第94話 ヘイゼルとシルヴィ
前から歩いてくる2人組。
1人は前回ちょっかいをかけてきたヘイゼルだ。
執事服だからかなり目立ってる。
もう1人は・・・、見たことないが女性のようだ。かなり重そうな鎧と大剣を持っていて、いかにも戦士ですといった風貌をしている。
2人で何かを話しながらやってくるが、・・・アイツ、チョコに振られたからあの人に乗り換えたのか?
って、そんなわけないか。
あの2人の間にそんな甘い雰囲気はしない、どっちかというと仕事上の関係のような気がする。
まぁそんなことはどうでもいい。
それよりもヘイゼルに気付かれる前に隠れるほうが先だ、見つかると絶対絡まれるし。
『もう、遅いんちゃう?』
・・・・・だよな。
完全に目が合ったし、近づいてくるし!。
「また会ったな、チョコ様は元気か?」
あれ?、思ったより普通だ。
てっきりまた「決闘だ!」とか言われると思ってたんだけど・・・。
「元気にしてるよ。あんたも足は大丈夫なのか?」
「ん?、ああこれか。回復持ちの方に直して貰ったから大丈夫だ」
撃ちぬいてそのまま放っといたから若干気になってたんだよな。ヘイゼルの様子だと特に問題はないようだ。今も足を上げたり下げたりしているが問題ないらしい。
「あの時はすまなかった。勝手な思い込みであんたには迷惑をかけた」
「あ、ああ・・・、それは別にいいんだが・・・何かあったのか?」
前回と態度が違いすぎる。
何か変な物でも食べたのか?。
「特にないさ。後日チョコ様にボコボコにされただけだ」
「あ、そう・・」
その時にチョコから説教されたらしい。
「その時に姉のモア様宛の手紙を渡されてな、急遽首都へ戻ることになった」
「ご苦労さま、大変だな」
首都がどれだけ遠いか知らないが、手紙一つ届けるためにわざわざ帰らないといけないのか。
執事も大変だな。
「そうでもない。元々この街へはグレート・アリゲーターを買うために来ただけだからな。商談が成立した以上、長居するわけにもいかない」
そういえばそうだったな。
そこでチョコを見つけてちょっかいをかけてきたんだっけ。
『ススム、腹減ったで・・』
「ああ、悪いな」
「?、何がだ?」
セリの念話につい言葉で返してしまった。
セリは他人の目がある所では俺にだけ言ってくるから、他の人間には聞こえない。
怪訝な顔をしたヘイゼル達に理由を説明して誤っておく。
「じゃあそういうことだから俺たちはもう行くわ」
「ああ、チョコ様によろしく言っておいてくれ」
適当に挨拶して別れーー
「ちょっといい?」
「ん?」
られなかった。
歩き出そうとしたところで、ヘイゼルの横にいた女性に止められる。
「そっちの蛇?はあなたの契約魔物?」
「ああそうだが、アンタは?」
「私はシルヴィよ。この男の護衛依頼を受けているわ」
護衛依頼・・・、あ、首都までのね。
つまり雇われた傭兵ってことか。
「それで、俺に何か用か?」
「その蛇?が見たことない種だったからね、何処で契約したのかを教えてもらえない?」
「蛇神の森だけど?」
別隠す必要ないし、そのまま答える。
しかし、それを聞いてどうする気だ?。
「特に何もしないわ。ただこのような仕事をしていると、初見の魔物って結構脅威になるの。だから生息地とかを聞いているってわけ。もっと言うと、持ってる特異性とかも聞いておきたいけどそれは手の内を明かすのと同じだから聞かないわ」
なるほどね、傭兵も大変だな。
「それだけなの、呼び止めて悪かったわね」
「いや、それはいいんだけど・・・、そろそろ放してくれないか」
さっきからなんで俺の手を掴んでるんだ?。
しかも契約の証を凝視してるし。
シルヴィは俺に指摘されると、慌ててその手を離した。
「ご、ごめんなさい」
そう言って顔を真っ赤にしてしまう。
なんか居心地が悪いな。
「じゃあ私たちはもう行く」
「あ、ああ」
シルヴィを連れてヘイゼルは行ってしまった。
結局何だったんだ?。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『ねぇちょっと聞いてよー!』
『はぁ・・・、どうしたの?』
同僚から念話が届く。
言い方から連絡などではなく、ただの愚痴っぽい。
こっちも色々と忙しいので正直やめてほしい。
『あ~!、今、どうでもいいことで念話してくるなとか思ってるでしょ!』
『分かってるならしてこないで、こっちは忙しいの』
『大事なことなんだって!。重要、超重要!』
『重要ねぇ・・・、何?』
いつものことだが、この同僚の重要は大したことない。あの街の料理は不味いとか、この街には服屋がないとかばっかりだ。
ちゃんとした連絡事項もあるが、その時は今のテンションではなくもっと淡々と話してくる。
だから今回も大したことないだろう。
『レーヴィアでね、変な蛇がいたの!』
ほらね。
思った通りだわ。
『ただの突然変異か何かでしょ?、そんなこといちいち連絡する必要ないじゃない』
突然変異体なんて人間にとってかなり危険な存在だが、私たちには関係ない。
それよりも上司から受けた任務のほうが重要だ。
『そもそもあなた、なんでレーヴィアに居るのよ?。首都で情報を集めてたんじゃないの?』
『ちょっと気になったことがあって来ただけ、今からすぐ戻るから!』
気になる事?。
普通変わった蛇よりそっちを報告するべきじゃないの?
『まぁいいけど・・。丁度仕事もひと段落したし聞いてあげるわよ』
実際は終わってないけどね。
『ほんと!?。じゃあ・・』
同僚は仕事中の筈なのにペラペラと喋り続ける。
見えてないけどあの子ならそれくらい普通にできるから気にしない。
『仕事中ごめんね〜。バイバーイ!』
結局1時間弱ほど喋り続けて同僚からの念話は切れた。
・・・相変わらずね。
話自体はどうでもいい事が殆どだけど、何点か気になる内容もあった。
「ちょっと調べた方がいいわね」




