第58話 工房を作ってみた①
俺とチョコ、興味本位でついてきたアンダルシアは家の庭のまだ何も無い場所に移動する。
工房を作れると口が滑ったせいで、チョコが「見せて」とずっとうるさいのだ。ナギに助けを求めたけど「自分でなんとかして下さい」と首を横に振られたのでこうして作るためにここに来た。
「一応言っておくけど、どんな工房かは俺も知らないからな。イメージと違っても知らないぞ」
「分かったわ」
取説で調べてみたけど、工房としか書いてなかったのでどのようなものが出来るか分からない。
形は、一応俺のイメージ通りになるはずなので、工房についてネットで調べておいた。
結局よくわからなかったけど・・・。家具作るのに必要な工具や機械ってなんだろう?
「何もなくても作業スペースが広ければ何とかなるから」
言っとくが出すだけだからな。何故使う前提なんだ?
言い方から推測すると、チョコはこの家に住むつもりなのだろうか。
そう思いつつもまずは工房設置を済ませてしまおう。話はそれからだな。
2人をを離れさせてから工房をイメージする。全体サイズは大きすぎず、けど大きいものを扱うかも知れないので天井高めでシャッター付きに。内装はネットの画像や昔近くにあった工務店から、加工機械と配置をイメージする。あ、家具なのでメインは木を扱うイメージだが、ソファなどに使用する皮の加工も出来る場所が必要か。
数分後、ごちゃごちゃ考えてたのでなかなかまとまらなかったが、なんとかイメージをして念じる。
目の前が一瞬光ったと思ったら工房が出来ていた。
ただ、当初イメージしたサイズの倍くらい大きいけどね。あれもこれもと付け足すとこの大きさになってしまった。大きさは家の3分1くらいかな。
見た目は、家と同じような和風の造りだが、入口の扉も大きく、シャッターも付いている。これで大きな家具を作っても出し入れしやすいし、木材などの出し入れもしやすいはずだ。
中は見てみないと分からないが、概ねイメージ通りだった。
「一応できたけど・・・。これでどうだ?、・・・って、居ない!?」
聞きながら振り向くとチョコが居ない。さっきまで居たはずなんだが・・。
『旦那・・・、あっちっす。』
アンダルシアに言われて工房の方を見ると、いつの間にかチョコが工房側まで行って見ていた。
ちょっとは我慢出来ないのか?。あ、入って行った・・・。
中からチョコの歓声が聞こえる。
『旦那はしっかりしてるって言ってたっすけど、あの感じ・・・、フウと同じように見えるっす・・・』
それは子供っぽいって事か?、それともわがままだと言いたいのか?。
『どっちもっす。・・・本当に子供じゃないんすか?』
「本人が言うにはな。でもしっかりしてるのは確かだから・・」
街に入るときや、冒険者組合の時は問題なかった。子供っぽい時って言えば今と会った時くらいかな。
あの時は子供扱いされて怒ってた時だったな・・・。
「もしかして・・・。興奮すると子供に戻るのか?」
『どう言う事っすか?』
「ああ、いや。大した話ではないんだけどさ・・・。冷静な普段のチョコは考えて行動出来るからしっかりしてるように見えるけど、興奮するとそれが出来なんじゃないかなって思ってな。もしかすると今の性格が本来の性格で、普段は抑えてるんじゃないかな?」
『それは・・・。見た目だけじゃなく、中身も子供って事っすか?』
「・・・まぁ、そういうことになるのかなぁ・・・」
さっきの様子を見る限り、どっちかっていうと子供に戻ってるような感じがするけどね。
『ならチョコの相手は旦那に任せるっす。僕はフウで手一杯っすから』
さらっとチョコの相手を拒否するとアンダルシアは家に戻って行った。流石に子供2人の相手はしたくないようで、その背中はフウの相手で大分疲れているように見える。
そのまま厩舎に入って行ったので、昼寝でもするのかな?。
そんなに疲れてるのか・・・?。フウに今度言っとくか。
「ススム!、早く来て!。中凄いわよ!」
そんなことを考えているといつの間にか後ろにいたチョコに連れて行かれる。見た目からは想像できないほど力が強いので抵抗できない。
あれ?、もしチョコが癇癪起こしたら止められないかも・・・。
そんな不安を抱きつつ、工房に入ると思ってたより中は明るかった。
明かりは点けてないが、天窓や周りの窓からの光でかなり明るい。この異空間は雨の日がないので昼間は明かり無しでも十分だろう。
「ねぇ、これって何なの?」
ひとつの機械の前に引っ張られる、これは木を切断するための機械だったな。台の中央に丸い鋸が付いていて電気で高速回転するタイプだ。
他にも穴あけ用や、溝切り用など色々な機械と工具が置かれていた。
一つ一つ聞いてくるチョコに、教えられる範囲で説明する。木材がないので実演はできないから、試し運転だけしておく。
