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三国志  作者: 大田牛二
第二章 群雄割拠

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丁原

 董卓が少帝を保護したことをちょうどこの頃、泰山で兵を募っていた騎都尉・鮑信ほうしんが戻ってきた。彼は洛陽での事件を知ると、袁紹えんしょうにこう言った。


「董卓は強兵を擁しているため、やがて異志を抱くことでしょう。今、早く図らなければ、必ずや制されることになります。到着したばかりで疲労している隙にこれを襲えば、捕えることができます」


 しかし袁紹は董卓を畏れて兵を発しなかった。


「袁紹はこういう時の決断力がない」


 鮑信は呆れるようにそう呟いた。名家として知られ、人望を集めている袁紹のこの決断力の無さは致命的な欠点に彼には見えた。


「彼が時代の主導者になることはないだろう。しかし、董卓の世で生きたくはないものだ」


 鮑信は兵を率いて泰山に還った。


 洛陽に到着した時、董卓とうたくは并州の兵を有している丁原ていげんを執金吾に任命することで彼の心を掴もうとした。


 しかしながら丁原は董卓のことを嫌っており、そのようなことは余計なお世話というばかりの態度であった。


「おのれ……」


 不快になりつつも洛陽に入った時、歩騎は三千人を越えないぐらいしかいなかった。


「どうにか兵を増やしておきたいな」


 そこで彼は約四、五日おきに夜に乗じて秘かに軍(部隊)を営の近くに出し、翌朝、大いに旌鼓(旗と戦鼓)を並べて戻らせ、西兵がまた到着したように見せた。


 洛陽城内で実情を知る者はおらず、誰もが恐れた。


 暫くして、董卓は何進と弟・何苗の部曲を全て手中に入れた。


 この段階まで袁紹も袁術えんじゅつも誰もが董卓の見せかけに惑わされ、何もしないのだからだらしないことである。


「兵の数を増やしたが、やはり丁原が邪魔だな」


 特に丁原の下にいるという呂布りょふという猛将がいることは有名であり、その男を敵に回してまで戦をしようとは流石の董卓も思わなかった。


「そういえば、配下に……」


 董卓は呂布と同郷の李粛りしゅくを招いた。


「お前は確か呂布とは同郷であったはずだ。私は呂布を招きたいと考えておる。呂布は何を好んでいる?」


「呂布という男は勇猛果敢で、正に項羽に匹敵する武勇を持ち、容姿も整っている男と、良い部分の多い男ではございますが、ただ一点、どうしようもない欠点があります。名誉欲です」


「名誉欲」


「左様でございます。あの者は誰よりも名誉を求めており、己が他者よりも下にいることを好みません」


「よくわかった。ならば王朝の官位をやると言って、こちらに招け、いっそのこと丁原の首を持ってこさせろ」


「承知しました」


 李粛は呂布の元に密かに行き、彼に王朝の官位を丁原の首と引き換えに与えることを伝えると呂布はあっさりと丁原を殺した。そのまま董卓は丁原の兵を己の者にした。


「これは一体、どういうことでしょうか?」


 ちょうどこの時、呂布の元に并州から兵を集めてきた張遼ちょうりょう高順こうじゅんが呂布に問いかけた。


「丁原は王朝に謀反を起こそうとしたため、粛清したのだ」


 呂布は言葉少なくそう言った。


「丁原殿が?」


 張遼は丁原の人となりとしてそのようなことは無いと思ったが、ここで丁原を擁護すれば、呂布は自分を殺すだろう。


「承知しました。我らは今後、どうなるのでしょうか?」


「董卓様の元で私の配下として属すことになる」


 高順は特に言うことも無いようであるため、張遼は承知したと述べると呂布から離れた。


「我らはどうなるのか」


 張遼は不安そうにそう呟いた。


 董卓は兵を増やしたことでもはや己に逆らう者はいないだろうと考え、朝廷に示唆して、久雨(長雨)を理由に司空・劉弘りゅうこうを策免させ、自分が代わって司空になった。


 この強引な行動を誰も止めることはできなかった。


 ここまでの強引な行為で良い印象を持たれていないことぐらいは董卓も理解していた。そこである男を招くことにした。蔡邕さいようである。


 かつて蔡邕は朔方に遷されていたが)、大赦に遇って還ることができた。


 しかし王甫の弟に当たる五原太守・王智が、


「蔡邕が朝廷を誹謗している」


 と上奏したため、蔡邕は江海に亡命した。前後して本年で十二年になる亡命生活を送っていた。


 董卓は蔡邕の名声を聞いて招聘したが、蔡邕は病と称して官に就かなかった。すると董卓が怒って罵った。


「私は人を族滅できるのだぞ」


 蔡邕は懼れて命に従い、京師に入ってから祭酒の官に置かれた。


 一体、どういう扱いを受けるのだろうかと思っていた蔡邕は董卓にはなはだ敬重された。高第(成績優秀な者)に挙げられ、三日の間で三台を周歴(経歴)してから侍中に遷された。


 彼は意外そうに董卓を見た。


「どんな扱いを受けるのかと思えば……」


 明らかに董卓は悪人であると彼自身も思ったが、同時にこの男の不思議さにも気づいた。董卓は確かに乱暴であるが、人を尊重する心を持っている。ならばこれをどうにか政治に向けることができればと蔡邕は思った。


「それができるのは私ではないのか?」


 かつて春秋時代の名宰相・晏嬰は生涯を賭けて、斉の景公を教育した。同じように董卓を教育することが自分のやるべきことではないのか?


「董卓の悪を私が封じるのだ」


 彼はそう呟いた。





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