第66話 準備期間②
「この辺?」
「そうね。その辺りだと良いかも」
「私もそこで大丈夫です」
一昨日採ってきた復元樹の植える位置を決める。日の当たり具合などを考慮して工房の裏手に植えることにした。今回は10本だが、今後よっては増えることも想定されるのでスペースの余っている工房の裏手はちょうどいい場所だったのだ。
ちなみに1日たっているのは、筋肉痛で昨日動けなかったためである。正直今も痛いがこのままずるずると放置するのも良くない。
一度放置したら、やらなくなるのが目に見えている。
ナギとチョコの了解も得たので、カイマンと2人で掘り始める。森と違い、土が軟らかいので掘りやすい。それに根を傷つけずに掘ってた昨日と違って、木が入れば良いので気にせず掘れるから気分的にも楽だった。
チョコはこの後、グレート級のオークションがそろそろ始まる頃なのでそれに参加してもらう。
参加と言っても、どれ位の値段で落札されたのかと、誰が落札したのかを見てきてもらうだけだ。
出品者である俺が行くとめんどくさい事になりそうだとチョコが前に言っていたので変わりに参加してもらった。
ナギの予定は特にないのでセリを呼んできてもらうようにお願いした。本人は手伝うと言ってくれたが、このペースだと午前中に終わりそうなので大丈夫だと返す。
それよりアイツはまだ起きてきていないほうが困る。復元樹は収納空間の中なのでセリが出さないと何も出来ない。
セリの奴、その日旅をしないと分かってると、朝起きてこないんだよな。
『旦那さん。こっち終わりました』
「早いな!。こっちはまだ二つ目だぞ」
さくさく掘っていたので意外といい勝負かと思ったのだが、楽になったのは向こうも同じで、振り向くとすでに終らせていた。
本来のサイズに戻ってるので当然といえば当然か・・・、そもそもカイマンといい勝負が出来ると思ったことが間違いだったよ。
カイマンには悪いが、こっちの分も手伝ってもらう。作業を見ていると、一掘りで植えるのに必要な深さを掘っていた。後は植える木に合わせて回りを広げるだけですむので実質一掘りで終了だ。
そのやり方には勝てないわ。
一回目カイマンに掘ってもらって、俺が大きさを調整したほうが早かったな。今更だけどさ。
結局ほぼカイマンにやってもらって完了だ。さて後はセリを待つだけだな。
すぐ起きてくれればもうそろそろ来るはずなんだが、一向に来る気配がない。
『姐さん。来ないですね』
「だな・・・。ちょっと呼んでくるわ。悪いけど、見張りをお願いしても良いか?」
『大丈夫です』
大きな穴が10箇所に開いた状態で離れるわけには行かない。フウ辺りが走り回って落ちるかもしれないからな。
カイマンに見張りを任せておけば大丈夫だろう。
俺は、セリを起こすために家に戻った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「はぁ・・疲れた・・」
「お疲れ様です。お茶入りますか?」
ソファに座るとナギがお茶を持ってきてくれた。お礼を言って受け取る。
掘るまでは良かったのだが、そこからが大変だった。
まず、セリが起きない。何度起こしてもダメで、お菓子の匂いでも起きなかった。仕方ないので寝てるセリをそのまま現場まで運び庭の上に転がしておいた。
1時間もすると寝心地が悪くなったからか、やっとの事目を覚ました。またすぐ寝そうな雰囲気だったので先に復元樹だけを出してもらい、後は工房に置いておいた。あ、そういえばまだ置いたままだったな・・。
まぁ起きたら自分で戻ってくるしほっといてもいいかな。
その後はカイマンに持って貰いつつ、一つ一つ植えていく。ちょっと木の間隔が狭かったので再度掘り直したりして全部植える。掘り直していたので、思ったよりも時間が掛かってしまった。
森で抜く前に間隔を測っておくべきだったかな?。
そして最後に土を戻して埋め直しをしたのだが、これが1番疲れた。流石のカイマンも簡単に戻すことが出来ないので2人で必死になって戻した。最後は結局、途中から様子を見に来たナギにも手伝って貰って終わらせたけど。
当分はやりたく無い。
「ただいまー」
ボケーっとしていると玄関からチョコの声がする。
もうそんな時間か・・・。
行く前に午後3時前には帰っていると言っていたのでナギが迎えに行って貰っていた。チョコには権限を与えていないので門を自在に出せないからだ。
俺が門を出すと森の中に繋がるので俺は行けない。
門は出した本人がそこから家に戻ってきた場所で固定される。だからその人が中から門をだして出るときは、その場所に戻るだけだ。
だが家から出るとき、他の人が出した門を潜って出た後、再度門を出して帰ろうとすると門の場所が更新される。
今俺の門の場所は復元樹を採った森の中で、ナギの門の場所がチョコの家の中になっている。だから現在、俺とナギが居ればチョコの家と復元樹の場所まで“旅の宿”経由で擬似転位できるのだ。
だから俺は復元樹を採りにくることが出来た。簡単に街まで帰れるからね。
もし間違ってナギが森の中で門を開くと、また街までの移動が必要になってしまうので注意が必要だけど。
「ススム、見てきたわよ」
「どうだった?」
「金貨2万枚で落札されたわ!!。かなり盛り上がって、値段がだいぶつりあがったわね。買ったのは・・・、首都で有名な実業家でお金は既に払ってもらったらしいから、明日にでも取りに来て欲しいってテットさんが言ってたわ」
「あ、そう?。分かった。」
「・・なんで驚かないの?、2万よ2万!!。普通驚くでしょ!」
そうなのか・・・?、チョコは興奮してるけど、それってどれくらい凄いのだろうか?
まだこっちのお金の価値がよく分からないので凄さが分からない。
あと手をぶんぶんしてると子供みたいだぞ。
とはいえお金に関しては前から少し考えていた。
市場で見たり買ったりした物と、その物の値段から、大体の価値を推測してみる。
その結果、こちらの通貨である金貨、銀貨、銅貨はそれぞれ1万円、千円、百円位だと推測できる。
だがその推測だと金貨2万枚は2億円ってことになるんだよなぁ・・・。そう考えると俺の推測が間違ってる。さすがに2億円はありえないし。
「実際、金貨2万あれば何が出来るんだ?」
「首都の一等地に家を建てられるし、この街だと家が数軒買えるわね。どう?、一軒買っとく?」
家が買える金額なのか・・・。しかもだけど正直要らない、この家があるからな。
しかし、一等地に家建てられるってやばいな。
前に東京の地価が平均100万超えたと別件で見た事ある。1坪330万円くらいだ。仮に50坪だと1億6500万円だな。
・・・・・
うん、2億円ありそうかも・・・。
とりあえずこの家の倉庫に貯金しておこう。多すぎて使えるか!
・・・まぁ使う時が来るかも知れないけどね。
そんな大金を急に貰っても使い道が分からないし、放置だ!。
「あ、そうそう!。テットさんが復元樹余ってるなら売ってくれって言ってたわ」
「1本で大体金貨100くらいかしら?」とチョコは言っていた。
うん、ごめん今お金要らないし、当分掘るのはやりたくない。
お金要らないなんて初めて思ったな・・・。
仕事の無い休日の方が忙しい・・・。何で?




