第36話 ギガント・ロック・アリゲーター
間違った方法に進んでいたので、無駄な時間を使ってしまった。
ちゃんと確認せずに進んだ俺が悪いのだが、セリももっと早く言ってほしかったよ。
方向転換し、今度はちゃんとセリに確認して移動する。指針がセリの感覚だけなので分かりにくい。
それにこの辺りは虫が多く、鬱陶しいので早めに抜けたいところだ。一旦帰って虫除けスプレーを使ったがまだ寄って来る。
セリに微風の障壁を展開してもらい。ようやく羽虫をシャットアウトした。
おかげで大分楽になった。
しかし降りる前までは殆どいなかったのに急に増えたな。今後、対策する必要がありそうだ。
「で、結局この先に何があるんだ?」
邪魔な葉をどけながら、セリに聞く。よく考えれば、目的や何があるのかすら聞いていなかった。
『それはウチにも分からんねや。なんか懐かしい気配がするんやけどなぁ』
「おい大丈夫か? 着いた瞬間襲われたりしないよな?」
チャロアイトの時はウインドドラゴンに襲われたし。
セリがいれば問題なさそうだが、強そうなのが急に出てこられるとびっくりする。
『大丈夫やろ。チャロアイトではないからなぁ』
「それならいいけど・・・」
楽観視はしないでおこう。
そもそも何があるかも知らないのに大丈夫って・・・、根拠あるのか?
『ないで!』
だよな。そうだと思った。
「それで? 距離はどれ位ありそうだ?」
『そやなぁ・・・このペースやと2~3日くらいちゃうかな』
思ったよりも遠い。
木々を避けたり葉を避けて進まなきゃいけないから移動もし難いし、虫鬱陶しいし、暑いし、・・・いいことないな。
あと、定期的に魔物出てくるけどワニばっかりだな。
移動も大変だしナギたちは来ない方がいいかもしれない。
草木が邪魔で、もし逸れても見つけられないのもある。フウは好き勝手移動しそうだしなぁ。
『そんな鬱陶しかったら、レーザーで前消しながら進んだらええんとちゃう?』
「そうしていいならするけどさ。さすがにダメだろ」
さすがに環境破壊はちょっとな。
でもそうしたい位ここは歩き難い。くうぅ!、俺の中で変な葛藤が始まる。
そんな葛藤を続けながら1時間ほど歩いた頃、少しおかしな場所に出た。
左から右へ一直線に木が折れてなぎ倒されている。折れた木の幹は太いもので直径1m近くあるし、風で折れたとは考えにくい。そもそもこの辺り、風がほとんど無いけど・・・。
地面に溝のようなあともあるし・・・、どう見ても自然現象じゃないよな。
『これは・・・なんか通った後やな』
「通った後? こんだけ木がなぎ倒されてるんだが、通っただけなのか?」
『そんだけでかい魔物なんやろ?』
通るだけで木々をなぎ倒すほどの巨体・・・。そう考えるとこの前のウインドドラゴンよりはでかいな。
・・・会いたくないなぁ。
『木の断面見る限りではここ通ったん結構前やし会うことはないやろ。ほっといてもええんちゃう?』
セリが楽観的に言ってくる。
やめるんだ!そういうフラグ立てんのはさ。それ言ったら後で絶対会うパターンのやつだから!
『? 何やねんフラグって・・・』
バキバキッ!・・・ズズゥン!・・
・・・・・遅かった。
遠くで木が折れるような音が聞こえる。しかも何故かこっちに近づいてきている。
「ほらぁ!、セリがそんなこと言うからこっち来たじゃないか」
『ウチのせい!? 関係ないやん!!』
立った傍から回収するとかやめてほしい。もうちょっと時間空けてくれてもいいじゃないか。
俺は木々を倒して現れたそいつを見てそう思う。
種族 :ギガント・ロック・アリゲーター
特異性 :鋼質化 大車輪 気配察知 水泳 水中呼吸 保護色 岩生成 怪力 岩質化
セリから送られてきた情報を見る。
ギガント・ロック・アリゲーターって、またワニかよ。あんまり魔物見かけないけど、見かける奴ワニしかいない。
いや、見たら分かるんだけど、表面全体が岩肌になっている。というか岩だな。
名前にロックってついてるくらいだから、岩仕様のワニということだろう。ただ問題はデカイ、ただただデカイ。地面這ってるのになんで目線が俺より上なんだ?
