第47話 乗鰐
フレイの説明を受けてから二日後たった。
雨が降っていたので旅は中断していた。
晴れたので今日から再開する。
門を出て、セリの力が封印されていた池に戻ってきた。次の目的地は森を抜けた先の街だ。
森を抜けるまでは元のサイズに戻ったカイマンに乗せてもらうことになっている。
本人からの提案なので遠慮せずのせてもらおう。
この森歩きにくいし。
今日はナギとフウも同行している。
歩きにくいし、暑いのでやめといたほうがいいと言ったが、ナギがどうしてもついて行くと聞かなかったからだ。カイマンが乗せてくれることになったので了承した。
フウは最初残るつもりだったようだが、カイマンに乗れると聞いた途端ついて来る事にしたらしい。
本人達は、現在カイマンの元サイズに呆然としてるけど・・・。
初めて見たら驚くよね。
「で?どこから乗ったらいいんだ?」
上れるところが無い。皮膚は岩肌でごつごつしてるので、上ろうと思えば登れるが、高いところでは数mあるので落ちたら危険だ。
ナギやフウにはさせられない。
『ウチが風で持上げるさかい、大丈夫やで』
元の体型に戻ったセリが補助してくれるようだ。"風生成"で1人ずつ浮かせて、カイマンの背中に乗せた。
進化したからか、威力も上がってるようだな。
カイマンの背中には岩ででこぼこしてるので意外と立ちづらいし、足の裏が痛い。
ちょっと乗り心地は悪そうだ。乗り物ではないから仕方ないけど。
『あ、あの・・、全員乗れましたか?』
おずおずしながらカイマンが聞いてくる。
こいつは図体はでかいのに中身は引っ込み思案でおとなしい。この見た目で、この喋り方にはかなり違和感がある。
俺は周りを見渡し、ナギやフウが乗ってるのを確認する。
「ああ、大丈夫だ。行ってくれ」
『待つっす!僕まだ乗っていないっす!!』
あ、アンダルシアを忘れてた。
そういえば一緒に来てたな。こいつは家の敷地から出たがらないので家に残ってると思ってしまっていた。
セリが風で持上げアンダルシアも無事乗れたが、本人はちょっと怒っている。
悪かったといってどら焼きを差し出したが断られた。いつもの癖でどら焼きを出したがこいつは人参だったな。
さすがに人参は持ち歩いてない。
『い、行って良いですか・・?』
「ああ、すまん。行ってくれ」
そう言うと、ほっとしたカイマンがゆっくりと歩き出す。俺たちが乗ってることを考慮して移動の反動が無い様に歩いてくれているが一歩一歩の衝撃が足の裏から伝わってきて痛い。我慢できないほどではないのでそのまま進んでもらう。
ナギたちは大丈夫かと思って見ると、ナギも我慢しているようだ。フウはテンションが上がっているので気にしてないみたいだが・・・。
ドゴォォン・・
カイマンは行く先にある木を、"岩生成"で作った岩のつぶてで折って道を作って進んでいる。
木を倒すたびにフウが喜んでるが、移動するたびに木が折られたら、いずれ全部の木がなくなるんじゃないのか?
『だ、大丈夫です。こ、この辺りの木は数日で元に戻る復元樹ですので』
「復元樹?」
「伐採しても、数日で一定の所まで成長する木です。木の根さえ残っていれば、何度でも復元します」
ナギが変わりに説明してくれるけど、なにその木、そんな木があれば地球の環境問題もすぐ解決できそうだ。ていうかそんな木だって知ってれば、折って進んだのに!
