二十六作
「それでは紀州街道より伊達政宗殿、奈良街道をそのまま進む部隊に直孝。その後方に藤堂殿が続き、街道からそれる形で前田利常殿が進軍をする形になっております。なお、藤堂殿の隊に被害を与えた長宗我部は大阪城の守りにつき、最も警戒すべき真田信繁は茶臼山に陣取っております。真田の対処は歴戦の将である伊達殿にお任せします。これでよろしいでしょうか、父上。」
「秀忠、総大将はおぬしだ。
儂に遠慮なぞいらん。」
「そうですね。義直、おぬしは私の後方に陣取れ。
ないとは思うが寝返った大名等が挟撃を仕掛けてくるかも知れぬ。」
「かしこまりました。」
秀忠様が出陣前の説明を家康様にしている。後詰めとして参戦された義直様の役割は特に重要ではない。
ここまで追い込まれた豊臣に今さら加勢しようとする者などいないだろう。沈む泥舟を誰が拾いにいくものか。
豊臣の味方が増える事などない。まだ若く先日婚儀を済ませたばかりの義直様を矢面に立たせないという秀忠様なりの優しさなのだろう。
そして軍議は進み秀忠様が
「忠直殿、紀州街道より一つ内側の道より進んでください。茶臼山の部隊は基本的に伊達殿にお任せして大阪城に向けたどんどん進軍してください。
大阪城の守りに不安を感じれば真田に隙が生まれるやもしれません。
この戦は豊臣を滅ぼすものであり我らの誰かを失うためのものではありません。
皆、生きて新たな世を作るのにご協力願いたい。
くれぐれもお命を粗末にせぬように。そしてこの戦が幕府の力を見せつける事で反抗する者を減らすものとするために。
いざ!出陣!」
紀州街道にて出陣を待つ伊達軍を除いて集まっていた将達が雄叫びを上げて自陣へと向かっていった。
直孝も出陣の準備をしようとした所を秀忠に呼び止められた。
「直孝、無理はするな。
おぬしは先鋒ではない。前田殿が進軍するための囮のようなものだ。敵は街道から攻めてくると思わせて注意をひけ。もちろん、おぬしの武働きにも期待はしておる。
先程も申したが生きて新たな世を作るのにご協力願いたい。特に私はお前に期待している。
無理せずできそうならやれ。無理なら引いて戦場を見よ。わかったな?」
「承知しております。進む先には内藤・湯浅・木村、そして毛利がおります。
無理はしませんが毛利を引き付ける事で忠直様のご進軍はお助けいたしたいと思っております。
生きて帰り、さらに武働きも秀忠様にお見せいたしましょう。」
「では、ここで誓え!
怪我せず、戦場を駆け、私のもとに戻って参れ。」
「はっ、必ずや!」
直孝は力強く言い、自分の部隊へと向かった。
心配そうに直孝を見る秀忠に後ろから来た藤堂高虎が
「もし何かあっても俺が何とかしてやりますよ。
昨日は助けられちまったんで、借りは早めに返す事にしますよ。」
「おぬしも死ぬなよ。父上が泣いてしまうだろう。」
「家康様の隠居に付き合うのも楽しそうですからね。
まぁ、大丈夫ですよ。若者が俺なんていらないってくらいに駆け抜けていくでしょうから。」
「そうだな。」
馬に乗り、槍を構えて自分の家臣に劇を飛ばす若き武将を二人は本の少しの間見守っていた。




