表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神獣の調力師  作者: サンショウオ
第3章 モステラ
89/94

89 捜索隊1

 

 メラニー・シーモアは、ロドニー・センシブル特級神官からアリソンの亡骸から所持品を回収してくるように命じられ、アリソンの顔を知っている見習いのロミー・サリスとリナを伴ってユッカとの国境の町ナッシュまで来ていた。


 今は、ロドニー・センシブル特級神官から監督役としてつけられたコーディ・ソザートン上級神官補佐が神殿長であるパッテンに挨拶と情報収集に行っているので、神殿内の食堂で食事をとりながら待機していた。


 そこで青い顔をしたロミーがシーモアに話しかけた。


「あの、シーモアさん、私達はまだ見習いです。確かにアリソンの顔は知っていますが、ユッカには恐ろしい魔樹が出るのでしょう。とても怖いです」

「そうです。それにユッカの森は遭難する確率が異常に高いと聞きました。そんな場所に入ったら1日も生きられませんよ」


 ロミーの泣き言にリナも賛同していた。


 それにはメラニーも同意なのだが、だからと言って特級神官の命令を無視するわけにはいかなかった。


「アリソンはその森に1人で入って、バシュラールまで行けたのですよ? 落ちこぼれに出来て、どうして貴女達は出来ないと言うのですか?」


 メラニーがそう言って睨むと、2人とも黙り込んだ。


 そして沈黙の中、挨拶を終えたソザートンが戻って来た。


「アリソンはここからユッカの森に入ったのは間違いなさそうだ。それに神殿長の話だと、孤児院への慈善活動中に誘拐されたが、翌日には何事も無かったかのように戻って来たそうだ」

「それって」


 シーモアが1つの可能性に気が付くと、直ぐにソザートンも同意した。


「ああ、多分盗んだ特級神具の力で脱出したのだと推察されるな」

「それほどまでに凄い力を込めた神具だったのですね」

「これで分かっただろう。盗み出された特級神具が神国にとってどれだけ重要な物かを」

「はい」

「よし、それでは急いで追いかけるぞ」

「はい、分かりました」


 神殿を出てユッカの国境に向かうと目の前にはうっそうと茂る森が見えてきた。


 あの向こうが魔樹がうようよいる迷いの森なのだろう。


 重い足取りで密林の縁までやって来ると、信じられない光景が広がっていた。


「さあ、いらっしゃい。新鮮な山菜だよぉ~」

「お、そこの神官様、どうですかい。採りたて木の実もキノコもあるよぉ」


 それは森の縁にそって居並ぶ沢山の露店だった。


 ちょっと興味を持ったメラニーは、何を売っているのか覗いてみる事にした。


 根菜に木の実、キノコ類、葉野菜を直接売っている店や、とろろ、木の実のジュース、野菜のごった煮スープ等の加工品を売っている店なんかも並んでいた。


 並んでいる食材にはアンスリウムでは生産していない物もあった。


 疑念が湧いたメラニーは店主に声をかけた。


「この商品は、どこで手に入れたのですか?」


 メラニーがそう尋ねると、男は背後の森を指示した。


「ユッカの森の恵みだよ」

「えっ、あの迷いの森から採集してきたのですか?」

「ああ、ユッカの森は元々豊かな森だからな」

「魔樹は、魔樹は怖くないのですか?」


 メラニーがそう聞くと、男はちょっと困ったような顔になった。


「いや、それがな、いつの間にか魔樹が出なくなっていたんだよ」


 えっ、なんで?


 確かロドニー・センシブル特級神官は、アリソンが特級神具を持ち出したと言っていたけど、ユッカで魔樹が出なくなって、アンスリウムに魔獣が出るようになったという事は、アリソンが持ち出した特級神具に魔物を寄せ付けない効力があったという証拠になるのではないか?


