消える視界
その日は、彼とのデートの日だった。
でも
身体が重くて、朝起きられなかった。
支度をする気力もない
体調が悪いわけじゃない
でも——
身体が、動かない。
そんな私を見て、彼が言った。
「今日、やめとく?」
気遣ってくれたその言葉に
一瞬、迷う。
でも
行きたい気持ちの方が、強かった。
そのまま伝えると
「じゃあさ」
「着替え持って風呂屋行こう
無理そうなら、そのまま帰ろう」
そう言ってくれた。
(お風呂に入れば、スッキリするかも)
そう思って
彼の提案を受け入れた。
パジャマのまま
彼の車に乗り込む。
いつも通り、体を洗い
軽く湯船に浸かる。
そのあと
サウナに入った。
15分ほどして外に出た
その瞬間——
視界が、真っ暗になった。
目は、開いている
でも、何も見えない。
停電じゃない
時間も、まだ昼前だ
こんなに真っ暗になるはずがない。
(見えない……)
手を前に伸ばし
何か掴めるものを探す。
一歩、前に出た瞬間
足を滑らせ、そのまま転倒する。
——その瞬間
視界が、一気に戻った。
急に飛び込んでくる光に、目がくらむ。
「いてて……」
幸い、頭は打っていなかった。
でも、腰と背中が痛い。
「あなた、大丈夫!?」
周りの人が、駆け寄ってくる。
でも、当時の私はまだ若くて。
「だ、大丈夫です……
お騒がせしました」
そうだけ言って
足早に、脱衣所へ戻った。
身体のあちこちが、痛い
少し、気持ち悪さもある。
とにかく、水分を…
そう思って自販機で
ミネラルウォーターを買い
ゆっくりと、飲み干す。
しばらくして、ようやく
身体が動くようになった。
(なんだったんだろう……)
そう思いながらも
とにかく、この場から離れたかった。
着替えて、髪も簡単にまとめて
ロビーへ戻る。
——その瞬間
今度は、目眩に襲われた。
倒れるほどではない
でも、その場に座り込む。
(こんなの、初めてだ……)
ダイエットを始めてから
身体の調子が、どこかおかしい。
そして
(これって……もしかして
ダイエットの、せい?)
そのとき
はじめて——
そう、思った。




