第84話 森に突入③
消火を開始して1時間はたっただろうか?。
最初燃えていた範囲の数倍は燃えてしまったが、なんとか全部消火できた。
セリが“水生成”持ってて良かったよ。持ってなかったら諦めてた。
『別にほっといても良かったやん。困るのはあいつらだけやし』
消火で動き回らされたからか、セリは若干ムスッとしている。
言っておくけど火災の原因はお前だからな。
ここが街ではなくてよかった。人が誰も居ないから木が燃えただけで済んだからな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
一旦昼食を取って午後に再出発する。アンダルシアの調子が戻らないので、ナギたちは今回もパスして貰った。どうやらアンダルシアは疲れから風邪をひいたらしい。あ、馬の風邪って言い方が違うんだっけ?。まぁ魔物だしどっちでもいいか。
アンダルシアの風邪にフウがショックを受け、最初泣き出したので大変だった。今はずっとつきっきりで看病しているらしいが、今度はフウが体調を崩さないか心配だな。
その辺りもナギに任せてしまってるが、そのせいでナギも風邪引くかも知れない。
あれ?、旅なんかしてる場合じゃないな・・・。
でも家にいても出来ることないし、気を取り直して先に進もう。
「セリ、周囲に魔物はいるか?」
『近くには居らんな・・・、ちょっと離れたところにちらほらいるけどな』
ここに集まっていた魔物は昼食を食べている間に遠くまで逃げられたようだ。セリが忌々しそうに舌打ちする。
「それってどんな魔物なの?」
『見たらトリックモンキって言うらしいで。特異性も殆ど持っとらへんし強くはないな。チョコでも簡単に勝てるわ』
「トリックモンキねぇ・・・」
“過去視”で見た姿を思い出す。見た目は原始人とまではいかないが人ほどの大きさの猿だった。ただ、顔がどうもおかしい。常に何か企んでますと言っているようにニヤリと気持ち悪い笑顔をしている。全員がその顔なので、笑っているわけではないのだろうが、見るだけで不快になる顔だった。
セリがイライラするのも納得できる。
「そんなに気持ち悪いの?」
『あかん、ウチはあの顔思い出すだけでイライラしてくる』
「なんか夢に出てきそうな感じだよな」
正直見るんじゃなかったと後悔しているくらいだ。
「そんなに嫌そうな顔するほどの顔なのね、見なくて済んで良かったわ」
「見たいか?」
魔物図鑑用に撮った写真ならあるけど?。
チョコにあっさり「いらない」と言われる。まぁそうだよな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「これは・・・また」
『あかん・・・』
「ひ、・・酷いわね・・・」
日が傾いてきた。
今日はそろそろ終わりにして帰ろうかと考えていた頃に、ソイツは現れた。
例のトリックモンキなのだが、前に見た奴とは少し違う。
一つ目は体が他の個体よりも大きい。
二つ目は周囲に別の個体を複数体侍らせている。
三つ目はその顔が他の個体より数段酷かった。
あの後、道中にもトリックモンキは出たが、皆同じ顔だったのにコイツだけおかしい。と言っても他の個体より口角が上がり、目が細くなり、垂れ目具合が大きいだけだが・・・。
このまま放置して帰りたいところだが、相手は完全にこちらを認識しており逃げられるような雰囲気ではない。こちらを向いて構えているように見える。
「うーん、どうする?」
『勿論倒すで!!』
セリがやる気満々だ。
会った瞬間にリュックから飛び出してるし、そう言うのは分かってたけど。
なんか、相手の様子が変なんだよな。周囲に侍らせていた仲間を自分の後ろに下がらせているし、本人も構えてはいるけど襲ってくる気配がしない。まるでこちらの様子を窺っているみたいだ。セリの強さが分かってるから迂闊に飛び込んでこないのか?。
いや・・・、普通勝てないと思ったら逃げるか・・・。奴らの後ろの木々に隠れて逃げれば、確実とはいかなくても逃げられるはずだ。もしかして逃げられない理由でもあるのか?。
それとも・・・
俺は奴らの周囲を確認してみる。
が、特におかしなところは見当たらない。見当たらないのだが・・・、
あいつらの顔のせいで何かありそうな気がしてならない。
『こうへんのか?、ならかこっちから行くでぇ!』
「あ、セリ!」
何かないかと探しているうちにセリが痺れを切らした。弾丸のように跳んでボスであろう大きいトリックモンキに体当たりをかます。
「キキ」
当たったと同時に、フッと周囲に侍らせていたトリックモンキたちも含めて消えた。
どうやら幻だったみたいだ。
本体は・・・、
「「「キキキキ!!」」」
幻があった場所より、右の方の景色がぼやけてトリックモンキ達が姿を表す。
「完全に消えていたわね。・・・となると、“写身”で間違い無いわ」
“写身”は自身や触れた対象の姿をズラして相手に見せることができるとチョコが説明してくれる。使用中に大きく動くと特異性が解除されてしまうらしい。
「使い方としては、今みたいに幻で相手に攻撃をミスらせるのが一般的ね」
まぁそうだろうな。
突撃していったセリは幻を突き抜け、その後ろにあった大岩に激突した。
奴ら全員と木々でその大岩が隠れて見えなかったが、これは奴らの狙いだろう。セリの攻撃をミスらせて岩ぶつけ、自滅を狙ったようだ。
「「「キーキキキ♪」」」
上手くいったと思っているのか、さっきから手を叩き上機嫌に鳴いている。
けど残念だが、そのツチノコ岩くらいじゃダメだぞ。
ミシミシとセリが当たった箇所を中心に岩に亀裂が入る。そして、ガラガラと音を立てて割れた。
「「「キキ、キ!!?」」」
流石にトリックモンキも岩が負けるとは思ってなかったらしく、目が飛び出るほど見開いて驚いている。
そんな奴らの前で、無傷のセリが割れた大岩の瓦礫の中から現れる。
「なんで無傷なの?」
「知らん。あいつはそう言う体質だと思ってる」
セリは、予想外の事態に怯え出したトリックモンキを見据えてニヤリと笑う。
『次は・・・外さへんで!?』
「・・・キ、キキキー!!」
その言葉にやばいと感じたのか、ボスの指示の元トリックモンキ達はいっせいに逃げ出した。




