う人で
でも、どこか不器用そうな人。
ある日、食事に誘われた
正直、思った。
(なんで、私?)
でも、仕事仲間だし
そう思って、断る理由もなく承諾した。
食事の間、彼はずっと穏やかだった。
話し方も
表情も
優しくて
私は、少しだけ——
惹かれていた。
でも。
こんな私を
ちゃんと好きになってくれる人なんていない。
だから、これもきっと一度きり。
そう思っていた。
それなのに——
誘いは、続いた。
何度も食事に行って
ある日、二人で出かけないかと誘われた。
嬉しかった。
でも……
一番困ったのは、服だった。
持っているのは、お下がりばかり。
しかも、全部男物。
これまで一応
『彼氏』と呼べる人はいたけれど
一緒に出かけるなんてことは
したことがなかった。
(どうしよう……)
姉に相談すると
「これならいけるんじゃない?」
と、一着選んでくれた。
少しだけきつかったけれど
それを着ることにした。
鏡の前に立って、思う。
——似合ってない。
でも、他に選択肢はなかった。




