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神獣の調力師  作者: サンショウオ
第3章 モステラ
76/85

76 脱出

 

 私はカンカさんをおんぶしているシリルを見た。


「シリル、カンカさんをガイア様の背中に乗せて下さい。ここから先は私とガイア様でカンカさんを水路まで連れて行きます。貴方達は一足先に脱出してください」


 私の提案にシリルは渋っていた。


「いや、これ達も一緒に行った方がいいんじゃないか?」


 シリルの顔を見ると本気で心配しているのが分かったが、私だけならガイア様もいるし最悪の場合はガイア様が作る神域に逃げ込めるので心配はいらないのだ。


 それにガイア様の能力をこの2人にはあまり見せたくないという本音もあった。


「私は大丈夫です。それよりも一刻も早く商業ギルドに行って武器の手配をお願いしますね」


 私がにっこりと微笑んでそう言うと、少しためらったが頷いてくれた。


「分かった。それでは商業ギルドで待っているから出来るだけ早く戻って来てくれ」

「はい、それは大丈夫です」


 そしてシリルとカーリーが駆け出すと、こちらも既に事を起こしているので早めにカンカさんを水路まで運ぶ事にした。


「ガイア様、申し訳ありませんが、カンカさんを背中に乗せてもらえますか?」

「問題ない。アリソンも乗るのだ。時間が無いのであろう?」

「恐れ入ります」









 カンカさんと和解出来た私達は牢から出て、水路が見える場所に移動した。


 そこからは真っ暗な空間をまぶしい光で引き裂くように見張り櫓からあの侵入者を見つけ出す光が照射されていて、その光に照らしだされたカラス共が手に弓や槍を持って水路の両側に等間隔で待機していた。


