第38話 目的地
「取り乱してすみませんでした」
夕食時、ナギは俺とセリに謝る。
あの後、ずっとワニ皮の処理をしていたので、流石に軽く注意した。
手伝わされていたセリはおやつも食べられなかったし。
『ほんまやで!まぁウチは寛大やし許したるけど、次からは注意しいや』
「はい・・・すみません」
ナギはしゅんとしている。
逆にセリの態度はデカい。寛大てどの口が言うのか。
おやつ倍にするまで凄い怒ってたじゃん・・・俺に。
「ナギさんも反省してるし、セリもその辺にしとけ」
『しゃーないな』
はぁ・・・疲れるなぁもう。
まぁセリは明日になったら忘れるだろうし、放っといても大丈夫か。
問題はナギだな。
後でフォローしとかないと。
そう思ってると服の裾をちょんちょん引っ張られる。
見るとフウが口に人差し指を当てながら小声で言ってきた。
「お姉ちゃんはフウに任しといて」
? よく分からないが、フウがなんとかしてくれるか?
とりあえずよろしく頼んでおく。
「任しといて」
そう言ってフウはニッと笑った。
次の日、ナギはいつも通りに戻っていた。
一体何をしたんだろうか。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「でさ、フウが多分なんかしたんだと思うんだけど、何したと思う?」
『知るかいな。フウに聞いたらええやん』
「教えてくれないんだよ。ダメーって言われてさ」
『なら気にするだけ無駄やな』
そうだけどさ。
・・・・・
まぁいいか、ナギがいつも通りなら俺もそれでいいし。
それより今は先に進むことを考えよう。
ギガント・ロック・アリゲーターと戦闘した場所からセリが行きたい方向に向かって歩く。
ギガント・ロック・アリゲーターが逃げた方角と同じなんだが偶然か?
どうかは分からないが、木々が倒れて道ができてるので進みやすい。
出てきたときはどうしようかと思ったけど、結果楽できてるし良しとしようかな。
後はもう会わなければ完璧だ。
『ウチはまだ諦めてないで、もっかい会うて今度こそとどめ刺すんや』
「いや、会わないぞ。戦う意味はないからな」
『なんやてー!』と言うセリは放っとく。
お前はいいかもしれんが。俺はあの時死にかけたからな。
「この前の戦闘で下手したら俺死んでたんだからな。とばっちりで死にたくはないぞ。」
『むうぅ、そんなんあそこにいたススムが悪ーー』
「お菓子抜ーー」
『すまん、もう言わんし抜くのはやめてや』
まったく・・・なんで俺が悪いんだよ。
相手挑発したのも、戦闘し出したのも全部セリじゃないか。
・・・あれ? なんか思い出したらイライラしてきたぞ?
あのワニにだって何もしてないし、俺全然関係ないじゃん。
そんな俺の雰囲気を察知したのかセリがそわそわしだした。
『・・も、もうええやん。終わったことやし。な、な?』
・・・・・
はぁ、もういいか。
風景でも見て忘れよう、そうしよう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「で? どこまで行きゃいいんだ?」
ギガント・ロック・アリゲーターの逃げた道を歩いてるけどゴールが見えない。
セリが言うにはもう少しらしいのだが・・・
歩いてる途中もちょこちょこ魔物が出てくるが、どれもこれもワニだった。
ここはワニしか出てこないのか?
ミニマムやスモールが多いが、目的地に近付くにつれレギュラーなども出てくるようになった。
なんか目的地に向かえば向かうほどワニのサイズが大きくなってるんだが?
目的地ってワニの巣だったりしないよな。
ギガント・ロック・アリゲーターの逃げた方角もこっちだし、嫌な予感がする。
『くくく、そんなわけないやろー。考えすぎやで』
・・・・。
そうか、考えすぎか。
巣だったとしてもどうせ行くんだし、そう思うことにした。
後、言い方。
どっかの漫才師みたいな言い方やめろ。
『ん? あそこやな。見えてきたで』
「お、マジか。やっと着いたな」
数日かかるかと思ったがギガント・ロック・アリゲーターのおかげで1日でついた。
やはり木々がない道は進みやすいな。目的地まで続いていたのが気になるが。
『通り道やったんちゃう?』
「そうだといいけどさ・・」
そう願いつつ歩き、十数分後に目的地に着いた。
木々はなく、雨水が溜まった溜池が目の前に広がっていた。
『ここや、あの池の真中位になんかあるで』
「池ねぇ・・・、やっぱあいつらいるんじゃ・・・」
そういった瞬間、池から呼んだ?とばかりに大量のアリゲーター達顔を出す。
大きさはまちまちだが、そこそこデカイのもいる。
「やっぱり巣だった・・」
見える範囲でもざっと50匹は超えてるかな。
そんな現状にため息が漏れる。池が見えた時点で予想はしてたけど・・・
『安心せい。ウチが蹴散らしたるわ!』
「頼んだ。俺あっちで待ってるから」
戦闘モードのセリが飛び出していく。俺は池から少し離れてその様子を見ることにした。
一緒に戦ってもいいんだが、マッドロブスターの時と同じでセリに任した方がいい。
俺が傍にいると広範囲攻撃が出来ないようで時間が掛かるのだ。普段はセリも気を使ってその手の攻撃は使用していない。
だからこのような大量の魔物との戦闘ではセリ1人に任して俺は離れとくほうが早いし、セリとしても助かるそうだ。
前に戦闘について話した時、二人でそう決めた。
『くくく、そんなに集まったところでウチの敵ではないわぁ!!』
楽しそうだなぁ・・・
なんだかんだでセリって戦闘狂だよな。
セリを中心に落雷が落ち続け鎌風が四方八方に飛んでいる。
落雷の雷光と轟音がすごいが耐えられないほどではないし、鎌風はこちらに飛んでくることはない。
セリもこっちに極力影響が出ないよう気を使ってるようだ。
この辺りはさすがだと感心してしまう。相変わらず特異性の操作が上手い。
数分もすると辺りには動かなくなったアリゲーターしかいなくなる。
大半が池にいたせいか落雷で殆ど瞬殺されてた。
『ふぃー、終わったでー』
「お疲れさん。どら焼きでも食って休憩してくれ」
『マジで!?食べる食べるー!』
労い用のどら焼きを差し出す。
セリは食いつこうとして、寸前で止まった。
ん? いらないのか?
『・・・あ、後で今日のおやつから抜くとか言わん?』
「言わん。おやつはいつも通り出すから気にするな」
ふぅと安堵しつつ食べ始めるセリ。前の一件が相当効いてるようだな。
さて、俺はアリゲーターの回収をしなければな。
この前回収したのは全部ナギが持ってったので、補充しなければ。
そう思って、池に近づいたとき、バキバキと音がする。
・・・これは木が折れている様な音だな。
警戒していると、目の木々を押し倒してギガント・ロック・アリゲーターが姿を見せる。
奴にとってもここが巣だったようだ。
「セリ、食べるのは後にしろ」
俺は、後のセリに伝える。
だがセリはどら焼きに夢中だ。ギガント・ロック・アリゲーターに気付いてすらいない。
今度から外でどら焼き渡すのはやめよう。
俺はそう決めた。