この世界には電気設備が無いようで、チョコは何故動くか理解できなかったため、俺の経緯と機械について説明し、ある程度ではあるが理解してもらった。
「でもすごいわ。こんなの首都の工房に行ってもないわよ。本当に使っていいの?」
「いや、使っていいとは・・・」
言ってないとは言えない。別に使ったらダメなわけでもないのでまぁいいか。
とはいえ
「とりあえず、使うのは材料が揃ってからだな」
ということにした。
何のないのに動かして怪我でもされたら困るし。
あ、フウがここに入らないよう鍵をしておかないと。
その後2人で改善点や修正点を確認していると、気が付いたら日が暮れていた。
意外と直す点が多かったので時間がかかったようだ。ナギが様子を見に来て初めて時間がたっていることに気が付いた。
「ススムさん!。これどうやって使うんですか」
そして今、ナギが工房を作った時のチョコのと同じようになっている。
結局ナギにも説明することになり、晩ご飯が遅れた・・・。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「兄貴、ちょっといいか?」
「テットか・・。どうした?」
俺は山済みの書類を片付けつつ、組合長の私室に入ってきた弟に目を向ける。
弟は入ってきてそのまま応接用のイスに腰掛けた。
「今日、グレート級を持ち込んだ奴の情報を見せてくれ」
「ああ、アイツか・・・。ホレ、これだ」
俺は机の引き出しを開け、中の資料を渡す。今日、奴が登録時に書いた用紙と、登録内容を記載した管理用紙だ。
「用意がいいな・・。兄貴もか?」
「まぁ・・さすがにな」
イマオ・ススムだったか・・気になってそいつの素性を確認をしたのだが何一つ分からなかった。
グレート級を仕留めるほどの強さがあるのに、共和国全域を網羅する組合の情報網には情報が全くない。
「なになに・・・、出身地はニホン?。ははは、どこだよ」
テットは笑いながら、用紙を読んでいる。
私もニホンなんて街は知らない。共和国内にそのような街は無い。
つまり・・・、他国の街だという事だ。そしてススムは他国の人間という事になる。
この国は他国の人間が来ては行けない法律は無い。なので来るのはいいのだが、問題はススムの戦闘力が高すぎる事だ。
グレート級を倒すほどの戦闘力だと、その国の主戦力に数えられてもおかしく無い。そしてそんな人間を他国が簡単に手放すとは思えない。
そうなると他国がコイツを取り戻しに攻めてくる可能性もある。あくまで可能性だが・・・。
俺の予想を聞いたテットは少し唸ってから
「確かに・・・、グレート級とだと1匹でこの街は半壊するだろう。それを倒せるということはアイツ1人でこの街を半壊させる以上の戦闘力だということになるな。だが・・・」
「だが?、なんだ?」
「俺はアイツがグレート級を倒したと思えない。俺はリュックに入っていた契約魔物が倒したと思う。今回はあの魔物について聞きたくて来たんだ」
テットは渡した資料から、契約魔物に関する記入用紙を抜き取って見せる。そこにはセリと書かれた魔物の情報が書かれていた。
俺もその魔物はチラッと見たが、小さくあまり強そうには見えなかった。まぁススムとやらも強そうに見えないが。
「そう思う理由は2つだ。1つはアイツの見た目や、仕草から戦闘をするような人物では無いということ。もう一つはそのセリと呼ばれる魔物を見たことがないということだ」
「見たことがない?」
俺は魔物に詳しくないので分からなかったが、弟は魔物の解体士で魔物にも詳しい。その弟が見たことがないと言うのは珍しい。
魔物の種類を見ると[ツチノコ]と書いてあった。
「そのツチノコがどんな魔物かは知らないが、恐らく突然変異種であるのは間違い無いと思う。なら強くても不思議ではないが俺の手元には情報が全くない」
ここに来てようやくテットが俺を訪ねて来た理由が分かった。要はそのツチノコとやらの情報を集めて欲しいと言いうことだろう。テットはセリが倒したと思っているが、その種類が不明なため本当に勝てるのか確信が欲しいのだろう。
テットの言うことも可能性としては大いにあり得るので調べておいたほうが良さそうか・・・。
「分かった。ならツチノコについて各組合の情報を集めればいいんだな?。少し問い合わせしてみるよ」
「悪い・・兄貴」
そう言ってテットは部屋を出て行った。さて、どうしたもんか・・・。
もしススムとやらが倒したので有れば、この街が狙われる可能性があるので早々に出て行ってもらった方がいいかもな。セリの場合だとうまく使って素材の供給率を上げて行こうか。契約魔物だし言う事を聞くだろう。
俺は今後の方向性をそう決めた。




