え…マジで?
「ダイエットの方法を
教えてあげればいいじゃない」
そう祖母に言われて、面食らった。
「ばあちゃん、何言ってんのさ」
笑いながらそう返すと
「アンタ、すごい痩せたじゃない
病気かと思って心配したけどねぇ」
「お姉ちゃんから事情を聞いて
オニギリ作るのもやめたんだよ
食べてるアンタを見るのが、
ばあちゃんは嬉しかったけど
彼のためだもんねぇ」
テレビを見ながら
お茶をすすって
なんでもないことのように、そう言う。
「……そういえば
ばあちゃんのオニギリ
食べてないな」
「今日休みだし、作ってよ
久しぶりに食べたいな」
「そう言われたら、嬉しいねぇ
でも、ダイエットはいいのかい?」
「彼とのデートでも
ご飯は食べてるから大丈夫だよ
ばあちゃんの
昆布のオニギリ食べたい」
「じゃあ、昼ごはんは
オニギリにしようかね」
そう言って、祖母は立ち上がり
台所の方へ行ってしまった。
同じ部屋にいた祖父は
耳が遠くて
話は聞こえていなかったらしい。
出ていく祖母を目で追っていると
祖父と目が合う。
ヘラッと笑って
リモコンを取ってくれと
ジェスチャーする。
それを渡して
私も部屋に戻ろうとした——けど。
さっきの祖母の言葉が、頭から離れない。
(痩せた……か)
(あ……そういえば)
そう思い出して
久しぶりに、体重計と向き合う。
(身内びいきってこともあるし……
なんか、怖いな……)
でも
体重を把握するのは、大事だ。
ただ
思っているより
痩せてなかったら——
そう思うと
なかなか、乗れずにいた。
すると
同じく休みだった姉が
トイレから出てきた。
「おはよー」
「あ、体重測んの?見てていい?」
「いい?って聞かれて
喜んで!なんて言うわけないじゃん
絶対見るなよ」
「いいじゃん、減るもんじゃないし
今、アンタが何キロか知りたいんだよね
私と並んだんじゃない?」
「はぁ?朝から何言ってんのさ
冗談はその顔だけにしろよ
姉貴と並ぶなんて、まだまだでしょ
ほら、行った行った」
「ちぇっ……つまんないのー
いいよー、お姉さんに負けた
お姉ちゃんだからねーっだ」
「……姉貴は姉貴でしょ
姉貴みたいな姉貴は、
私の中で一人だけだわ」
そう言った瞬間
後ろから、がっしり抱きつかれた。
「妹よ~~~!!」
「うっさい!ウザい!
早くどっか行けって!」
そんなやり取りをしているうちに
ようやく静かになった脱衣所。
(……マジで、早く終わらせたい)
深呼吸をひとつして
体重計に、乗る。
——65.0kg
「……壊れてんな、これ」
そっと降りて。
もう一度、ゆっくり乗る。
——65.0kg
「……やっぱ壊れてんな、これ」
もう一度降りて。
もう一度、乗る。
——65.0kg
数字は、変わらない。
(……え、ホント?)
……いや
ちょっと待て。
「姉貴!」
さっきまで騒いでいた姉を呼び戻す。
「なにー?」
「ちょっと、これ乗って」
「え、なに急に」
そう言いながらも、姉は体重計に乗る。
表示された数字を見て、姉が言う。
「……普通じゃん」
つまり
壊れていない。
(……マジで?)




