第73話 スネークス・リバー
無駄に川幅が広いスネークス・リバーが眼前にある。
対岸が遠すぎてよく見えない。流れがあるから川なんだろうけど、本当に川かこれ?。
いくらなんでも広すぎる気がする。
カイマンに乗っても昼までには向こう側に着きそうにない。
仕方ない、今日のお昼はもしも用に携帯している菓子パンになりそうだ。
「カイマン来てくれ」
使ったことのなかった“召喚”でカイマンを呼び出す。、目の前が光ったと同時にカイマンが現れる。あ、すまん。食事中だったのか。
『あ、あの・・・もう着いたのですか?。それに今のは召喚・・ですか?』
「ああ・・・。その、すまんな。食事中とは思ってなかった」
朝食の肉を咥えたまま、固まっているカイマンはまだ状況が良く飲み込めていないらしい。かろうじて召喚されたのを理解しているくらいだ。
しまったな、先に念話で呼んでいいか聞くべきだった。初めてだし許して欲しい。
カイマンには事前に乗せて欲しいの頼んである。だが、街の中を歩かせるわけには行かないので川岸に着いたら呼ぶと言っておいたのだ。
その際、せっかくなので“召喚”を使ってみようと思ってたのだが、そういやカイマンには言うの忘れてた。
「ちょっと休憩するからゆっくり食べてくれ」
俺たちを待たせていると思い、急いで食べようとするカイマンに言って、その場に腰を下ろす。
川上では何があるか分からないし、今のうちに水分補給などを済まさねば。
『む?、ススム、なんか来るで!』
「何?」
セリが川の方を向いたと同時に、大きな水しぶきが上がる。あ、なんかデジャヴが・・。
水しぶきの中からギガント・ランプリーが現れた。
「あの時の奴?」
『見たいやな。ウチの噛んだあとあるし』
それは何処にあるか分からないが、やはりあの時のヤツメのようだ。
「・・・ス、ススム。・・・あれって・・・」
『僕のお肉・・・』
ギガント・ランペリーに気付き、慌てて俺の後に隠れるチョコ。
そして川の水がもろかぶりしてカイマンの朝ごはんは流されていった。
『何の用やろうなぁ?』
「さぁ?、大方お前の気配でも感知してリベンジにでも来たんじゃないか?」
『アイツはそんなにアホちゃうで?。まぁそやったら返り討ちやけど』
「ねぇ?、なんでそんなに落ち着いてるの?」
落ち着いてるのはセリがいるからだし、今断ってるのが地の上であるから逃げようと思えば逃げられるからかな。
セリが負けることは無いだろうし、おそらく逃げる必要はないけど。
『で?何しにきたんや?。ウチらは向こう岸に行くだけや。何もせぇへんかったらこっちからは何もせん』
現れただけでじっとしているギガント・ランプリーに向かってセリが念話を飛ばす。
ギガント・ランプリーは俺たち全員を見た?後、水しぶきを上げて川の中に消えていった。
セリの言葉を理解したのか良く分からないが、こちらに危害を加えることはなさそうだ。
最初に会った時のような殺気を感じなかったし大丈夫だろう。
「僕のお肉・・・」
・・・・・
今はカイマンから殺気を感じるな・・・。
「え?、もう帰ってきたのですか?。もしかして何かあったのですか!?」
「いや、特には・・・」
急な帰宅にナギが慌てる。
カイマンの肉を取りに家に帰っただけです。
あのままだと渡ってる最中にカイマンが何するか分からないし、なんか怖いからさ。
流された量の倍ほど渡しておいたら、大人しくなったけど。
そんなことをしていると、時計はもうすぐ11時を回りそうだ。
出発はもう午後からでいいや。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
午後、機嫌が直ったカイマンに乗り川の横断を始める。
カイマンの本来のサイズを見たチョコが、最初ちょっとパニックになったけど・・・。
今は慣れたのか、大丈夫なようだ。
移動も、今の所特に問題は起きていない。先ほどのギガント・ランプリーが指示したのか逆に不安になるくらい魔物が出てこない。
セリが言うには周囲に気配を感じるのでいないわけではないらしいが。
でも出てこないお陰で、のんびり釣りが出来るし、気にしないでおこう。
なんか今日、よく釣れるんだよな。ほら、またかかった。
「・・・またお前か・・・」
吊り上げた獲物を見て呟く。
大量なのはいいのだが、皆小さいヤツメなのだ。セリによるとミニマム・ランプリーらしい。
どうやら周囲にこいつらがいるせいで魚が寄ってこず、代わりにこいつらが餌を食べているようだ。
『もう止めといたらええのに』
「なんか俺もそんな気がしてきた」
かかったヤツメを川に放り投げる。何もしないとセリが言った以上、獲るわけにはいかない。
リリースするたびにチョコがもったいなさそうな顔をする。
「それより、よくそんなにのんびり出来るわね・・・」
「ん?、そうか?」
「そうよ!。ススムたちはこの川がどれだけ危険か知らないの!?。さっきだってギガント・ランプリーが攻撃してこなかったからよかったけど、されてたら私たち死んでたわよ!」
多分それはない。セリの方が強いからな。
ギガント・ランプリーもその辺りは分かってたから攻撃してこなかったはずだ。
チョコは前にギガント・ランプリーたちのせいでこの川を渡るのはほぼ不可能だって言ってたし、危険って多分その事何だろうけど・・・。
それってランプリー達に船を壊されるからダメなんだろ?、俺たちはカイマンに乗っているので大丈夫だ。・・・多分。
それに今は魔物に襲われてるわけでもないから、そんなに緊張することではないと思うんだが。
「魔物に襲われてからでは遅いと思うのだけど・・・」
「かもしれないけどな。セリたちが居るし、襲われてからでも対処できるだろ」
前に襲われたときはかなり焦ったけど、今回はセリも起きてるし大丈夫のはずだ。
それを聞いたチョコははぁ・・・と大きなため息をつく。
どうやら何を言ってもダメだと諦めたらしい。
『チョコや、何が来てもウチおるさかい大丈夫や!。戦闘はウチに任しとき!』
セリが無駄に張り切っている。
なんか嫌な予感しかしない・・・。




