二十三作
「井伊家の兵が合流する度に士気が上がるようだな。
農村の人々が感謝して兵達を送り出してくれるから我らの軍にまで好意的に送り出して貰えているようだ、
実に見事な策だな、直孝。」
名古屋を出発し各地に配していた井伊家の兵は農村でかなり働いたようで見送りも盛大にして貰えていた。
戦に行く兵達に対して農民はあまり良い顔をしない。
戦には兵糧も兵士も必要になり農民からすれば兵糧の徴収や兵士として人手をとられたりしてきた歴史からどちらかと言えば嫌う者が多い。
その行軍が明るい雰囲気である事が家康には経験がなく嬉しさすらあったのだろう。直孝はかしこまり
「いえ、ここまでの効果は想定外です。
兵達が頑張ってくれただけでしょう。」
「直孝、間者の情報は?」
助け船なのか本題に入りたかっただけなのかはわからないが藤堂高虎が聞いた。
「今のところ合流してきた者達から怪しい者はいなかったと報告を受けております。
あちら側に呼応する勢力はあまりないのかもしれませんね。」
「前回、最新式の砲台なども使って完膚なきまでに攻勢を見せたからな。あれと戦う気概のあるものが日本にあとどれくらい残っておるものか……」
家康が寂しそうに言った。
「もう真田くらいでしょう。あとは江戸で留め置かれてる福島正則とかでしょうか。」
高虎が言い家康も
「信長殿なら更に超えた技術を持ち込みそうだ。
秀吉殿なら予想もしない方法で裏をかいて来られたろう。戦国を生きた者達ならばどうにかされたのではと恐怖もするが、秀頼からは何も感じぬな。」
「時代……というものなのでしょう。
我らも既に老兵です。直孝に任せて陣でお茶会でも催しますか?」
「高虎…悪くはないな。
若者が頑張っているところを眺めるのも悪くはない。
だが、此度はしっかりと最後までやりきらねばならぬ。
この戦が儂の最後の戦にしたいのでな。」
「秀忠様に任せて駿府におられても良かったのでは?」
「豊臣の最後は儂が閉じねば、共に時代を生きた秀吉殿に失礼であろう。儂のわがままだが戦国に幕を下ろし平和を実現させる事が徳川家康が成した功績としたいのだ。」
家康が強い決意を持って言い放った。そこに伝令が駆けてきて
「伝令。将軍秀忠様よりの書状にございます。」
「直孝。」
家康の指示で直孝は伝令より書状を受け取った。
「秀忠様の直筆にございます。
秀忠様が到着するまでは開戦はお待ちいただきたいと。」
「まぁ、将軍がいないのに初めては幕府の威厳に関わりますな。よろしいですか?」
高虎が家康に確認をとる。家康も
「無論じゃ。
本軍は秀忠と共におるのだからな。
数で圧倒し降伏者を出しながら秀頼と淀殿を確実に討ち取る。そう返答せよ。」
「承知いたしました。」
直孝は馬からおりて筆をとり、代筆で秀忠に書状を返した。




