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神獣の調力師  作者: サンショウオ
第3章 モステラ
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81 神獣モーフ1

 

 聖なる島に上陸した私は、ブレスレットの神黄石と神緑石に触れた。


 呼び出されたガイア様とグロウ様は、目の前に神域があるのに直ぐに気が付いた。


「うん、なんだ、ここはモーフの神域か?」

「なんだもなにも、モーフの住処で間違いないじゃろう」

「お2人共、モステラの環境を見る限り、モーフ様は絶対におかしくなっていると思うのですが、何かお世話をするにあたってアドバイスとかありますか?」


 私が2人に尋ねてみると、ちょっと考えていた。


「う~ん、モーフかぁ、水としか言えんな」

「そうよねぇ、モーフってあまり自分の事を自慢しないのよねぇ。でも、水を操るというのは聞いたことがあるのう」


 水、ですか。


 それなら水の中で呼吸できるこのマジック・アイテムは必須、という事でしょうかねぇ。


 ガイア様からは念のため防具はつけて行けと言われたので、グロウ様に会った時と同じように神力で作った防具を身に着けると、神力弾を撃つための杖も手に持った。


「ガイア様、グロウ様、それでは行ってまいります」

「うむ、気をつけるのだぞ」

「あぶなそうだったら、直ぐにもどってくるのじゃ」

「はい、分かりました」


 私は深く深呼吸するとモーフ様が居る神域に入って行った。


 神域の中は中央に居るはずのモーフ様のお姿は何処にもなく、地面は水で濡れていた。


 私は大きく深呼吸すると、声を張り上げた。


「私はリドル一族のアリソンと申します。モーフ様いらっしゃいますか? 私はモーフ様のお世話をするためやってまいりました」


 挨拶を終えた私が周囲を見回すと、モーフ様が出てくる様子は全くなかった。


 一度外に出てガイア様とグロウ様に相談してみようかと思っていると、水面の中央部分から波紋が周囲に広がると、反射してきた波紋が再び中央に戻って行った。


 すると波紋が戻ったところで中央に水面が盛り上がって来た。


 何が起こるのだろうと見ていると、中央の水面はまるで噴水が吹き上がるように水が高く吹き上がり始めた。


 やがて吹き上がった水が徐々に形を表すようになっていった。


 そして出来上がった形は、人間の上半身の下に回遊魚の胴体がついていた。


 マーメイド族との違いは、胴体部分が上半身に直角に後ろに向けて伸びている点だ。


 腰の部分には前足のような胸ビレが2枚あり、後ろには回遊魚の大きな尾ヒレがついていた。


 水面に沈む事も無く浮かんでいるモーフ様は、人間のような上半身の両腕に大きな宝石を付けた杖が握り、髪の毛は太いツタのように伸びていて、顔には目や鼻といった人のパーツは無かった。


