二十二作
「殿、先ほどすべての伝令が戻りました。
ご指示通りに配置が完了したとの事です。」
「うむ。伝令に褒美と休養を与えよ。」
直孝が指示をした所に聞き覚えのある声が響く。
「なんだ、何か企んでるのか?」
突然現れた藤堂高虎に家臣は驚きすぎてあたふたとしていた。直孝はそれを見て不憫だなと思いながら、
「来客だ。お茶などお持ちしろ。」
と命令を出した。家臣は落ち着いたようで「はい」と答えて出ていった。直孝は高虎に向かって
「私は慣れてきましたが家臣の中にはあなたへの敬意が強い者もたくさんおりますのでお越しの際は一言頂けると家臣の心臓に良いのですが。」
「悪いな。行動を起こすのに迷いがないのだ。
迷っているうちに大事なものを取りこぼした事があるからな。
……と、これからは気を付けるとして先ほどの話に戻そうか。何を企んでる?」
「ただ兵達の息抜きをしようとしただけですよ。
名古屋から美濃・岐阜方面の農村で人手の足りない所に数人組で手伝いに向かわせました。
名古屋で暇をしているより農村で田畑を耕す方が彼らの本職ですから。」
「なるほど、それにどのような裏があるんだ?」
「ふうー、高虎様には隠せませんね。
目的は三つです。
一つめは先ほど言ったように兵の息抜きです。
二つめは兵達の家族のためです。
この時期に働き手を出して貰ったので、兵達に功績を作り年貢の減免という形で報いようと思います。
働きが認められた者は家臣の家で雇用するとも伝えました。」
「村の者達には何と?」
「義直様のご婚儀祝いに義直様の領地周辺の農村の手伝いを井伊家が無償で行う。手伝う者達の寝床だけご提供頂きたい。と伝えました。
ここに来る道中で私が義直様のご婚儀を祝いに大勢を引き連れているのを見せたので噂が広がっていたのもありすんなりと受け入れて貰えました。」
「なるほど。三つめは?」
「敵の間者、敵兵の捜索と殲滅です。
家康様を安全に京都にお連れするために京都に向かう道中の敵を排除しておこうと思います。
敵がいなければただ田畑を耕し、敵がいれば功績として家臣への取り立てを約束しています。
虚偽の報告や出向いた先での狼藉があった場合はその者は私が合流後に処置を下すとも申し付けました。
彼らが何事もなく田畑を耕すだけの生活を送れている事を願うばかりです。」
「おぬしが怖くなってきたな。
ああ、良い意味でな。」
「褒め言葉と受けとります。
それで高虎様はどのようなご用で?」
「ああ、そうであった。
家康様が此度の礼を言いたいから呼んできてくれと言われたのだ。時に聞きたいのだが、俺って結構偉い方の人間だよな?」
「家康様からすれば家臣の皆様との関係が何も変わられていないのではありませんか?
藤堂高虎はいくら武功をあげようが何万石の大名になろうが藤堂高虎であるとか考えておられそうですね。」
「いや、別にその……文句があるとかじゃなく、周りから見たら恥ずかしそうだなと思ってな。」
照れてるなと直孝は思いこの話を打ち切るために
「では、参りましょうか。家康様をお待たせするわけには参りませんから。」




