第65話 準備期間①
ドスゥゥウン!!
大きな音を立てて木が倒れる。その倒した木をセリの収納空間に放り込り込む。
これで10本目だ。
「お疲れ様。とりあえずこれくらいでいいかな」
『取り過ぎちゃうか?』
『つ、疲れました・・・』
一緒に居るのはセリとカイマン。今日は2匹と復元樹を取りに来た。
せっかく庭にスペースが出来たんだから数本植えておこうと思ったのだ。それに成り行きとはいえ工房も建てたし、木材を加工してみたい衝動もある。
というのは俺の理由。
あったら色々便利だからとりあえず欲しい。
というのがナギとチョコの要求。
欲しいからちょっと採ってくると言ったら2人も欲しいと言い出したので多めに取るハメになった。
最初は2、3本位にしようと思ってたんだけどね。
ちなみに今いるのは、前にカイマンに初めて乗っていた場所だ。この辺りには復元樹が大量にあるとカイマンが言っていたので戻ってきた。
来た道をそのまま戻ってきたので、スネークス・リバーを上って来たわけだが、移動の最中ランペリーたちは1匹も出てこなかった。
ただ、セリたちによると常時見張られてはいたようだけど・・・。
『で?、これどうするんや?』
最後の復元樹を収納空間に放り込んだセリがめんどくさそうに聞いてくる。労働させたので若干ご機嫌斜めだ。
「家に帰って植えるんだけど?」
『え?、また掘るのですか!?』
「ああ、そうなるな」
『うう~・・・』
カイマンがげんなりしている。疲れているのが目に見えてわかる。
それもそのはず。彼には俺たちをここまで運んで貰い、かつ復元樹の根本をずっと掘ってもらったのだ。いくらギガント級でも疲れが溜まるだろう。
「さすがに今日はやらないぞ。俺もしんどいし」
復元樹一本掘り起こしただけでこれだけしんどいんだ。残り9本を1匹だけで行ったカイマンの疲労は大きいはず。さすがに今日はここまでだ。
日も傾き始めてるし、そろそろ帰らないと真っ暗になる。
さっさと門を潜り、家に戻ってきた。
「今日はお疲れ様。これはお礼だから好きに食べてくれ」
セリにはお菓子の詰め合わせ。
どら焼きを多めにし、中の餡子の種類を色々変えておいた。後は他の食べやすいものをセットに点けておいたが全部甘いので問題ないはずだ。
カイマンには好物の生肉を渡す。出来るだけいい肉にしたのだが、カイマンは肉なら何でも食べるので、鳥、豚、牛の肉をそれぞれ出しておいた。
『え、ええんか!?。こんなに食べてええんか!!?』
『生肉セット!?。貰ってもいいんですか?』
「かまわないが、夕飯もあるからほどほどにな。カイマン、もし食べきれないなら冷蔵庫に入れるから、ご飯のときにでも渡してくれ」
『大丈夫です。全部食べます!』
好物を用意したので、2人のテンションは爆上がりだ。さっきまで疲れてたんじゃなかったのか?。
後、カイマン。急いで食べなくていいからな。
目の前の物しか見えてない2匹はそのまま放置して、そのまま工房に向かう。
木を植えるとこを確認するためだ。主に工房で使うと思うので、その近くに植えたほうがいいだろう。
とはいえ夕方なのでもう辺りが暗い。明日にしたほうがいいかな?。
ん?、工房の電気がついてる、チョコが居るのかな?。
「あ、ススムさん。お帰りなさい」
「ススム。木はあった?」
ナギもいたか。2人して何をしているんだろう。
今日は服を見に行くとか言ってなかったか?。
「服は見てきたんだけど・・・、どれもイマイチだったわ。前までは気にしなかったんだけど、これ着たらねぇ・・・」
「そうですね・・。肌触りとかをどうしても比べてしまいます。そうするとこれ以外は・・・」
2人はそれぞれが着ている服を見てため息をついた。タンスから出した服の素材に慣れてしまったり、知ってしまったせいで、売ってあるものが劣って見えるらしい。
そのせいか、見た目はいいのだが着るにはちょっと・・・状態らしい。
