第59話 工房を作ってみた②
「今日はごめんなさい。案内する約束だったのに・・・」
夕飯時、興奮が収まったのかしっかり者の大人モードに戻ったチョコは俺たちに謝ってきた。別に気にしてないから構わないぞ。明日でも大丈夫だからな。
「まぁ明日案内してくれたらいいからさ。気にするな」
「おじちゃん、明日どこ行くの?」
「今日着いた街の中をチョコに案内してもらうんだ。フウちゃんも来るか?」
「行く!」
「フウ?、もう探検はいいの?」
「まだだけど、たまには息抜きも必要だってシアが言ってた!」
アンダルシアの奴、休みたいからそう吹き込んだのか。
「でも案内ってどこをですか?」
「まだ決めてないけど・・・。どこか行きたい所でもある?」
行きたい場所か・・・。俺は食べ歩き出来たらそれでいいかな。
「私は服とか見てみたいです。あと食材とか」
「フウは面白い所!」
面白い所ってどこだよ・・・。難題だな。
「面白い所・・・。分かったわ。ススムは食べ歩き出来たらいいのかしら」
「ああ、レーヴィアの名物料理とかがあれば食べてみたい」
セリはそんな感じで明日の予定を立てる俺たちをジロリと見ると、
『ウチは今日食べ歩きしたかったんやけどな!』
「ずっと寝てたくせによく言うよ」
セリは俺たちが帰って来てもまだ寝ていた。起こすつもりは無かったのだが夕飯時の匂いで目を覚まし、おやつを食べ損ねたことに苛立っているようだ。
本人はおやつを俺達だけで食べたと思い込んでいるらしく、さっきから事あるごとに突っかかってくる。
言っておくが今日は誰もおやつ食べてなからな。
『嘘やな!。ウチの鼻はごまかせへん。全員からアイスの匂いがするで!』
アイス?。ああ、そういえばお昼のデザートに食べたっけ・・。
「セリちゃん。アイスはお昼に食べたの。だからおやつは食べてないよ」
『お昼やて!?。なんでお昼に食べたん!?』
「だって工房作るのに時間にかかるからおやつの代わりにな」
『おやつ食べてるやん!!』
だからデザートだって。
しかし、セリは納得いかないのか騒いでいる。
うーむ・・。お昼に起こしても起きなかったセリが悪いとはいえ、俺たちだけ食べたのも事実だし・・・。
仕方ない、用意するか。
「まぁまぁセリさん。落ち着いて」
ナギはセリを抱き上げるとそのままソファに置いた。あ、そのソファは・・・。
『落ち着けん!。ウチもアイス貰うまでおち・・スヤァ』
あー・・・、やっぱり。
セリは置かれた瞬間寝てしまう。
「やっぱりそのソファ、魔法具じゃないの・・・?」
魔法具が何か知らないけど、そのソファには何かある気がしてきた。
今度俺も寝転んでみようかな。
「これで大丈夫ですね。起こしたのに起きないセリさんが悪いのですよ。後から文句を言っても知りません」
戻ってきたナギはそう言った。
つまり、俺はこの後も用意する必要は無いという事か。
「ねぇ・・、さっきから言ってるおやつって何?」
「ん?、おやつか?。ただのお菓子だ。いつも決まった時間に食べてるんだが、セリはそのお菓子が好きでな、いつもおやつの事には煩いんだ」
「お菓子って、お昼に食べたあの冷たいのもそう?」
「ああ、そうだ」
「あれは美味しかったわ。セリが煩くなるのも分かるわね」
まぁあいつの場合、甘いものならなんでも煩いけどな、特にどら焼きとかさ。そういえば最近どら焼き出してないな、そろそろ暴れるかもしれないし出さないと。
「ねぇねぇおじちゃん。1つ聞いてもいい?」
そう思ってると、フウが質問してきた。なんだろう?
フウはチョコを指差し、
「この人誰?」
「「「え?」」」
昼食の時に紹介していなかったか?、そう思って記憶を探ってみるが・・・、あれ、記憶がないぞ。
お昼はチョコに見せて見せてと言われていた記憶しかない。
「フウはいつ紹介してくれるのかずっと待ってたのに・・・」
「「ごめんなさい」」
俺はフウにチョコを紹介してその日の夕食は終わった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
その日泊まらせて貰ったのだがなかなか寝れない。
用意されたベットに入ればすぐ寝れそうだが、ベッドやタンスを見ているとついつい時間が経ってしまう。
このままでは徹夜してしまいそうだ。水分補給してもう寝よう。こんなことしてるとさらに肌が荒れそうだ。
ここ最近、睡眠時間が短くなったせいか気になり始めた。
「はぁ・・・すごいわねこの家」
それにしてもススムに連れて来てもらったこの家は、私の今までの常識をどこか遠くに吹き飛ばした。
色々とおかしいのだ。最初、ススムが隠していたのも肯ける。
今つけたリビングの明かりひとつとってもおかしい。そもそも何故明るくなるのかが理解できない。今までの常識なら、明かりとは魔石の魔力を吸収して発光する光石が主流だったがこの家はそもそも魔石を使っていない。
ススムは電気だと言っていたが、それもよく分からない・・・。雷と同じだとも言っていたがそんなもの人間が扱える範疇を超えている。
ススムの世界では普通らしいけど・・・
「この世界でも導入できないかな?」
『無理やな』
わひゃい!
