第73話【VSペロリスト23 世界で最も美しいプレイ】
お久しぶりです
↓前回まで
フリークダンス杯第一試合、エイリアンズVSペロリスト
前半バジリコの使うスナイパーキャラによるヘッドショットワンパンでペロリストが圧倒的リードで第一チェックポイントを制圧。
第二チェックポイントまで無理なく進んでいるかのように見えたが、エイリアンズのDPSウォーカー使うニンジャとアカリのフロッガーが攻撃的な防衛戦で対抗。
惜しくも第二チェックポイント制圧できず、攻守交代となった
攻守交代、エイリアンズによる攻撃が開始される。
少しの待機時間のうちに実況、解説陣は場をつながるトークをしていた。
いち視聴者である倉本夏海はコーヒーを飲みながら、試合の一部始終を眺めていたのだが、
「なんかすごいのはわかったけど、何がなんだかわからんかった」
と、率直な感想を思った。
ベータリンクスはスキルにリキャストは存在するが、回数が有限性であるタクティカルシューター系と比べると場面転換が激しい。
攻撃形のスキルは派手な演出が多く、プレイヤーは一秒として止まる瞬間がない。そのくせスキルやウルトのリソース管理が存在していて、射撃能力だけでは解決できない事象が多く存在している。マップは頭出しが出来るような遮蔽物がなく、壁を登ることは基本的にできない。
FPSの中でも特殊なジャンルに分類されるこのゲームは、系統で言うとエイム力を必要とするMOBAに近い存在だ。プレイヤーにも、観客にもゲームの理解度が求められる。
だが、その熱量は画面越しにも届いていた。
「ま、メイちゃそもがんばってるし、楽しそうだからいいっか~♪」
さて、画面の向こう側では攻撃に備えたエイリアンズメンバーが作戦会議をしているところが映っていた。
「いいよーナイスファイト。途中危ないとこ何っ回もあったけど、まぁ結果オーライとして切り替えてこう」
「切り替えるって言うなら、イチイチそんなこと言わなくてもよくなーい?」
「他の奴が言うならともかく、お前がそれを言うか!」
「勝てばいいのよ、結果が全てでしょ? ほら切り替えていこう!」
「この野郎……っ!」
ブワッとボイスチャット内で笑いが起きた。相変わらずアカリとメイの相性は悪い意味で良い。
ウォカーもエイリアンズに入ってからようやく理解したのだが、エイリアンズメンバーは時折盛大なケンカをすることもある。特にアカリとメイはしょっちゅうだ。
それでもチームはまとまっている。リッカーがイタズラ好きな精神性で、ネコプライドが大人な態度でい続けたりしたからかもしれない。
だが、一貫してこのメンバーには絶対的な価値感が存在した。
勝ちに行く。そのために全力を尽くす。
たったこれだけのことだが、そのあり方は何よりも信頼できるものだった。
リッカーは元プロとしての実績と実力を持ちながら、一つ一つの場面での細かいミスの修正を提案する。
アカリは試合のデータから勝率の高いキャラや戦い方を模索し、事前の戦略や対策と不測の事態に対するカウンターを用意した。
メイは別ゲームのプロであった経験から、決して諦めたり臆さない戦い方を証明し続ける。
ネコプライドは柔軟な性格で勝利に対する貪欲さがありながら、チームワークが悪くなりそうなときには必ず意見を言ってくる。
その包み隠さないところがウォーカーにとって心地よかった。
「さて、じゃあ次はこっちの攻撃な訳だけど、せっかくならアレを試してみるかウォーカーくん?」
「アレって前話してた大会のですか?」
「そうだよ。アルファ時代のあのクリップのやつ」
「え、本番でやるんですか? 全然練習してないですけどっ?」
「そりゃあそうだろ、奇襲なんだから。練習でやったらバレちゃうでしょ?」
アカリは冷静で徹底しているように見えるが、急な無茶を押し付けてくることがある。
それに困らされたことが何度もあった。
「失敗しても怒んないでくださいよ?」
だが、アカリは常にこう言うのだ。
「できるかどうかは問題じゃない。それは後でわかることだろ。今はやるかやらないかを聞いてるんだよ」
失敗よりも挑戦をすること。攻めるという選択肢を持つことを大切にする。
知らないチームの集まりだと、失敗ができないというプレッシャーから無難な選択しか取らなくなっていた。
だがこのチームは失敗があることを前提で動く。
そして解決策も準備している。
だから迷わず応えられる。
「――――やります。やってみたいです!」
「オーケイ。じゃあ一回やってみてダメならすぐに元の構成に戻すぞ」
「おォ、やるの? 懐かしいねェ!」
リッカーは嬉々とした声を上げて、チームメンバー全員がキャラ構成を変更した。
「私は具体的に何をすれば言いワケ?」
「ウォーカーの撃ち漏らしを殺して。まずは頭数を減らしたい」
「オーケイ」
準備完了のカウントダウンが終わり、リスポーン地点の扉が開く。
同時に、リスポーン地点を見据えた直線上。最初の防衛線でシールドを構えていたもちなの視界に映ったのは、親の顔より何度も見たことのあるキャラクタ―だった。
『パラディン合わせ対決来たぁあああああ‼ パラディンOTP対元プロDPSプレイヤーの対決です!』
元プロによる心的揺さぶりかとも思えるような、奇をてらったような作戦に対して、OTP歴三年のもちなはいたって平常運転だった。
「舐めやがって……ぶち殺す!」
FPSゲームにおいて、遠距離戦を行わない異端児同士の正面勝負が始まろうとしてた。




