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アイツがある日、突然嫁を連れて帰ってきた  作者: 川平直
家族に会いに行く▢

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第17話

「結婚の報告に明日、奥さん連れてそっちに帰るつもりだから」


 弟の俊介からの電話を友恵が受けたのは、十二月七日、雪の降る夜である。


 突然の結婚報告にはそりゃ驚いたが、俊介が自分からこっちに帰ってくると言い出したことの方が友恵としては衝撃だった。


 上京して以降、俊介が実家に帰って来た回数は両の手で足りる程しか無い。


 そんな俊介から連絡が有ること自体珍しいのにその上、自分から帰ってきたいと言うなんて。一体どういう風の吹き回しなのか。


 問いただして見るが、俊介ははぐらかすばかりではっきりとしたことを話さない。


 それは明らかに、何か探られたくない腹がある時のそれだった。


 本人に自覚は無いが、ああ見えて俊介は嘘をつくと言うことがあまり上手くない。


 言いたくないことがあるとはっきりとしたことは言わずに、はぐらかして逃げるのは俊介の昔からの癖だ。


 ただ逆にこうなってしまうと、何か言い逃れの出来ないような状況でもないかぎり、頑固に口を割らないのも昔からで、問いただしたいキモチはあったが、下手に追求してやっぱり帰るのを止めると、臍を曲げられるのも面倒だ。


 聞き出すのは諦め、いつ頃こっちに着くかなどの最低限の確認だけを取り、友恵は電話を切った。


 その後、同じ家に住む父の清吉せいきちにもその事を伝えるが。


「そうか」


 たったその一言だけだった。


 ニュースの流れるテレビから目を離すこともせず興味なさそうにただ一言だけ。


 そんなあまりにも淡泊な父の反応に、友恵は聞こえないように小さくため息を付いた。


 そうして翌日、俊介が帰ってくる予定になっていた日。また友恵の携帯に俊介から電話があった。


 何でも今晩は健一達の家に泊めて貰うことになったから、こっちに顔を出すのは明日になるとそんな連絡だった。


 言い出したのは多分、春ちゃんだろうなとか思いながら友恵はそれを承諾した。


 その日の夜、夕食の時だ。


「友恵、あれは今日じゃ無かったか?」


 清吉が急にそんなことを言い出した。


「あれって?」


「あれは、あれだ。ほら、お前が言っていただろう」


 そうは言われても、あれじゃ何のことなのか見当も付かない。そう思い、友恵が怪訝な顔しているとしびれを切らしたらしく。


「連絡があったと言っていただろう」


 そう言われて、ようやく何のことを言っているのか理解した。そういえば今日連絡があったとき伝えるのを忘れていた。


「俊介のことを言っているなら、今日は建一くん達の所に泊まるって。こっちに来るのは明日になるみたい」


 そう言ってあげると、清吉はまた「そうか」と一言。


 しかし今回のそうかは何処か残念がっているような、寂しそうな響きに聞こえるのは気のせいだろうか?


 まったく帰ってくるのが嬉しいなら、素直にそう言ってやれば良いのに。


 そう思うが、口に出したら意固地になるのは分かりきっているので、敢えて口に出すようなことはしない。


 俊介が高校卒業と同時に上京することを、清吉は反対していた。


 別にムリして家から出なくても、こっちの大学を出てから上京すればいい、その方が金も手間も掛からない。


 と言うのが当時、清吉がしていた主張だ。


 しかし俊介は頑として上京したいと自分の意見を譲らず、この頃からしょっちゅう清吉と言い争いをするようになった。


 そんな俊介に母は味方していた。二人が言い争いをする度に間に入り、父への説得もしていた。


 友恵も当時はどちらかと言えば賛成派で、俊介の上京に強く反対していたのは清吉だけだった。


 今思えば、これが良くなかったのかもしれない。皆が俊介を味方する状況が面白くなかったのだろう、父は明らかに意固地になった。


 最終的には「勝手にしろ!」と父がいい放ち。俊介が言われたとおり、勝手にして上京していった。


 母が生きていた頃は、そんな二人の外交を復興させようとあれこれ気を揉んでいたのだが、その母も二年前に亡くなり今では完全な膠着状態になってしまっている。


 正直友恵から見れば二人とも、単に意地の張り合いをしているだけにしか見えないわけだが、言ったところで認めやしまい。


 それにしても――あの俊介が結婚かぁ。


 肉じゃがを口に入れながら、ぼんやりと考える。


 いったい、どんな娘を連れてくるのだろうか? どうしよう髪を金髪にした、ギャルっぽい娘を連れてきたら。


 もしそんな感じの娘だったら。あたし、その娘を素直に歓迎できる自信無いなぁ。


 人を見た目で判断してはいけません。だなんて、使い古された慣用句だがなんのかんの言って人間、見てくれや体裁は大事なのだ。


 でも、あいつが選んだ相手だもの、めいいっぱい歓迎してあげないと。新しいお茶でも開けておこうか。


 そんなことを考えながら、友恵は夕食を再開した。

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