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私は二度、三十キロ痩せた  作者: かゆると


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気づかないふり

(ダイエットの、せいかも……)


一瞬、そう思った。


でもーー


(いや……)


その考えを、打ち消した。


代わりに


(下剤のせいだ)


そう思うことにした。


自分のやってきたことを

否定したく、なかったんだと思う。


その日から

下剤の常用は、やめた。


やめたことで

少しだけ、体調は落ち着いた。


だからダイエットは、そのまま続けた。


でも——


体重は、変わらない

58.5キロのまま。


増えもしないが

減りもしない。


(なんで……)


焦りが、少しずつ膨らんでいく。


彼とのデート中は、仕方ない

でも、会社にいる間


そして、家にいる間は——


ほとんど、食べなくなっていた。


そんな、ある日

姉が、バイト先で倒れたと、母から聞いた。


原因は——


栄養失調。


気づいてあげられなかったが

どうやら、バイト先で何かあったらしく

ご飯が、食べられなくなっていて


食べても

トイレで吐いていた、らしい。


それが、原因だった。


母は言った。


「病院代が掛かるのに……

 まったく、何してんだか」


その言葉に

胸の奥が、ざわついた。


母は、昔からそういう人だった。


子供の気持ちに、寄り添えない人

自分が、一番大事な人


言うことを聞かない子供には——


「産まなきゃ良かった」


そう言い切る人だった。


だから

姉も、私も

母とは、昔から折り合いが悪い。


父は、母の言いなりだった。


母が泣けば


「お前らが悪い」


そう言われる。


どんなときでも

母が、正しかった。


今思えば

そんな両親に、愛されたくて

ご飯を食べていたことが

馬鹿らしく思える。


でも


子供の頃は——


親が、絶対だった。


反抗もせず

反抗期も、ないように

振る舞っていた。


でも、このときは違った。


母の言い方に

どうしても、我慢ができなかった。


姉が、何に悩んで

何に傷ついて

どれだけ追い込まれていたのか。


なぜ、気にしないのか。


(親なら……寄り添えよ)


そう思った瞬間

口が、勝手に動いていた。


「なんで……」


「そんな言い方しかできないの?

 心配しなかったの?

 少しも?」


「なんでお母さんは、そうなの!?」


——パチーン


頬を、叩かれた。


「誰に向かって言ってるの!

 お姉ちゃんと一緒になって

 アンタまで、お母さんを傷つけたいの!?」


怒鳴り声が、響く。


騒ぎに気付いた祖母が、間に入った。


母をなだめながら

そのまま、リビングへ連れていく。


気づけば

涙が、こぼれていた。


(大っ嫌いだ……

 こんな親には、絶対ならない)


涙を拭って

姉の部屋へ向かう。


姉は、起きていた。


どうやら、さっきのやり取りを

聞いていたらしい。


「大丈夫?

 痛かったでしょ?

 私のために怒ってくれて

 ありがとね」


「後さ、今日は夜一緒にいよ?

 親父帰ってきたらさ

 アンタのとこ来るだろうから

 私が守ってあげるよ」


「…アタシ、間違ったこと言ってない

 だから殴られても、ちゃんと反論する」


小さくため息をついて私は続ける。


「……姉貴さ

 大丈夫なの?

 しんどかったんでしょ?

 ごめんね、気づけなくて」


「もう大丈夫だよ

 病院でブドウ糖

 点滴してもらったから」


そして——


「……アンタも

 他人事じゃないからね?

 ちゃんと、食べなよ?」


(やべ…バレてる)


姉は、昔からよく見ている

きっと、気づいていた。


でも

あえて、言わなかったんだと思う。


ここ最近の体調不良。


風呂屋での出来事。


そして——


食べることへの、怖さ。


このまま続けたら、どうなるのか

姉が、身をもって教えてくれた気がした。


「……うん

 ちゃんと、食べるよ」


「少し、寝なよ」


ベッドへ促し、手を握る。


姉は、そのまま眠った。


気づけば……

私も、一緒に眠っていた。

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