【スモールフォレスト級 大型惑星間定期貨物船】
【スモールフォレスト級ってなにをするの?】
スモールフォレスト級は、地球と火星のあいだを行き来して、たくさんの荷物を運ぶ、とても大きな宇宙貨物船です!
人をたくさん乗せるセカンド・ホライズンとはちがって、こちらは「できるだけたくさんの貨物を、決まった時間で、安定して運ぶ」ことを大事にした船です。
運ぶものは、
医療品
機械部品
電子部品
工業材料
生活物資
など、いろいろです。
とくに火星では、遠くから運ばなければ足りないものもたくさんあります。
そのため、大型貨物船は、地球圏と火星圏をつなぐ、とても大切なのりものです。
見た目こそ客船ほど華やかではありませんが、宇宙の物流をささえる働きものなんだね!
【スモールフォレスト級のスペック】
名称:スモールフォレスト級
分類:大型惑星間定期貨物船
主要航路:地球圏―火星圏
全長:約400m
最大幅:約60~80m
乾燥質量:約80,000t
標準航行質量:約200,000t
最大航行質量:約250,000t
最大貨物搭載量:約150,000t
乗員:約30~40名
主推進:可動式AEドライブ・ナセル
主機関総推力:約12.5MN
通常巡航加速度:約0.05m/s²(約0.005G)
船体構成:MMR対応大型貨物区画、船橋・居住区、機関区、外部トラス構造
主用途:地球圏―火星圏の大量定期貨物輸送
【どうして「スモールフォレスト」っていうの?】
ちょっとふしぎな名前だね!
スモールフォレスト級の船体のまわりには、貨物区画どうしをつないだり、荷役設備や配管、放熱器などを支えたりするための、たくさんのトラス構造があります。
このトラスが、外から見ると林のようにたくさん立っているので、
Small Forest――「小さな森」
という名前になりました。
宇宙を飛ぶ、大きな鉄の森なんだね!
【どんな形をしているの?】
スモールフォレスト級は、セカンド・ホライズンのような大きな居住ドラムを持っていません。
見た目は、ずっと実用的です。
船首側には、船橋や乗員居住区、通信設備があります。
その後ろには、船の大部分をしめる大型貨物区画がいくつも並んでいます。
さらにその外側には、
荷役装置
配管
放熱設備
点検通路
支持トラス
などが取り付けられています。
そして船体には、向きを変えることのできるAEドライブ・ナセルが備えられています。
大きな貨物区画をいくつもならべ、そのまわりに鉄骨の森が生えている。
スモールフォレスト級は、そんな姿をした宇宙船なのです。
【どうして荷物をそんなにたくさん運べるの?】
そのひみつの一つは、「人のための空間が少ない」ことです。
セカンド・ホライズンでは、お客さんが何週間も快適にすごせるように、客室やレストラン、ラウンジ、病院、運動施設などが必要でした。
でも、スモールフォレスト級に乗っているのは、30~40人ほどの乗員だけです。
そのため、船の大部分を貨物のために使うことができます。
最大航行質量は約250,000t。
そのうち、最大で約150,000tもの貨物を積むことができます。
船そのものよりも、運んでいる荷物のほうがずっと重くなることもあるんだね!
【MMRってどう使うの?】
スモールフォレスト級の貨物区画は、ただの大きな箱ではありません。
それぞれが、MMRの作用領域として使える閉殻構造になっています。
むずかしい言葉だけど、かんたんに言うと、
「貨物区画と、その中にある荷物をまとめて、動かしやすくする」
ための構造です。
しかも、貨物区画ごとに別々《べつべつ》にMMRを動かすことができます。
荷物が入っている区画だけを動かし、空の区画は止めておくこともできます。
必要のないところまでMMRを使わなければ、電力や熱の余裕をむだにしなくてすみます。
大きな船では、「全部をいつも同じように動かす」より、「必要なところだけ動かす」ことも大切なのです。
【どうして船をひっくり返さないの?】
宇宙船は、目的地へ近づくとき、加速する向きを反対にして減速しなくてはいけません。
そのため、航程の途中で船体そのものを180度回す宇宙船もあります。
でも、スモールフォレスト級はちがいます。
全長約400m。
しかも、大量の荷物を積んだ船です。
こんなに大きく重い船体を、航海の途中でまるごと回すと、船体構造や貨物固定具などに余計な負担がかかります。
そこでスモールフォレスト級では、船ではなくAEドライブ・ナセルの向きを変えます。
航程の前半では、ナセルを加速方向へ向けて推進。
中間点の近くまで来たら、ナセルだけを反転。
そのまま船体の向きを変えず、後半の減速を行います。
船はそのまま。
エンジンの向きだけ、ぐるん!
大きく重い貨物船だからこその工夫なんだね!
【港ではどうするの?】
航海中に船体をひっくり返さないスモールフォレスト級も、帰りの便では船首を反対側へ向ける必要があります。
でも、その作業は荷物を下ろしたあとに行います。
到着する。
荷物を下ろす。
軽くなった船体を回す。
帰りの荷物を積む。
そして出発!
船の向きを変えるときには、宇宙港のタグボートに手伝ってもらうことがあります。
また、AEドライブ・ナセルの推力を左右で変えたり、少しずつ向きを変えたりして、自力で回頭することもできます。
重いときには、むやみに回さない。
軽くしてから動かす。
貨物船では、そんな考え方も大切なのです。
【もしこわれたら?】
エンジンの向きがわからなくなった!
スモールフォレスト級のAEドライブ・ナセルは、向きを変えることができます。
とても便利ですが、もし制御装置がこわれて、
「いま、どちらへ推力を出すのか」
が正しく確認できなくなったら、どうなるのでしょう?
そんなとき、スモールフォレスト級は、安全のために主推進器を止めます。
方向のわからない大きな力を出してしまうより、推力を出さないほうが安全だからです。
さらに、貨物区画のMMRも安全側へ停止します。
すると、軽く動かしやすくしていた貨物は、本来の質量へ戻ります。
船はとても重くなり、いつものようには動けなくなります。
でも、
「思っていた方向とちがう方向へ加速する」
よりは、ずっと安全です。
自力で安全に航行できなくなった大型船は、宇宙港や救難機関へ救助を求めます。
故障したときに「どう動くか」だけではなく、
「どう止まるか」
まで考えておくことも、安全設計の大切な仕事なんだね!
【火星工学メモ】
25万tの船を12.5MNで押すと?
物体の加速度は、
a = F ÷ m
で求めることができます。
スモールフォレスト級の最大航行質量を約250,000t、
主機関総推力を約12.5MNとして、
まずMMRを使わず、本来の質量のまま全推力を出した場合を考えてみましょう。
250,000tは、
250,000,000kg。
12.5MNは、
12,500,000N。
だから、
12,500,000 ÷ 250,000,000
=
0.05m/s²
です。
地球の標準重力加速度は約9.8m/s²なので、
約0.005G
になります。
一秒だけでは、ほとんど速くなったようには感じません。
でも、一日は86,400秒あります。
0.05 × 86,400
=
4,320m/s
つまり、約4.3km/sです!
実際の航海では、MMRの作動状態や船の積載量にあわせて推力を調整し、予定された加速度で航行します。
小さな加速でも、長い時間続ければ、とても大きな速度変化になる。
それが、惑星間航行の大切な考え方なんだね!