必死に木をよけて移動してたことを思い出すと悲しくなってきた。
「でも、その木いいな。一本でも良いから庭に植えられないかな」
「場所がありません。復元樹は永遠に生長する木ですので、定期的に伐採しないとどこまでも大きくなります。なので庭に植えるのはちょっと無理があるかと」
そうなのか・・・。
木材が何度でも手に入るから一本くらい欲しかったが、無理なものは無理なので諦め・・・保留にしよう。
「ところで、今は人間の街に向かってるんですよね。方角はこっちで大丈夫なのでしょうか」
木々で視界は悪いので、どっちが街の方角かわからない。カイマンは迷わず進んでいるが、わかってるのだろうか。
『だ、大丈夫ですぅ・・』
本当に大丈夫なのか心配になる。
もうちょっと自信持って言っていいからな。
怒ったりしないからさ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
カイマンに乗って進む事数時間。
皆、特にすることもなくのんびりしている。はしゃぎ過ぎたフウに至っては、疲れたのか寝てしまっている。
俺は特異性を確認している最中だ。色々な特異性があり、なんでもいいと言われるとなかなか決められない。
多過ぎて決められないのだ。
ナギも一緒に探してるが彼女は料理系、農業系、裁縫系に絞って探している。自信のやりたい事の特異性が欲しいらしい。全く決めてない俺とは大違いだ。
「あ、ススムさん。さっきの特異性をもう一回見せてください」
「お、おお」
スマホの使い方が分からないので、俺が操作してナギが見ている。画面が小さいので、二人で見るために互いの顔が近付くのはしょうがないが、そんなにくっつくなくてもいいんじゃないだろうか。
ていうかワザとくっついてきてないか?
嫌ではないけど変に意識してしまうから、少し離れてくれると助かるんだけど。
「食べただけで、食材が分かる特異性ですか・・。作った人に聞けば分かりますし要らないですね」
ナギはさっきからぶつぶつ言いながら画面に見入っている。どうやら集中しすぎて気になってないらしい。
『い、良い特異性はありましたか?』
スマホ画面が見れないカイマンが聞いてくる。
セリの自慢話を聞かされていたはずだが・・・、どうやら語りすぎて満足したセリが寝てしまったようだ。
真面目に聞くと長いから、適当にあしらってもいいからな。
「いや、色々あり過ぎてどれがいいかよく分からないんだ」
画面の右上に特異性の数が載ってるが、500は超えている。全部見てから選ぼうと思ってるが、多いのでなかなか全部見きれない。
『そ、そうですか。ぼ、僕は組み合わせられる特異性をお薦めします。』
「組み合わせ?」
『は、はい。ふ、二つの特異性を組み合わせて使う事です。ぼ、僕の場合、“鋼質化”と“大車輪”を合わせ転がって攻撃をします。こ、“鋼質化”で硬くなった状態で“大車輪”使って転がれば、当たった相手に多くのダメージを与えられます』
ああ、あの急速回転でのタックルか。
へぇ~、アレは“大車輪”を使って転がってたのか。
ちょっと“大車輪”について調べてみる。
大車輪
仮想の回転軸を作り体を回転させる。体の構造により回転出来る制限がある。
「体の構造によって制限がかかるのか?」
『か、関節を無視した回転は出来ないです。恐らくそれのことだと・・・』
ああ、なるほど。場所によって回転できる範囲があるのか。そりゃそうだよな、手がドリルみたいに回転する訳無いよな。制限がなかったら回転し続けてちょん切れるのか、恐ろしいな。
『ま、まぁ特異性としてはハズレですので・・・』
カイマンはそう言うが、ようは使い方が限られてくるだけで、使い方や使う人によって化ける特異性ではある。
実際カイマンのような使い方だと、かなり強い。
セリも弾き飛ばされてたしなぁ。
組み合わせか・・・。
選ぶのであればその辺りも頭に入れておく必要があるのか。
思い返すと、セリも色々組み合わせてたな。
俺の場合だと、“光生成”か“過去視”位か、“旅の宿”は完成され過ぎていて組み合わせる余地がない。
戦闘で考えると“光生成”だけど・・・、何とどう組み合わせていいか全く分からない。
『あ、ス、ススムさん。み、見えてきました』
カイマンが伝えてくる。
え?もう森抜けるの?と思ったがどうやら違うらしい。前方に見えてきたのは川だった。
あのアマゾン川のように曲がりくねってたあの川だ。
「川に向かって歩いてたのか?」
てっきり街に向かって歩いてたと思ってたよ。
『は、はい。か、川を下った方が早いので。そ、それに・・・』
「それに?」
『僕も街の方向知らないです』
・・・まぁ、そうだよね。
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