「じゃあ何も買わなかったのか?」
昨日換金してきたお金を2人に渡しておいたんだが、この様子だと殆ど使わなかったみたいだな。
「一応、見た目が気に入ったのを買ったわ。けど帰って着てみるとやっぱりねぇ・・。それで自作できないかと思って」
2人は自身の気に入った服と全く同じ服を、こっちの素材で作ろうとしていたらしい。ただ綿や絹などの素材がないのでどうしようかと悩んでいたようだ。最悪今ある服をカットして使うつもりだったらしい。
俺は2人が買ってきた服を見て、
「そんなことしなくてもタンスから出せるだろ?。イメージさえすれば出るんだから」
“旅の宿”で物を出すのに必要なのはイメージだ。ある程度の知識でもイメージすると簡単に出てくれる。だから出したい服と着心地をイメージすれば2人の満足いく服がだせるんじゃないか?。
チョコにはしてないが、ナギには自室のタンスから好きな服を出せるように権限を与えている。やれば出来るはずなんだが。
「「あ!」」
忘れてたみたいだ。二人して今思い出しましたのような顔をしていた。まだ試してなかったのか。
「す、すぐ試してきます」
そう言って、1つの服を持ってナギは飛び出して行った。
俺は二人の買ったと思われる服の1つを手にとって見てみる。ピンクメインの服でなんか子供っぽい。
大きさからしてチョコのかな?。本人と見比べてみると大きさ的には丁度良さそうだ。
「一応言っとくけど、それ・・フウのだからね?」
「まだ何も言ってないぞ・・・」
ジロリと睨まれ、目を逸らす。・・危なかった、これはフウのだったのか。
2人で買いに行くって言ってたので、全部2人のかと思ってた。
「そんな訳ないでしょ。一応みんなの分を見てきたんだから」
「みんなの分?」
「そうよ、といっても魔物組は服を着ないから、私たち4人分だけだけどね」
「てことは俺の分もあるのか?」
「あるわよ」と言って、チョコが取り出したのは黒色のマントだった。いや、ポンチョかな。どちらにしろ動きにくそうな第一印象を受ける。でも暖かそうだな。
「これね・・、ナギがススムにって選んだやつなの」
渡されたので、軽く肌触りをみてから着てみる。思ったよりも軽く暖かい、だがやはり動きづらいな。
旅をするので、機動性を重視した服の方が良かったがわざわざ選んでくれたのでそんな事は言わない。見た目も悪く無いからね。
「似合うじゃない!。流石ナギね、ススムの事よく見てるわ」
「そうかな?、でも少し動きづらい・・・」
「慣れたら気にならないわよ。それにススムは気付いてる?」
「?、何が?」
「自分の服装よ。正直かなり目立ってるけど自覚ある?」
目立ってると言われてもそんな自覚は全くない。そもそも服なんて、着易くて、動きやすく、丈夫である地味目の色であればなんでもいいのだ。だから今まで気にしていなかった。
「今日も何度か聞かれたわよ。「あの変な服の人ってどこの人?」ってね」
「失礼な。どこが変なんだ」
登山やハイキングをするのに最適な服を選んで着てるのだ。そんな事はないはずだ。
・・・なんていっても通じないんだろうな。
「そうね。そもそもそのジッパー?がついてる時点でおかしいからね。だからナギはそれを買ったのよ。それを着ていればある程度は隠せるから」
近くにあった鏡で自身を見てみる。
マントで上半身は勿論、下半身もある程度隠れてる。
「確かに隠れたが、そんなに変だったか?。俺としてはこっちの方が変なんだけど・・・」
元々マントなんてつける習慣がなかったし、違和感しかない。
そもそも似合ってるのか?。
「似合ってるわよ。さすがナギね、ススムのこと良く見てるわ。それなら街を歩いていても気にならないわね」
?、よく分からないが似合ってるらしく、チョコからすれば問題はないようだ。
ならいいか。
まだ変な感じだけど、ちょっとしたら慣れるだろう。




