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神獣の調力師  作者: サンショウオ
第3章 モステラ
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82 神獣モーフ2

 

 仰向けに倒れた私を心配そうな顔で覗き込むガイア様とグロウ様が声をかけてきた。


「モーフは手ごわそうだな」

「アリーちゃん、怪我していない?」


 私は上体を起こすと、2人に笑顔を見せた。


「大丈夫です。1つお伺いしたいのですが、モーフ様の神力の流れを少し整えたのですが、するとのっぺりとした顔に鼻が出来上がったのです。これは何か理由があるのでしょうか?」


 私がそう質問すると、グロウ様が口を開いた。


「そう言えば、モーフは外部との関りを絶つ時、自分の顔から眼や耳といったパーツを消す事があった」

「ああ、あったあった。私も覚えているぞ」


 グロウ様がそう言うと、ガイア様もそれを肯定していた。


 もしかしたら、モーフ様は正気を失っているのではなくて、外部との接触を絶っているだけかもしれませんね。


 モーフ様の神力の流れを調整して顔の他のパーツが戻れば、モステラの環境が元に戻るかも。


「分かりました。何としてもモーフ様の神力の乱れを元に戻してモーフ様の顔を元に戻してみます」

「うむ、それが良いかもしれないな」

「そうね。耳が戻ったら、アリーちゃんが何をしているのか理解するかもしれないのう」


 お2人に賛成してもらえたので、再びモーフ様のお世話に全力を尽くしましょう。


「分かりました。今回は少しだけモーフ様の神力の流れを調整出来ました。これを後何回か繰り返せば何とかなりそうです」


 神域に入って正面を見ると、モーフ様は既に戦闘体勢に入っていて私に向かって大粒な水滴を私に居る場所周辺に円形に放ってきた。


 機先を制され、全ての水滴を避けるのは無理だと判断した私は盾を出してこれを受けながら壁面を駆け上がった。


 モーフ様はこちらの行動を学習しながら攻撃パターンを変えているように見えたので、直上まで上がらずに上方から斜めに降下していった。


 するとモーフ様は私が直上まで登ると予想していたようで、渦を巻いた水流が直上に向けて放っていた。


 やっぱり学習してると思いながら隙が出来たモーフ様の胴体に調力具を差し込むと、乱れた神力の流れを調整していった。


 そしてモーフ様が杖を振り上げたので素早く位置を変えると、先ほどまで私が居た場所にモーフ様が杖を振り下ろしていた。


 今度は先ほどよりも長い時間調整出来たと満足して離れると、モーフの顔には目が現れていた。


 残念ね、耳が出てきたらお世話したいことが伝えられるのに。


 私がモーフ様の腕の動きを警戒していると、突然強い力で吹き飛ばされた。


 何が起こったのかと視線を向けると、そこにはモーフ様の大きな尾ビレが揺れていた。


 そうだった、それもあったのですね。


 少し離れた場所に着地した私は、モーフ様の視線を感じたので手に持った調力具を両手で掲げて、何をしていたのか見せてから一礼してみた。


 モーフ様がリドル一族の事を覚えていたら、これで何等かの動きがあるかもしれない。


 そう期待してみたが、モーフ様は再び水滴で攻撃していた。


 どうやらまだ駄目みたいね。


 では、もう少しお世話させてもらいますか。


 そして再び駆け出そうとすると、足元の水が触手のように伸びてきて足首に絡んできた。


 その触手の内側には吸盤のようなものが付いていて、抜け出せなかった。


 え、何、これじゃあ動けない。


 眼前に迫る水滴を避けられなくなった私は慌てて盾を出して防ごうとしたが、強烈が衝撃を受けて再び神域から弾き飛ばされた。



 私が仰向けに倒れると、再びガイア様とグロウ様に心配そうに顔を見下ろされた。


「おい、大丈夫か?」

「アリーちゃん、水位が上がっているようじゃ。あまり時間がないぞ」


 グロウ様が地底湖を指さしていたので、そちらを見ると確かに先ほどから水位が上がっていた。


 あ、拙い、この島は満潮時に水没するんでしたね。


 モーフ様はこちらの動きを見て直ぐに対策してくるので、意表を突かないと次は近寄れないかもしれないわね。


 さて、どうしましょうか。


 そして再びモーフ様の球体になった神域を眺めていた。


「あのう、ガイア様」

「なんだ?」