体長もどれだけあるのだろうか? 胴体で尻尾の先が見えないので分からないぞ。ギガントは伊達じゃない。
『ギガント級か? やりがいありそうやな』
向こうはこちらを様子見しているようだ。襲ってくるわけでもないし、威嚇もしてこない。
個人的にはスルーしたいが、何故かセリがやる気になっている。
・・・勝てるのか?こいつに。
体格差ではお前の数十倍はあるんだけど?
戦いたいなら止めないけど俺があっち行ってからにしてくれよ?
俺はゆっくりと後退し、セリより後に下がる。
向こうはまだ動かないけど何しに来たんだ? 何もしないなら帰ってほしいんだが。
『ふふん、ウチみても逃げへんのは褒めたるで! ただただでかいだけのワニごときウチの敵ではないことを教えたるわぁ!』
ドヤ顔のセリがギガント・ロック・アリゲーターを挑発する。何故その体格差でその自信があるのか教えてほしい。
ギガント・ロック・アリゲーターもセリの挑発にはイラッと来ているようだ。・・いや、ドヤ顔にか。
目つきが変わりセリを睨んでいる。
『いくでぇ! 先手必勝やぁああ!!』
セリが吼えたと同時に鎌風を飛ばす。しかしギガント・ロック・アリゲーターは避けもせず、鎌風を受けた。見た限りダメージはないので、やはり防御力は高そうだ。
ギガント・ロック・アリゲーターは鎌風を全て受けとめてから、ふふんと笑う。挑発のし返しだろうか。
『“鋼質化”か・・・、面倒な特異性持ちよってからに!』
“鋼質化”・・セリももってる特異性で、体を鋼に出来るやつだったな。
どれ位硬くなるのか知らないが、鋼だし鎌風で切るのは無理だろう。
セリが鎌風を乱発するがギガント・ロック・アリゲーターは涼しい顔をして・・あ、欠伸してる。
それがセリのシャクに触ったらしい。
『なら、これならどぉやぁ!!』
直後、豪音とともにギガント・ロック・アリゲーターへ雷が落ちる。セリがどうやら“雷生成”を使ったらしい。
少し離れていたからこっちにダメージは無いが、雷光を見てしまい少しの間目が見えなかった。
やるならやるって言って欲しい・・・。イライラしてる今のセリには言ってもダメだろうが。
「ぐぅぁあああああ!!」
直撃を受けたギガント・ロック・アリゲーターは流石にダメージがあったらしい。“鋼質化”しても雷ダメージは無効化できないようだ。
だが直撃して生きてるだけでも凄い。マッドロブスターは直撃しなくても即死だったのに。
『これも耐えるんか。でも効いてるみたいやし、終わるまで打ち込んだる!』
セリは鎌風から落雷に変更したようだ。
ギガント・ロック・アリゲーターに何本も雷が落ちる。
「ぐうっううう・・。がぁぁ!」
耐え兼ねたギガント・ロック・アリゲーターは軽く跳ぶと体を丸める。そしてそのまま急速回転し出した。
着地と同時に土煙を上げて突っ込んで来る。
俺に!!
「えー!?、何で俺ー!!」
慌てて一狩りハンターさんでお馴染みの緊急回避を行う。胴体着陸で地味に痛い。
避けたすぐ横をギガント・ロック・アリゲーターが通過する。
通行上の木々などお構いなしになぎ倒しそのまま走り去ってしまった。
後には轍のような溝となぎ倒された木々だけが残る。
『チッ、逃げよったか・・・』
セリがつまらなさそうにぼやく。
結局あのワニは何しに来たのだろう?