「私達は、ここで騒ぎを起こして連中が海側に集まっている隙にロエルの町に逃げ込みます。ガイア様、ここから見えるあの2つある閘門を同時に破壊できますか?」

「アリソンよ。心配はいらぬぞ」


 そして私の中から神力が抜けている感覚が始まると、大きく開けたガイア様の口の中に光の玉が出来上がっていった。


 そして撃ち出された光線は、目標物である最初の閘門を「ドゴオオン」という轟音と共に吹き飛ばした。


 その衝撃は大きく、傍にある見張り櫓のあの光がまるで狂ったように周囲を物凄い速さで映し出していた。


 ガイア様のブレスは勢いを落とす事も無くまっすぐ2つ目の閘門に到達し、再び轟音と共にそれを吹き飛ばした。


 すると破壊された閘門から大量の海水がどっと水路に向けて流れ込み、「ゴー」という音を伴った猛烈な水流となって水路を突き進んできた。


 その勢いはすさまじく瞬く間に水路を一杯にすると、水路から溢れた海水が両側で待ち構えていたカラス共の足元まで到達していた。


 感の鋭い者は海水を危険と感じて後ろに退いたが、愚直に命令を守ってその場に留まった者は海水に足をすくわれ、そのまま海水の中に飲み込まれていった。


 仲間を助けようと手を伸ばした者も海水に足元をすくわれると、先に飲み込まれていった者達の後を追った。


 水路を突き進んできた海水は終点である中央に檻がある空間までやって来ると、眼下の壁にぶち当たり轟音を響かせた。


 その飛沫は私の所にまで飛んでくると、髪の毛を濡らしていた。


「カンカさん、今、連中は突然の事で混乱しています。この隙をついて、里まで脱出してくださいね」

「はい、いろいろありがとう。それでは2日後にまあ会いましょう」


 そう言うとカンカさんは、眼下の水流が荒れ狂う海水の中になんの躊躇もなく飛び込んで行った。


「ガイア様、私達も脱出しましょう」

「分かった。アリソンよ疲れただろう、私の背中に乗るがよい」


 ガイア様に神力を吸われていた私は確かに少し疲れていたので、ガイア様の申し出を喜んで受ける事にした。


「はい、お願いします」


 私が背中に乗ったのを確認すると、ガイア様は凄い勢いでロエルの町に向けて駆け出していった。


 +++++


「見たか?」


 シリルの問にカーリーは頷いた。


「攻撃を視覚できませんでしたが、物凄い量の魔力があのゴーレムから放たれたのが分かりました」

「アリソンの攻撃も見えないが、はやりあのゴーレムもそうか」


 シリルの視線の先は、破壊された閘門と水路に流れ込む大量の海水があった。


「あの娘には、私達が知らない何らかの能力があるようですね。きっと、それがリドル一族の特殊能力なのでしょう」

「あの力があればバキラの地も元に戻せるのではないか?」


 カーリーが感覚で察知した事を声に出すと、公子は期待を込めた瞳を向けてきた。


「ええ、期待できると思います」

「それなら、あの娘に協力して印象を良くしておくのが最善だな」

「はい、ですので、急いで商業ギルドに行ってお願いされた段取りを進めておきましょう」

「よし、では急ぐぞ」


 公子の顔には自国の環境が元に戻るかもしれないという期待が込められていた。



 そして連中の拠点を何とか脱出してロエルの町に逃げ込もうとしていると、前から黒鎧の集団が戻って来た。


 拙い、ここで捕まったら後の予定が全部狂ってしまう。


 すると突然公子に手を掴まれるとそのまま建物の壁に押し付けられた。


 そして公子は自分の体を押し付けてきた。


 壁に押し付けられたカーリーは公子の突然の行動に驚いたが、直ぐに公子が耳元で囁いたのでその理由を知った。


「連中の目をごまかすため恋人のふりをするんだ」


 +++++


 ロエルの裏路地で不穏分子共を追いかけていたフォンシェは、拠点の方から立て続けに聞こえてきた2つの轟音に足を止めた。


 しまった、本命は拠点で、こっちは囮だったか。


 くそっ、まんまと誘い出されたぞ。


「止まれ、急いで拠点に戻るぞ」


 フォンシェは暗くて細い裏路地をかける部下達を止めると、手を大きく回して反転するように命令を怒鳴った。


 急いで拠点に戻るフォンシェの目には、建物の壁でイチャつく男女の姿が見えた。


 一瞬、こんな夜中に逢瀬を楽しみやがってというひがみが心の中から湧き上がって来たが、こんな夜中まともな者達があえて外でイチャつく訳がないと気を取り直した。


 大方、夜の女を買った男だろと思い、アマハヴァーラ教では女を買う事自体禁止はしていないが不純な行為だと教えられているので、フォンシェは鼻で笑ってやった。


 ふん、所詮は田舎者の国だからな。


 拠点の入口から敷地内に入り直ぐに違和感を覚えた。


 あれだけ大きな爆発が2回もあったのに、拠点内がやけに静かなのだ。


 フォンシェは部隊を停止させると、違和感の正体が何か探り始めた。


 すると我が拠点では絶対にありえないものをみつけた。


「おい、あんなところに小娘がいるぞ。怪しいから捕まえてこい」

「「はっ」」


 フォンシェは2名を小娘の捕縛に向かわせると、残りの兵を率いて本館に向かった。


 フォンシェは本館で上司を探すが、執務室にも作戦室にも居なかった。


 いや、それどころか誰もいなかった。


「何故、誰もいない? おい、全ての建物内を見て回るんだ。急げ」

「「「はっ」」」


 フォンシェの命令に応じて部下達が慌てて駆け出していくと、作戦室から外を見ていた部下が声を上げた。


「フォンシェ様、外を見て下さい」


 その声で本館の窓から海側を見ると、見張り櫓から乱雑に映し出される光の中に、味方の姿が映しだされていた。


「彼らは何をしているのだ?」

「大変です、水路に水が」


 この水路に海水を入れるのは人語を喋る魚を罠に嵌める時のはずだ。


 何故、今、閘門を開けているんだ?


「フォンシェ様、閘門がありません」

「なんだと?」


 フォンシェはその指摘に、閘門がある筈の場所をじっと見つめた。


 そして、門がある筈場所に何もない事を見つけた。


「信じられん。確かに閘門が無いな。するとあの者達は閘門が何故無くなったのか調査しているのか?」

「いえ、どうも、救出をしているように見えます」


 少しの間、拠点を離れただけなのに、建物内には人が居ないし、閘門は無くなっているわで、一体どうなっているのかさっぱり分からなかった。


「おい、情報が必要だ。あの者達に何があったのか確かめて来るのだ」

「はっ」



 フォンシェがじりじりしながら待っていると、調査に行った部下達が次々と戻って来た。


「報告します。右棟誰もいません」

「左棟も誰もいません」

「水路を見てきました。そこに居た仲間の話では、指令の命令で逃げて来る侵入者を仕留める事になっていたそうです。ですが、突然2つの閘門が吹き飛び海水が溢れて来たそうです。水路に沿って待機していた仲間が海水に足をすくわれ何人も水の中に消えていったそうです」


 だから、どうして突然閘門が吹き飛ぶんだよ?


 するとそこに真っ青な顔をした部下が戻って来た。


「た、大変です。作業棟にある地下牢で指令が殺されていました。そしてそこに居たはずの人語を話す魚が居なくなっています」

「なんだと?」


 フォンシェは、今時点で自分がこの場の指揮官になった事を悟った。


 そして、この不手際の責任を負わされる1人になった事も。


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