第86話 フェスティバル②
「お、ススムじゃねぇか!」
ホールに戻ってくるとさっきまで居た冒険者が入口から吐き出されていた。どうやら説明が終わって、解散になったらしい。
どうでもいいけど、みんな焦っているように見えるが、もうちょっと落ち着いたらどうだ。あれじゃ扉壊れ・・・壊して行きやがった。
説明を聞こうとして来た俺が呆けていると、壇上に居た組合長が声を掛けてきた。
えーっと、組合長だから・・・、ヘッドだったっけ。
「もう説明は終わったのか?」
「ああ、今な。もしかしてお前も参加するのか?」
「そう思ってたんだが・・・」
俺はさっきまでのことを説明する。
「なるほどな、じゃあ今回のフェスティバルについて説明してやるから俺の部屋まで行くぞ」
「すまない」
冒険者組合に来るたびにほぼ来ている組合長の部屋へ案内される。入っていつものソファに座った。
対面にライト兄弟が座る。
・・・なんで弟がここにいるんだ?
「お前を見つけたから面白そうだし着いて来ただけだ」
「仕事はいいのかよ、リーダーだろ」
「はん、リーダーなんて皆暇なんだよ。大半は副リーダーがやるからそれを承認するだけでいいからな」
おいおいそんなこと言っていいのか?、そんな堂々とサボり宣言してさ。
隣に居るの組合で一番偉い人だぞ。
「ほう?、それはいいことを聞いたな。今ちょうどフェスティバルで業務が溜まってたところなんだ」
「おっと、そういえばやることがあった。じゃあな!」
逃げようとしたテットの頭をヘッドがヘッドロックで捕獲。ほら見ろそんなこというからそうなるんだ。
「た、助けてくれぇ!イテェ!!」
「自業自得・・だ!」
目の前で突如始まるプロレス。
どうでもいいけどフェスティバルについて教えてくれないか?。
「おおっと、すまんすまん。で?、何処から聞きたいんだ?」
「とりあえず最初から?、今知ってるのは今回のターゲットがピッグバードで、その大群がこの上を通過することぐらい。フェスティバルのルールも知らないからそこも教えて欲しい」
「そうか、お前フェスティバル自体を知らないのか。なら説明するが、時間が無いので重要なところだけ教える」
ヘッドによると、フェスティバルは、魔物が大量発生したのを確認できたときに行う臨時討伐依頼だそうだが、ただの討伐依頼だと参加する冒険者が少なく、みんながやる気を出さないのでフェスティバルとして一種のイベントにしているらしい。
ルールは単純に早い者勝ちらしく、狩った者がその魔物の所有権を得られる仕組みで、多く狩れば狩るほど買取り金額にボーナスがつくらしい。
が、それだと戦っている間に横取りする輩が出てくるので、冒険者達はパーティごとに戦闘範囲を決めてその範囲内で戦い、獲物はその範囲内のみの物だけだそうだ。
「その戦闘範囲はどうやって決めてるんだ?」
「それも早い者勝ちさ。だから皆特等席を取るために急いで移動するんだよ」
ああ、それで皆慌ててたのか。
あれ?、じゃあ今もここに居る俺ってかなり不利なんじゃ・・・。
「まぁそうだな。諦めろ」
「テットもな」
未だに逃げようとして、頭を鷲掴みにされている奴にそのまま返す。
「まぁどうせ全部倒すのは無理だから、あいつらが撃ち漏らした奴を狙えばいいさ」
「そうするよ、でその範囲は何処でもいいのか?」
「ああそうだ。決められた範囲が他の冒険者とかぶらなければどこでもいい。だが今回はピッグバードだ、奴らは飛んで移動するから戦闘範囲は高台や丘の上など絞られてくるけどな」
飛ぶ・・、って鳥だし飛ぶよな。
聞けば平地から100m近くの高度はあるらしいので、平地を戦闘範囲にすると攻撃が届かずなにも狩れないことになるらしい。
「で、ピッグバードは何処から来るんだ?」
「北東だ。スネークス・リバーを超えて、最終は西に向かう。誰よりも早く狩りたいのであればスネークス・リバー近くに居ればいいが、あの周辺には高いところが無い。だから街の西側にある高台に集まるのが普通だ」
「ルートはそれで合ってるのか?」
「ああ、毎回同じルートを通るからな」
うーむ・・・、さてどうしようか。
二択だ。獲物が多いが平地で攻撃が届くか分からないスネークス・リバーに向かうか、攻撃が届くけど、他人が陣取っていて狩場や獲物が少ない西の高台に行くか・・・
悩んでいると、セリから俺にだけ念話が飛んでくる。
『スネークス・リバーや!、そっちに行くで!』
『なんで?』
『そんなん決まってるやん。狩れへんかったら意味無いからや』
『でも上空100m近いんだぞ?、攻撃届くのか?』
セリには前にジャンプして貰ったけど100mまでは行かなかったように思える。あ、でも重力が強かったしここではどうだろう・・・。
あれより1.3倍跳べるのなら・・・行けるかも。
『それにスネークス・リバーやろ?。あいつらが居るやん』
『あいつら?』
『ヤツメや、忘れたんか?』
あ、ヤツメか!。
ちなみにこのヤツメとはギガント・ランプリーの名前だ。いい名前が思いつかなかったので見たまんまの名前にした。ちょっと悪い気もしたが、ヤツメ本人が『カッコイイです!』と言っていたので良かった。
使い魔になっても特にしてもらう事がなかったのでヤツメは今もスネークス・リバーで暮している。
すっかり忘れてた・・・。
「なぁ、どうしたんだ?」
「あ、ちょっとセリと相談してた」
「せり?、・・・ってコイツか。何を相談してたんだ?」
「ん?、何処でやるかだけど?」
「高台でやらないのか?」
「ああ、川の近くで狩ることしようかって、高台は行ってももう遅いだろうし」
「それは・・・そうだが、行っても攻撃が届かなかったら意味ないぞ」
「それに川に近づき過ぎるとランプリー達が出てくるしやめといたほうがいいと思うが・・・」
「多分セリなら届くだろうし大丈夫だと思う」
確証はないけど、ヤツメも居るし何とかなるだろ。
おっと、これ以上遅れたら間に合わなくなるな。そろそろ行くか。
「じゃあ、行ってくるわ」
「待て」
立ち上がった俺にテットが声を掛ける。
「俺も行く」
「お断りします」
速攻で断った。
やだよ。スキンヘッドのおっさんと行くなんてさ。