 まったく、あの娘はどこまで私に迷惑をかければ気が済むと言うの。


 まあ、いいわ。


 私があの娘を見習い試験に合格させたのが原因というのなら、この私の手で終わらせてあげるわ。


「魔樹は出なくなったと言っても、ここは遭難する危険が高い迷いの森よね? こんな森に入って食料を採集していたら、道に迷って出て来れないのではないの?」


 メラニーがそう疑問を口にすると、目の前の男はその通りというように頷いた。


「ああ、確かにこの森は迷いの森で何人も遭難していたんだが、ある日、ユッカの騎士団が森を抜けてここまでやって来たんだよ」

「えっ、ユッカの騎士団が此処までやって来たの?」

「ああ、何でも逃げ出した偽神官を追って来たとか言って、俺達に神官服を着た若い女が来なかったかと聞いてきたんだ」


 まさか、アリソンが逃げ戻って来たの?」


「その偽神官はアマハヴァーラ教の神官服を着ていたの?」

「ああ、どうやらそうらしい。なんでもその偽神官は、王都でユッカ王家の国宝を盗んだとかなんとか言っていたな」


 大神殿で特級神具を盗むほど手癖が悪いのなら、ユッカでも同じことをする可能性は高いわね。


 全くなんて娘なの。


「それで密林の中を馬に乗ってやって来た事が不思議だったんで、その騎士達にどうやってここまで来たのか聞いてみたんだ。すると騎士は、王都バシュラールからここまで馬が走れる道があると言っていたんだ。驚いたね。あの迷いの森に王都まで伸びるまっすぐの道があるって言うんだぞ。当然、俺達もそれが本当なのか確かめてみたくって森に入ったんだ。そうしたら驚く事に本当に道があったんだよ」


 アリソンが盗んだ特級神具は道まで作ってしまうの?


 いえ、今はそんな事よりも優先で確かめる事があったわね。


「それで偽神官はアンスリウムに逃げて来たのかしら?」


 すると男は首を横に振った。


「いいや、皆にも確かめてみたんだが、誰もそんな人物が森から出て来たのを見ていないんだ。騎士達もそれを聞いて帰って行ったよ」


 するとアリソンはアンスリウムに逃げ戻ってはいないという事ね。


 可能性が1つ消えたわね。


 残るは、他国に逃げたか、まだユッカに潜伏しているか、既に骸になっているかね。


 ユッカの騎士団が今でも探しているとしたら、他国に逃げたか骸になっている可能性が高いということか。


 まあ、今もなお巡行をしているとは思えないから、骸になっている可能性がもっとも高いわね。


「魔樹が出なくなったのは分かったけど、それで環境が元に戻ったというのは早計ではないのかしら?」

「ああ、そうかもしれないが、俺達にとってはユッカの森から採取した食料品で生活できるようになったんだから、環境が戻ったと思っていいだろう? 神官様も一口どうだい?」

「ええ、頂くわ。それとバシュラールまで続く道というのは、どの辺にあるの?」

「ん、ああ、入口ならそこだよ」


 そう言って店主が指さした先には、そこが入口だと分かるように目立つ門柱が立っていた。


 メラニー達がその門柱の前まで行くと、門柱には「ユッカ国王都バシュラール方面入口」と書かれてあった。


「露店商の話では、ここからバシュラールまでまっすぐな道があるそうですよ」


 メラニーは聞いてきた内容を捜索隊のリーダーであるソザートンに伝えると、傍にいた2人の見習いが口を開いた。


「シーモアさん、あの森には魔樹が出るんですよね?」

「あの森が遭難するという迷いの森なんですよね?」


 シーモアは足手まといの2人に冷めた視線を送った。


「もう魔樹も出ないし、王都まで一直線の道もあるから心配無いわ」

「ところでアリソンもここからユッカ王都に行ったんだな?」

「はい、そのようです」

「よし、俺達もアリソンの亡骸を探しながら王都まで行くぞ」



 メラニー達はまっすぐ伸びる道を歩きながら、アリソンの亡骸が無いか調べながら進んで行くと、いつの間にか目の前に王都バシュラールの城門が見える場所まで辿り着いていた。


 アリソンの亡骸を見つけられなかった事で、この捜索が長引くのではないかという懸念が浮かんできた。


 そして城門前までやって来て、初めて違和感を覚えた。


 確かユッカの都市は結界で守られていたはずなのに、それが無いのだ。


「結界がありませんね? それに魔樹も出なかったです」

「ああ、どうやら環境が元に戻ったと言うのは本当だったようだ」

「アリソンの亡骸がありませんでしたね。これからどうするのですか?」


 メラニーがそう尋ねると、ソザートンはそんな事も分からないのかという視線を向けてきた。


「バシュラール神殿に寄って、そこで情報を仕入れるぞ」

「神殿長は協力してくれますかね?」

「ああ、それは大丈夫だろう。あそこの神殿長はセンシブル派だからな」


 そしてバシュラールの城門まで来ると、私達の姿を見たはずの門番が訪問者のチェックを止めると建物内に入って行った。


 そして兵士の1隊を引き連れて戻って来たのを見て、シーモアは嫌な予感を感じていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