第95話 見えない何か①
いつもありがとうございます
パルチ山麓の森に戻ってきました。
天気もいいし今日中に森を抜けたいところだ。
トリックモンキと戦った場所は特に変わったこともないし、セリによると“気配感知”にも引っかかる魔物はいない。
「そういえばトリックモンキってどれ位だったの?」
「どれ位?」
何の話だろ。
「ほら、この前倒したのを売りに行ったじゃない。あれってどれ位で売れたの?」
・・・・・
忘れてた。そうだ、それを売りにレーヴィアに行ったんだった。
フェスティバルに参加して完全に忘れてた。
「・・・忘れてたみたいですね」
俺の顔から状況を察したナギが答える。
チョコも薄々気付いていたようで、ため息をついていた。
申し訳ない。
アンダルシアが元気になったので、今日はナギも同行している。
チョコと合わせて今日は4人で移動する。
「今日は静かだな、なんだか落ち着く」
鳥の声すら聞こえない、葉同士が風でゆれてすれる音だけだ。
森林浴としてのんびりしていきたいな。
「ねぇ変じゃない?」
「変?」
「何がですか?」
ある程度進んだところでチョコが言い出した。
変って何処がだ?。前に歩いた時と変わらない気がするけど。
「なんていうか、静かすぎるのよね。鳥の声すら聞こえない。それに気づいてる?、そこら中に骨が散乱しているの?」
『ほんまや、よう見てんなぁ』
チョコに言われ周囲を見渡してみる。草などで隠れたりはしているが確かに骨が散らばっているな。
大きさはそこまで大きくないみたいだけど・・・。
「魔物を探すときに痕跡って大事だからね、つい癖で見てしまうのよ。前歩いていた所はそうでもなかったけど、今の場所はかなり多い。多分何かいるわよ」
『でもウチの“気配感知”には何も反応無いで?』
「ということは今その感知範囲にいないだけかもね。私の経験から言うとここはその何かのテリトリーだと思う」
チョコは骨を拾って調べた後、一つの骨を俺たちに見せる。
所々に引きちぎった残りの肉が付いていてちょっと気持ち悪い。
「これはその何かが食べた残りよ。それに肉が残ってるってことはまだ新しいわね」
「つまり、その食べた何かはまだ近くにいるってことですか?」
ナギが周囲を見渡すが、それらしい存在は見当たらない。
「そうね、でも大きさはそれほどでもないわね。せいぜい1mあるかないかってとこかしら」
「そんなことまで分かるのか?」
「大体ね。この食べられた魔物から推測しているに過ぎないから確証はないけどね」
チョコは説明を終えると後ろにポイっと骨を放る。ただ捨てただけの何気ない動作だが一瞬おかしなことが起きた。
何もないところで、何かにぶつかったように落ちたのだ。
「大きさはそれほどでもなくても、テリトリーには同種の魔物が集団で居る場合もあるし、用心したほうが・・・・、何?」
「いや、ちょっと・・・」
どうやらチョコは気付いてないらしい。
俺は骨が当たった場所を指差してレーザーを撃った。
しかしレーザーは何事もなく問題の場所を通り過ぎる。
あれ?、見間違いだったか・・・。
「どうしたんですか?」
「いや、さっき骨が見えない何かに当たったように見えたんだけど・・・、気のせいだった」
見えない何かがあれば、レーザーが当たるはずだ。
何かが動いた気配もない。
「ごめん、先へ行こうか」
勘違いだと判断して森を抜けようと歩を進めた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
道なりが上り続きになってきた。
まだそこまで急ではないが、今まで平坦だったため、ちょっときついな。
チョコはハンマーを背負っているにもかかわらず、全く疲れている様子はないが、ナギは若干つらそうにしている。
そろそろ、休憩を入れたほうがいいかな?
『ちょっと休憩せぇへん?』
「それセリが言うの?」
リュックに入り周囲をキョロキョロしているだけの蛇にチョコが呆れる。
『え、ええやん!。そろそろおやつの時間やし休憩してもええやん!』
「確かに3時だな・・・」
時計は3時ジャスト、相変わらずおやつ時計が正確な奴だ。
ちょうど休憩しようと思ってたところだから了承する。
ちょうど休憩しやすそうな広場もあることだし。
「はぁはぁ、やっぱり普段から歩かないと駄目ですね・・・。ちょっと疲れてしまいました」
「いやいや、俺も疲れたよ。ここまでついてこれてるし大丈夫だって」
『そんなことよりおやつ!!』
セリはリュックから飛び出ると、周りをキョロキョロしつつおやつを強請ってくる。
チョコも欲しそうにしているので準備を始める。
「あ、お茶は私がやりますね」
「じゃあ私は周りでも見張ってようかしら?」
それぞれが対応する中、セリは未だにチョロチョロ動きつつ周りを見ている。
「セリ、どうかしたか?」
『なんもないでー・・・』
いつもならリュックの中で準備ができるのを待っている。
何か探し物でもあるのだろうか?
「?、それならいいけど。ほら先に渡しとくぞ、今日はみたらしーー」
『そこやぁ!!』
渡そうとセリにみたらし団子を差し出した時、セリが突然叫び、みたらし団子とともに消えた。
俺はびっくりして尻もちをついてしまう。
「何!?」
遠くを警戒していたチョコが慌てて寄ってきたが、俺もよく分からない。
分かるのはセリが突然跳んで移動したくらいだ。
どこに行ったかまでは分からないが。
立ち上がって周囲を見渡し、セリを呼ぶ。
『ここや。やっと見つけたで』
何度か呼ぶと、前方の茂みからセリが自分と同等以上の大きさがある何かを咥えて戻ってきた。
口はおやつでも食べているのか少しもごもごしている。加えながらおやつ食べるとか器用だな。
咥えている奴は全体的に緑色をしており、体長は1mほど。眼は大型の円錐形をしており口から垂れた舌が長い。
それは体色を変化させ、風景に溶け込むことが特異な奴だった。