「モーフ様の神域を外から力を加えて動かすことは可能ですか?」

「神域は外部からは干渉できないな。仮に動かせるとしたら中からだな」

「そうですか。分かりました。では、また行ってまいります」



 そして神域に入った途端、四方から水流の渦がこちらに迫り中心には大量の水滴、そして水面からは吸盤が付いた何本もの触手が迫っていた。


 その数を見て諦めた私は直ぐに神域から外に脱出した。


「ガイア様、グロウ様、もしかして神域の外に誰かいるのが分かるのですか?」

「ふむ、感覚として分かるな」

「そうじゃのう、アリーちゃんが来たのは分かったと思うぞ」


 モーフ様の眼が戻って来たからなのか、入って来る場所がバレていればああなってしまうのか。


「ガイア様、モーフ様、神力でおとりを作りたいのですが、可能でしょうか?」


 お2人は考え込んでいたが、やがてグロウ様が頷いた。


「わらわが、枝を編んだ入れ物を作るからその中にアリーちゃんの神力を注ぐのじゃ。それをわらわが持ってモーフの神域の傍に置いておけばいいのじゃないか?」

「あ、それ行けそうですね。グロウ様、流石です」

「ふふふ、もっと褒めて良いのだぞ?」


 そしてグロウ様に私のおとりを神域の傍に置いてもらい、私はその反対側から入る事にした。


 その時、地底湖を見るとかなり水位が上がっていたので、もう時間が無いのが分かった。


 私は出来るだけ神力を漏らさないように注意すると、そっと神域の中に入って行った。


 モーフ様がこちらに背を向けているのを見て、おとり作戦が成功したのが分かった。


 気付かれる前に神域の壁を駆け上がったが、モーフ様も直ぐに背後の異変に気が付いたようだ。


 私は神域の壁を駆けながら速度を上げると、一気に反対側に飛んだ。


 こちらに飛んでくる沢山の水滴を体の周りを神力を纏って耐えていると、モーフ様がこちらの機動を読んで私が接地する地点に向けて大きな水流を放ってきた。


 今までの攻撃パターンからそれを読んでいた私は、盾を作って水流を背後から受けるようにすると一気に壁を蹴飛ばした。


 モーフ様の水流の力も加わった私の蹴りは、少しだけモーフ様の神域を動かしたようだ。


 壁が上方に動いたと思ったら、それがまた元の位置に落ちたような感覚があったからだ。


 だが、その動きはあまり大きくなかったので、大した影響は無かったかもと不安になりながら下の状況を見ると、そこは予想よりも大きな影響があった。


 それまで静かだった水面が大きく動き、周辺には白波が立っていたのだ。


 そして中央で浮かんでいたモーフ様は、その場で横倒しに倒れ、手に持っていた杖は何処にもなかった。


 その状況を見て、これは絶好のチャンスだと判断した。


 神域を蹴った反動で落下していた体の向きを変え、足に神力を集中して乱れる水面に沈まないようにすると、一気に駆けて倒れているモーフ様の背後に回った。


 そしてモーフ様の上半身を背後から羽交い絞めにした。


「モーフ様申し訳ありませんが、お世話をする間我慢してくださいませ」


 暴れるモーフ様を背後から右腕と両足で押さえつけると、左手に持った調力具を上半身の中に差し込んだ。


 モーフ様の体内で乱れていた神力の流れが徐々に秩序ある流れに変って行くと、モーフ様の頭部の両側から何かが突き出しているのを見つけた。


 それはエルフ耳のように突き出していて付け根部分は耳たぶがあるかのように下側に広がっていた。


 モーフ様の耳に違いないと思った私はその耳にささやいた。


「モーフ様、私はリドルの者です。今、調力をしておりますので、もうしばらくお待ちください」


 私の言葉が分かったのか、拘束を解こうと暴れていたモーフ様が大人しくなった。


 そして体内を流れる神力がまるで清流のような綺麗な流れになったのを確かめてから、拘束を解いてモーフ様の前で頭を下げた。


「モーフ様、お世話をするためとはいえ、羽交い絞めにしたご無礼、どうかお許しください」


 いくら正気に戻すためと言っても、神獣様に無礼を働いたので厳しく非難されるかもと思っていたが、モーフ様の声に怒りは含まれていなかった。


「リドルの者よ。遅いではないか」


 そこ声に顔を上げると、モーフ様は視線を横にずらし顔を少し赤らめていた。


 その顔はなんだか不貞腐れているように見えた。


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