急に声がしたのでびっくりした。
声の方向を見ると白い蛇?がいた。もう夜遅いはずだがまだ寝てなかったのかな?。
『ちょっと寝過ぎたし、寝られんだけや』
「あれはちょっとじゃ・・・」
私の知ってる限りでも昼寝で8時間以上寝ている。寝られなくて当然のはずだけど・・・。
「それでどうしたの?」
『アンタがリビングに行ったし様子を見に来ただけや、悪いけどウチはまだアンタを信用しとらんからな』
ジロリ睨まれてビクッとする。見た目も喋り方も変だけどやっぱり魔物だ。睨まれるとそれなりの恐怖を与えてくる。
「私はまだ信用出来ない?」
『完全には、やけどな。ナギ達が大丈夫やと思っとるさかいある程度は信用してる。けど最初から完全に信用は出来んやろ?』
それはそうだ。何せ今日の朝会ったばかりだし。あれ?、もう昨日か。
私も完全に信用はしていない。していたら私の事を全部話している。
『それはアンタの“器用貧乏”の事かいな?』
「なっ!?、なんでそれを知ってるの?」
知ってるのは家族だけのはず。他の誰にも教えてはいない。
『ふん。ウチにかかれば相手の特異性を視ることなんて簡単や。アンタは他に“怪力”を持っとるやろ』
「う・・、そうね、当たってるわ。どうして分かるの?」
『それは教えられへんな』
意地悪な蛇ね。1つくらい教えてくれても良いのに・・・。
『アンタが信用できると判断したら教えるで。それでこの“器用貧乏”ってどういうもんなんや?』
効果までは分からないのね。でもまぁ持ってることがバレてるし、今更効果を隠す必要もないわね。
「“器用貧乏”はね、そのままの効果よ。何でも出来る代わりにどれも一般的で中途半端なの」
『でも何でも出来るんやろ?ええやん!』
セリはそう言ってくれるが、持ってみるとそんな良いものではない。何を作っても平凡なものしかできないのだ。生産系の有名家であるパゥワー家に生まれた私にとっては致命的な特異性だった。
何を作っても誰も褒めてくれない所か、いらない子扱いされた事もある。ウチでは生産能力が高くないとダメなのだ。
『すまん・・・。ウチ悪いこと言ったみたいやな』
どうやら顔に出てたみたいで、セリが謝ってきた。気にしないでと返しておく。
パゥワー家にとっては致命的な特異性だが、一人暮らしするぶんにはかなり有効だから。
『じゃあ、ウチはもう寝るわ』
少し沈黙が続いたあと、セリはそう言ってリビングを出て行こうとする。私もそろそろ寝なきゃね。
『チョコも早よ寝ぇや、お肌荒れるで』
「も、もう寝るわよ」
慌てて水分を取り、セリを追う。何で蛇が肌荒れを気にするのよ。
『肌荒れは雌の大敵やで、気にして当然やろ。このプリティボディを保つのも楽やないんやで』
「何よプリティボディって・・。って、何この艶々感!?」
『これが手入れの成果や!!。どや?つやつやしとるやろ?』
くっ・・・、確かにドヤれるほどの艶々感。羨ましい・・。
一体何をしたらこうなるのよ?
『何や知らんのか?。これはくりぃむのおかげや』
「く、くりぃむ?」
悪い顔でセリは言う。何よくりぃむって?
もしかして危ない薬品とかじゃないでしょうね?
『くりぃむはな、肌荒れだけやのうて乾燥肌、保湿、美白にも効果があるんや。1度つこうたら辞めれんようになんで?』
悪魔の囁きのように言ってくるセリ。本当に危ない薬品じゃないでしょうね?
『チョコはそんなくりぃむについて知りたいんか?』
「し、知りたい!」
『なら教えたる。ウチの部屋まで来ぃ』
言われるがまま、セリの部屋に入らしてもらう。そしてくりぃむを使ってしまった。
そして効果の虜になった。
最近、一話の字数がバラバラになってきた・・・。
すみません




