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神獣の調力師  作者: サンショウオ
第3章 モステラ
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77 商業ギルド再び

 

「おい、本当に指令は亡くなっているのか?」

「はい、指令が装着された黒鎧が潰されていました。あれは、どう見ても致命傷でした」


 我々が使う鎧は魔法がかけられている特製品だぞ。


 それを潰すなのて、一体何をしたらそうなる?


 だが、いくら否定しても指令が殺された事実は消せないので、現時点で自分がこの場の責任者、つまり失敗したら全責任を負わされる立場になってしまったという事だ。


 なんとかしなければ、自分がこの不手際の責任を押し付けられてしまう。


 それを回避するためには、事態を挽回する手柄が必要だ。


 そこではっとなった。


 そう言えば、指令は緑髪の女を気にしていなかったか?


 それにダルチェの留守役エリアス・モロも同じことを言っていたと、指令は言っていたぞ。


 先ほど門の傍に居たのは、商業ギルドで見かけたあの緑髪の小娘だったんじゃないか?


 こうなって来ると、どうしてもあの小娘が怪しくなってくるな。


「おい、小娘を捕らえに行った2人はどうした?」


 フォンシェがそう言ったが、部下達は互いの顔を見合わせているだけだった。


 誰も聞いていないのか?


「直ぐに、2人を探してこい」


 部下達が慌てて部屋を出て行くと、また、報告を待つ間、焦りが胃を痛くしていた。


 しびれを切らして自分も探しに行こうかと思ったところで、ようやく部下達が戻って来た。


「報告します。2人は門から少し外れた木陰に倒れていました」

「それで、小娘は?」


 フォンシェがそう聞くと、部下は渋い顔をしていた。


「何処にも居ませんでした」

「くそがぁ」


 フォンシェは思わず近くにあったゴミ箱を蹴り飛ばした。


 そしてようやく冷静になったフォンシェは、此処までの失態がアンスリウムにバレたら絶対責任を取らされる事に思い至った。


 少しでも失点を回復するには、あの怪しい緑髪を捕らえる事が重要に思えてきた。


「おい、動ける奴を全員集めろ」

「はっ」


 フォンシェは今度こそ絶対に成功するのだと固い決意を抱いていた。


 +++++


 ロエルの町に出て行った部隊と鉢合わせしたシリルはカーリーと夜中に逢瀬している恋人のふりをしてやり過ごしていた。


 後ろ向きで連中の動きが見えないシリルは、壁際のカーリーに声をかけた。


「連中は、こっちを警戒しているか?」

「大丈夫そうです。ですが、なんだか娼婦を買った男を見ているような感じで腹が立ちました」


 そう言ってカーリーが頬を膨らませるのを見たシリルは、こんな時にもかかわらず笑みを浮かべた。


「カーリー機嫌を直せ。直ぐに商業ギルドに向かうぞ」

「えっ、夜中ですが?」

「今日は、マーメイド救出作戦をしているのだ。あのギルマスも今日は終日営業だろう。それにアリソンの要望に応えて、少しでも好感度を上げておかないとだしな」

「ああ、確かにそうですね」


 戻って来た部隊をやり過ごすことに成功したシリルは、カーリーを伴って武器を手に入れるため商業ギルドに急いだ。


 追っ手があるかもしれないので、念のため態と遠回りしてから商業ギルドの裏手から近寄っていった。


「公子の言った通りですね。内部には人がいる気配があります」

「ああ、出来れば目立たないように裏口から中に入りたいのだが?」

「いえ、アマハヴァーラ教の連中は拠点内の混乱を収束するに忙しくて、こちらまで手が回らないと思いますよ」

「正面から入っても問題無いと?」

「ええ、そう思います」

「分かった」


 シリルはカーリーの助言のとおり、商業ギルドの正面に回ると、念のため周囲に人の気配が無い事を確かめてから中に入った。


 商業ギルドの中は一部だけ明かりが灯っており、その明かりの下に男性職員が1人座っていた。


「まさか、残っているのはギルマスだけだと思っていたんだがなぁ」

「でも、ギルマスが信頼している人かもしれませんよ?」

「さて、どうかな」


 シリルはその男性職員がスパイかどうか分からなかったので、出来るだけ情報を出さないように注意した。


「ギルドマスターに会いたいんだが?」

「どのような要件ですか?」


 男性職員はいきなりギルマスを呼べと言われて、不機嫌な顔になっていた。


「ああ、ギルドマスターに頼まれていた仕事を完了したので、その報告だよ」

「では、私が伝えますので、内容を教えてもらえますか?」

「いや、個人的な依頼だからそうもいかないんだよ」


 シリルがそうとぼけると、受付の男が黙って暫く睨んでいたが、やがて諦めたようだ。


「分かりました。ギルマスに伝えてきます。貴方のお名前は?」