 モーフ様の水で出来た体内は、神力の流れが渦を巻くように乱れていた。


 あの体内の流れをきちんと直して差し上げないといけない、という事ね。


 私はモーフ様に一礼した。


「モーフ様、お体の中に流れる神力の流れを整えさせていただきます」


 さて、大人しくお世話をさせてくれるかどうかが問題だけど、今の所不穏な様子は無いし簡単に済むかもと考えていた。


 そこで私ははたと思い出した。


 モーフ様の神域は外から見ると球体になっていたのを思い出したのだ。


 今私が居る縁の足元には僅かに水があるが、球体という事はモーフ様が居る中央部分はかなり水深があると思われるのだ。


 このまま近づいたら沈んで行ってしまうので、私は神力を纏って水面に浮くことにした。


 普通の水では無理だが、神力で作られた水なら浮く事も可能なのだ。


 準備が整った私が、最初の一歩を出ると、それを合図にしたかのように突然目の前に水壁が現れた。


 水壁と思っていたそれはどうやら氷のようで、手で触れてみると固い感触でびくともしなかった。


 仕方が無いので壁を避けて前に出ようとすると、そこにも氷壁が現れ行く手を塞いできた。


 慌てて反対側を向くとそちらにも氷壁が現れたので、私は壁に囲まれてしまった。


「あの、モーフ様、これはなんでしょうか?」


 困惑した私が話しかけてみたが、モーフ様からの返事はなく、これが答えだとばかりに氷壁が迫って来た。


 私に迫って来た氷壁は、そのまま私を押して神域の外に追い出した。


 神域の外に投げ出され地面に転がった私を、心配そうな顔をしたガイア様とグロウ様が覗き込んできた。


「アリソンよ、大丈夫か?」

「アリーちゃん、何があったの?」

「それが近づこうとしたら氷壁に遮られて、そのまま追い出されました」


 私の説明を聞いた2人は顔を見合わせていた。


「モーフの氷壁か」

「アレは確かモーフの水が無いと作れないはずじゃなかったか?」

「という事は、上から接近しないと駄目という事ですね」

「そうでもないぞ。氷壁は作るのに時間がかかるはずだから、アリソンが本気で水面を走れば壁が出来る前に通り抜けられるはずだ」


 成程、すると神域に入ったら立ち止まらず、直ぐに進めばいいのね。


「分かりました。もう一度やってみます」



 私は乱れた服を直してモーフ様の神域の前に行くと、そこで大きく息を吸ってから一気に中に突撃した。


 先ほどは慎重に一歩を踏み出したが、今度は神域に入ってすぐに駆け出した事から、目の前に氷壁が現れて行く手を塞ぐ事は無かった。


 だが、モーフ様もそれが直ぐに分かったのか今度は目の前に水壁が現れた。


 水壁はそのまま突っ込んでも向こう側に抜ける事は出来たが、通り抜ける時こちらの速度が落ちるので抜けた先に氷壁を作られてしまっていた。


 再び神域から排除されると、またお2人に顔を覗き込まれていた。


「アリソンよ、駄目だったのか」

「ええ、下は駄目っぽいので今度は天井から接近してみます」


 私はグロウ様のツタを手に持つと再び神域に入っていた。


 神域の中央に居るモーフ様に動きが無いのを確かめてから、一気に神域の壁を天井に向けて駆け上がった。


 流石に側面には水壁を作ることは出来ないのかこちらを妨害してこなかったので、もう少しで天井というところで眼下のモーフ様の様子を窺った。


 モーフ様は手に持った杖を体の前でくるくると回転させていた。


 杖の回転は地面の水を吸い上げていて、吸い上げられた水は杖の回転によって渦を巻いていた。


 私はモーフ様の頭上に垂らしたツタを手に降下しようとすると、モーフ様が杖の先端をこちらに向けた。


 するとそれまで杖の回転に合わせて回っていた水が、渦をまきながらこちらに向かってきた。


 こちらに向かって来る水流を体を横にスライドして避けると、目標を失った水流はそのまま神域の壁面に当たり四散した。


 だがモーフ様が神域内で扱う水は、ただの水ではなかった。


 壁面に当たって四散した水滴が私に降りかかると、直ぐに凍ったのだ。


 それは私の行動を制限し、体温を奪っていった。


 こ、これは拙いわ。


 私は意図的にモーフ様の神域から脱出すると、体のあちこちを覆っていたモーフ様の氷は消えていた。


 どうやらあの氷は神域内のみ有効のようだけど、それが一番の問題なのよね。


 私が次の案を考えていると、ガイア様とグロウ様は近づいてきた。


「アリソン、どうした?」

「アリーちゃん、まだ苦戦しているの?」

「はい、モーフ様の水が厄介なのです」


 私が深いため息をつくと、お2人も納得していた。


「モーフは巧みに水を操るからな」

「そうじゃのう、水じゃ防ぎようも無いしねえ」

「分かりました。それでは神力を使って何重もの鎧を纏って、モーフ様の水を浴びる度に1枚ずつ脱ぎながら接近してみます」


 私は薄い鎧を何重にも重ね着すると、神域の中に入って行った。


 中央に鎮座するモーフ様の姿を確かめてから一気に駆けだすと、先ほど天井に取り付けたツタの所まで駆け上がった。


 そこでツタを掴むと眼下のモーフ様に視線を向けると、案の定、こちらに向かって水流が迫って来た。


 その一撃を避けると、降りかかった水滴が付着した鎧を脱ぎ、ツタを掴んで降下していった。


 次に水流は盾を出して防ぐと、直ぐに盾と水滴が付着した2枚目の鎧捨てた。


 そして神力の流れを調整する先端が輪になった道具を作成するとそのままモーフ様の体の中に差し込むと、乱れた神力の流れを調整し始めた。


 次の瞬間、私は空中を飛んでいた。


 何が起こったのかとモーフ様を見ると、手に持った杖を振り上げていた。


 どうやらあの杖で殴られたようだ。


 駄目だったのかと諦めかけたところでモーフ様を見ると、のっぺりとした顔の中央に鼻と思われる突起が浮き上がっていた。


 その鼻は人間の物に似ていて、ヒクヒクと動くそれは周囲の臭いを嗅いでいるようでもあった。


 そして体内のぐちゃぐちゃだった神力の流れは、少し良くなったようにも見えた。


 それはあと何回もやれば、モーフ様を正気を取り戻せるかもしれないという期待が湧いてきた。


 そして私は神域から外に吹き飛ばされていた。


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