第74話 川の上で①
『Zzz・・・』
川の真中くらいに来た頃、セリは完全に寝てしまっていた。うん、予想通り。
あれだけ張り切ってたし、電池が切れたのだろう。
後で充電(どら焼き)しなければ。
「さっき、任しとけって言ってた気がするんだけど・・・」
「悪い。こういう奴なんだよ」
セリは張り切れば張り切るほどすぐに寝てしまう。なぜか長時間気張る事が出来ないのだ。
会った最初の頃はそんなこと無かったのだが、最近はよく寝るようになった。
「今魔物が出てきたらどうするの?」
「そりゃ俺たちでやるしかないだろ」
カイマンの背中に門は出せないので逃げる事は出来ない。かと言って今から戻るわけにもいかないし、そうなったら戦うしか無い。
でもギガント・ランプリー級の魔物が出てこなければ、俺たちでも何とか出来ると思う。
「言っておくけど私は戦力外よ?。川の上じゃ何も出来ないから」
「確かにハンマーだとな・・・」
チョコは近接特化ですと言わんばかりの巨大ハンマーを使う。本人曰く遠距離攻撃は持ち合わせていないとの事らしい。
昔なにかで、ハンマーで金属玉を打ち飛ばして遠距離攻撃してたのをみたな。同じことをしたら攻撃できるんじゃないのか?。
「現実的じゃ無いわね。打つたびに金属玉を消費するし、重いから多くを持ち歩けない。それにそもそも当てられないわよ」
ちょっと言ってみただけなんだから、そんな否定しなくても・・・。
「じゃあ、もしものときは俺が何とかするから、チョコはセリを起こしてくれ」
問題はセリが起きるかどうかなんだよな・・・。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
・・ん・・・・んん?、この匂いは・・・
どうやら眠ってた見たいやな。最近どうも眠とうてかなわんわ。
ウチ今してたっけ?・・・・、そや!、川渡ってる最中やったな。カイマンがいい感じに揺らしてくるから寝てしもたわ。
でも、こうして移動してるって事は今んとこ何も無いみたいやな。
寝てる間に襲われてたら危なかったわ。
「お、セリ。起きたのか?」
ウチに気付いたススムが声をかけてくれる。・・んん?、口が動いてんな?、なんか食べてるんか?。
「ああ、今ーー」
言わんでもええ。うちの嗅覚をなめたらあかんで!。
どら焼き食うとるやろ!!
「・・・よく分かるわね。あ、ススムもう一個頂戴」
ふふん!。ウチにかかればおかしを当てることなんて造作もないで!。
特にどら焼きは絶対外さへん。
「そりゃあれだけ食ったらなぁ・・・。無駄に鼻利くし」
無駄は余計や!。
まぁええ・・。で?、ウチの分は?
「?、もう無いけど?」
・・・・・
で?、ウチの分は?
「だから無いって。今チョコが食べたのが最後だし・・・」
・・・
・・・・
・・・・・
何やてぇー!!!!
「無駄にためるわね・・・」
「多分本能が理解したくなかったんだろ・・・」
ちょい待ちーや!、ウチのどら焼き無いってどうゆうことなん!?。
2人でウチの分も食べたんか!!?。
ウチの・・・、ウチのどら焼きをぉお!!
あかん!、感情が抑えられん!!
「ねぇ・・・、なんか化けそうなんだけど?。大丈夫?」
「さぁ?」
なにのん気に喋ってんねや!!
ウチのどら焼きを食べといて・・・、覚悟はできとんのやろなぁあ!!
今なら“顕現”使うのもやぶさかではないで!。どら焼きの恨みは恐ろしいんや!!。
で?、どっちが先にやられたいんや?。ウチの理性が残っとるうちに選ばしたる!。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
セリが状態異常(激オコ)になりました。
さてどうしようか・・・。
なんか半分理性が飛んでるように見えるから、ちょっとやばいかもしれない。
チョコも平然を装ってるがかなりビビッてるようだ。手が震えている。
しかも困ったことにセリは盛大に勘違いしている。
俺たちはセリのどら焼きを一切食べてない。
こうなることは分かってたので、そんな危険なことはしない。
じゃあ何で無いのかって?
そりゃセリが食べたからだ。
匂いで起きるかなと思って置いたら、寝ながら食べやがった。そして食べ終わったと同時に起きて勘違いしだしたのだ。
口の周りにべったりと餡子がついてるのですぐに気付くかと思ったんだが、まだ気付かない。
「言っておくけど、お前の分はーーー」
『わっ!?』
説明しようとした時、驚いた突然カイマンが大きく揺れる。慌ててカイマンの背中に掴まる。チョコを見ると同じようにして踏ん張っている。
セリは・・・、あれ?、居ない!?
ボチャン・・・
同時に何かが川に落ちた音がする。
・・・確認するまでもなくセリだな。
「ねぇ!、セリが落ちたわよ!!。どうするの!?」
「放っといても大丈夫だ。それより・・」
この揺れの原因を確認しないと。
「カイマン!、どうした!?。大丈夫か?」
『は、はい。僕は大丈夫ですが・・・』
カイマンが前を向く、そちらを見ると大きな鋏が川から飛び出している。
マッドロブスター・・・ではないな。あいつの鋏はもっと丸かった、あんなに尖ってはいない。それに大きさが全然違う、あの鋏ならカイマンの首も挟めそうだ。
「なんだありゃ?」
「この川で鋏を持つ魔物・・・、もしかしてハッサミー!?」
ハッサミー?
なにその名前、適当すぎない?。って、それどころじゃないな。
ハッサミーが川から徐々に現れる。
うーむ・・・
勝てる気がしないなぁ・・・。




