第57話 家具が好きだったのね
「ただいま・・・」
玄関を開けるとリビングからナギが出てきた。無事帰れていたみたいでよかった。
リビングの方からいい匂いがしてくるので、昼食の準備は殆ど終わってるみたいだ。
「おかえりなさい。買い取りは終わりました?」
俺はナギが抜けた後のことを話す。オークションまで1週間は必要だから、最低でも1週間以上あの街には滞在する必要がある。
その間に街を観光しようと思う。
「わかりました。あそこは亜人も居ますし、フウも連れて行けますね。ところで、何故チョコさんが居るのですか?」
ナギの目線が俺の後に向けられる。
そこには呆然として、突っ立っているチョコがいた。説明するのは面倒なので、何も言わずそのまま招いた。
そのため、門を潜った時からフリーズしている。
「すまん。ばれた」
『ばらしたの間違いちゃうんか?。どう見てもススムのせいやと思うで』
「まぁそうなるとは思ってました」
ナギはフリーズしているチョコの手を引いて家に招き、リビングのソファに座らせた。余り驚いてないところをみるに予想していたのだろう。
「ススムさんは隠し事が下手なので、すぐばれるんじゃないかと思ってました。チョコさん勘もいいですしね。でも大丈夫ですよ、“心意の眼"で見るかぎりチョコさんは嘘を言ってませんし、悪い人では無いと思います。」
テーブルの上には皿がチョコの分まで用意されているので予想というか確信してたっぽいな・・・。
俺、そんなに隠し事だめかな・・・。
「チョコさーん、ご飯ですよー」
ナギはチョコを揺らし意識を呼び寄せる。暫くして、はっとしたチョコが周りをキョロキョロする。
「ナギ!。ねえここどこなの?。私ススムに連れられて来たんだけど、何がなんだかなんかよく分からないわ」
「落ち着いてください、変ですが大丈夫ですので。・・・ススムさん、混乱しているみたいですがどう説明したんですか?」
ナギがジトッとした目を向けてくる。すみません、まだ何も説明してません。
見せたほうが早いと思ったのだが、結果的に余計に混乱させてしまった。
結局ため息をついたナギが、一から説明する。
チョコは最初混乱していたが、徐々に理解して最後には落ち着いていた。
「なるほどね。確かにこの家があればあの荷物で旅が出来るのも頷けるわ。そもそも最初あったときから軽装過ぎると思ってたのよ」
「まぁ持ってく物なんて水分くらいなものだしな。いつでも帰ってこれるから不要なものは持たないんだ」
そもそもリュックにはセリが入ってるから持てないが正しいんだけどね。
「いいわねそれ・・、好きなときに好きな場所からここに帰れるんでしょ?」
「まぁそうだな。好きな場所に出ることは出来ないけど」
「それできたら“転位”なんて要らなくなるわよ・・・。ちなみにここには2人で住んでいるのかしら?。ちょっと広くない?」
まぁ大きいのは認める。
元々広かったが、2階が増えて余計広くなった。最近は探検と称して留守番しているフウが、家の内外問わず歩き回ってるらしい。好き勝手動き回るので疲れると、お供しているアンダルシアがこの前愚痴ってた。
今もリビングにいないので敷地内のどこかで遊んでいるのだろう。
「いや、ここにはナギさんの妹のフウと、魔物のアンダルシアとカイマンがいるぞ」
『ウチがおらへん!』
「ああ、ごめん。後こいつもいるわ」
いちいち騒ぐなよ。ほらお前の好きなソファだぞ。
セリはソファに置くとすぐおとなしくなった。というか寝た。
その光景にチョコが驚く。
「なにそのイス。魔法具なの!?」
「違うぞ。セリがこのソファを好きなだけだ」
眠り効果などありません、ていうか魔法具ってなに?。
俺の疑問を無視してチョコはセリのソファに興味心身に調べている。・・・探してもなにもないぞ。
ひとしきり調べたチョコは何も分からなかったのかうーんと唸る。
「本当に何もないわね。でも作りが丁寧で座り心地も良さそうね・・・。ねぇ?、どこで買ったの?」
「買ってない。この家具も“旅の宿”の一部だからな」
「ホントなの!?」
信じてないようなので、ソファを一度消し再度出してみる。乗っていたセリが落ちて転がったけど、起きてないので放っておく。
チョコは「ほぉぉ」とさらに興味がわいたようで出てきたソファを凝視していた。
「他のも出せるの?」
「ああ!、一応この家にある家具は全部な出せるぞ!」
「すごいわね。もっと見せて!」
チョコの要望に応えて、テーブルやタンス、椅子など色々出してみた。こう喜んで貰えると出すのが楽しくなってくる。
チョコはタンスを開け閉めたり、椅子に座ったり立ったりと、俺が出したものを片っ端からチェックしている。目が輝いていてすごく嬉しそうだ。
「家具が好きなのか?」
「好きよ!、見るのも使うのも作のは・・・それなりだけど。私は家具って人が生きていく上でに欠かせない物だと思ってる。だからいろんな家具をみたいし、使ってみたいし、作ってみたい!」
「ああ、うん・・。そうなんだ」
軽く聞いたつもりだったのだが、予想以上の答えが返ってきた。チョコは興奮しているらしく、家具について熱弁している。
「ここのディテールが細かくてね!」
うん・・・、好きなのは分かったから。
家具は人の生活に欠かせないか・・・。確かに1つ落ち着く椅子があるとすごくリラックス出来るし、休めるのでチョコの言いたいことは分かる。
「そんなに好きなら家具職人にでもなったらどうだ?」
前にやりたい事を探してるって言ってたのを思い出す。
聞いてみるとチョコはちょっと困った顔をする。
「私もそう考えて家具工房に行ってみたんだけど・・・、入らせて貰えなかったの・・・」
子供だと勘違いされたらしい。まぁ見た目子供にしか見えないからな。鍛治など他の工房も皆同じ理由で入れなかったので他の事を探しており、その間のお金を稼ぐために冒険者をしていたそうだ。
「工房があれば家具が作れるのか?」
「少しならね。作り方がよく分からない物もあるから・・。どうしてそんなことを聞くのかしら?」
「いや工房なら作れるからさ・・・」
「本当に!!?」
チョコは駆け寄ってきて俺を揺する。しまった、言うんじゃなかった・・・。
「どこにあるの!?、早く見せて欲しいわ!」
だから落ち着いて欲しい。いらないと思ってたから工房はまだ建ててない。
はぁ・・・、仕方ないので工房の位置でも決めに行くかな。
そう思って出ようとした俺の腕をナギが掴む。
「先にご飯を食べてください!」
テーブルを見ると全ての準備が終わって、いつの間に来たのか・・フウも座って待っている。
どうやら俺とチョコ待ちのようだ。
すみません・・・すぐ食べます。




