二十五作
5月5日、二条城に集結していた徳川軍は家康の号令のもとに大和路と河内路に分かれて京を出発した。
戦端は翌日6日から切って落とされた。
大和路を行く伊達政宗・松平忠明ら二万以上の軍の前に寄せ集めであった事もあり連携がとれずに豊臣方が劣勢となった。(道明寺・誉田合戦)
しかし、後攻めに現れた真田・毛利軍により、その勢いも止められた。
河内路を先に進んでいた藤堂高虎は嫌な予感がしていた。八尾の辺りまで進むと霧が濃くなるのを感じた。
高虎は5000の兵を連れていたが、その位置は後方であった。先鋒には長らく仕えてくれていてたくさんの武功をあげてきた藤堂姓を与えるほどに信頼している高刑、良勝、氏勝、桑名吉成がいる。何が起こっても対処できるだろうと考えたそのときだった。銃声が響きその数を増していく。
「奇襲だ!備えよ!」
高虎が叫ぶも、時すでに遅く先鋒の方が崩れていくのが見える。
「一時、後退せよ!
体制を立て直す。負傷者はできるだけ助けよ!」
馬上にいる者は同じ高さの者くらい少し離れていても見つける事ができる。深い霧の中でも幾度と見てきた背中を見つける事ができない。
「長宗我部盛親の部隊のようです。」
「後ろの直孝に伝令を出せ!
部隊を分けて挟撃を狙っているように見せるように進んでくれと。」
「しょ、承知しました。」
伝令が走っていくと入れ替りで先鋒の方から血だらけの者が走ってくる。
「ご、ご報告…」
「どうした?」
「高刑様、良勝様、吉成様お討ち死に。
氏勝様も重傷でございます。」
「この者の手当てをせよ。」
「はっ。」
「殿、高吉様ご来援です。」
「わかった。部隊を建て直せ!」
「はぁ、はぁ、直孝様!
藤堂様より伝令です。
長宗我部の部隊により奇襲を受けた。
長宗我部を挟むような行軍を求むとの事です。」
「何?高虎様は?」
「高虎様は後方におられましたが重臣の方々は多くが討ち死にされたかもしれないと。」
「こちらは部隊を一つ潰した。よし長宗我部に向けて進軍を開始する。おそらく実際には挟撃を狙っている訳ではなく部隊の立て直す時間を稼ぐために長宗我部を退かせる事が狙いだろう。
できるだけこちらの進行が敵に伝わるように騒々しくせよ!藤堂隊の救援にむかうぞ!」
直孝は部隊を分け挟撃部隊に指示を出し、自分は高虎のもとに向かった。
「後方がなにやら騒がしいな。何事だ!?」
「井伊が物凄い勢いでこちらに向かってます。
騒々しい理由までは………」
「直孝め、こちらの意図を組んだか。
井伊の武士達のために道を開けよ!
赤牛が通るぞ!」
高虎は疲弊する中で笑顔を浮かべた。
一方、長宗我部陣営
「何事だ?」
「はっ、木村隊を退けた井伊直孝の部隊がこちらに向かって進軍しております。このままでは藤堂の残存部隊と挟撃されるかもしれません。」
「くそ、もう少しという所で!
全軍に大阪に退くと伝えよ。
我らの死に場所はここではないからな。」
「はっ、全軍撤退!」
「敵兵が退いて行きます。
井伊殿のおかげですな。」
「まったく、成長の早い男だ。
まだ、油断せずにこちらも後退するぞ。
味方部隊と合流するまで気を引き締めろ!」
藤堂隊の被害は大きく、二つの部隊との連戦により疲弊した井伊隊も翌日に任されていた先鋒を断らずを得ない状況となった。
しかし、他の戦場では徳川軍が優勢でこの日は終わったのであった。