「シリルだ」

「少しお待ちください」


 そう言うと男は椅子から立ち上がり、奥に消えて行った。


 しんと静まり返るギルド内を見回していると、奥から明かりが移動してくるのが見えた。


 その明かりに照らされたアロンドラ・ベルティは、真剣な表情をしていた。


「シリルさん、カーリーさん、首尾は?」

「ああ、大丈夫だ」


 シリルは先ほどの男が見えない場所で耳をそばだてているかもしれないと警戒して、出来るだけ情報を与えないように短く答えた。


 ギルマスもそれが分かっているようで、短く返してきた。


「そう」


 シリルは直ぐに次の行動に移った。


「ギルマス、実は新しい取引先が見つかったんだ。そこで商売の話をしたいのだが、内密に相談できないか?」


 ギルマスは一瞬眉をひそめたが、直ぐにシリルが言いたいことを理解したようだ。


「貴方達も新しい商売が出来て良かったわね。いいわよ。それじゃあ私の部屋に行きましょうか」


 ギルマスに誘われて奥の部屋に入ると、そこにはこの部屋の主人が仕事をしていた痕跡があった。


 ギルマスは自ら飲み物を用意してローテーブルの上に置くと、シリル達に椅子に座るように促してきた。


 テーブルの上にある燭台の光に顔を照らされながら、作戦の顛末を話した。


 話を黙って聞いていたギルマスは、シリルが話し終えると直ぐに返事を返した。


「すると、モステラの環境を改善させるには聖なる島に行く必要があって、その行く手を邪魔する魔魚を退治するため武器が必要なのね」

「ああ、そうだ」


 シリルが同意するように頷いた。


「そしてその武器というのが、前に交易で渡しそこねた武器なのね?」

「ああ、まだ残っているか?」

「ええ、問題無いわ。ただ、双子岩までどうやって運ぶか、ね」


 シリルはその言い方に引っかかりをもった。


「何か問題があるのか?」

「双子岩に行く道はノームが発生してから放棄されているの。今、どうなっているか全く分からないわ」

「つまり、道が崩壊しているかもしれないと?」

「船で行くのはどうなのです?」


 シリルが危険について指摘すると、直ぐカーリーが別の案を出してきた。


「ノームと魔魚のせいで使える船が無いの」

「そんな場所をどうして指定したんだろうな?」

「ああ、その場所は海が急に深くなっているから、海から来るマーメイド族にとっては都合が良い場所なのよ」

「仕方がない、危険を承知で運ぶしかないな」


 シリルがそう言うとカーリーが渋い顔になった。


「真夜中で足元がおぼつかないのに、それは危険では?」

「それなら私が運ぶわ」


 突然聞こえた声に振り返ると、そこにはアリソンが立っていた。


 +++++


 追っ手を躱してカラスの拠点を脱出したアリソンは、シリル達と同じように迂回して商業ギルドにやって来ていた。


 そして誰もいない室内で明かりと声が聞こえる場所にやって来たのだ。


「道がどうなっているか分からないのよ? そこに重い荷物を運んでいくなんて」

「ああ、大丈夫です。私のゴーレム馬は内部が収納になっているので武器も運べますし、足元が悪くてもゴーレム馬ならなんとかなります。道順さえ教えてもらえれば大丈夫ですよ」

「それなら1日余裕があるから、下調べをすればいいだろう」


 シリルの提案ももっともだ。


「それもそうね。それじゃあ商業ギルドに武器を準備してもらっている間、私達は道の下調べをすませてしまいましょう」

「ああ、それがいいだろう」



 私達はギルマスの好意で部屋を貸してもらい、仮眠をとってから道の下見に出かけた。


 双子岩がある場所は当然ロエルの町のドライウォールの外なので、途中から携帯型ドライウォールを使って道を進んだ。


 双子岩に続く道は長年使われていなかったためかなり荒れていて、気を付けていないと転びそうだった。


 それでも慎重に歩みを進め目的地である双子岩に到達した。


 そこは2つの切り立った岩が海の中から突き出していた。


 周辺に砂浜は無く、ごつごつとした岩場が続いていた。


 この場所を夜中に来るのであれば注意が必要だ。


 周囲の地面も確かめてから来た道を引き返していると、突然後ろから音が聞こえた。


 振り返ると、今通って来た道が崩れ落ちていた。


「この幅だと厳しいな」


 シリルの指摘のとおり、崩落した向こう側の道までジャンプしても届きそうも無かった。


 だが、ガイア様の足なら問題なさそうだった。


 道を補修する時間があればいいが、なければ私とガイア様だけで行くしかないわね。


 そう決意して商業ギルドに向けて歩いていると、突然先頭を歩くシリルが立ち止まった。


「どうしたの?」


 私が尋ねると、シリルから固い声が返ってきた。


「拙い事になった」


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