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低ポリ囚人の神グラ無双 ~特殊バグを喰らって解像度が限界突破した俺は、情報の暴力で階級社会を粉砕する~  作者: 星島新吾


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20/25

情報食い.10

試練はバスの音と共にやってきた。

移動を繰り返していた俺は、中ポリたちが帰還するバスの近くにまで移動を終え、大型との距離を見計らっていた。


「もしやあの大型……狙いはバスか?」


《プシュコポンポス》の不自然な動きに俺は注視する。

まるで帰りたかったら帰ればいいというような、不自然を醸し出している大型バグに、他の中ポリたちも警戒の色を強めていた。


「みんな!上からの攻撃に気をつけながらバスに乗り込み!」


指揮を執っている秋子の姿が視線に止まる。自分が一番先に帰りたいだろうに、注意喚起をしながらバスの外で号令をかけるその姿は、確かに母親らしくはあった。


彼女の号令に中ポリの執行者たちは緊張な面持ちで次々とバスに乗車して行く。


俺が一人しか助けられなかった仲間を、彼女は次々と助けて行くその姿を、俺は瓦礫の中からずっと観察していた。


彼女の声の掛け方、労わり方、その細部に至るまで彼女のリーダーシップは肩書きでは語れない凄みがある。経験と置かれた環境が彼女にそのスキルを習得させたのだろう。


俺はそれも戦闘データの一つとして記録し続ける。


そして後からビットにこのデータを渡すことを思い出して、頭を抱えた。


「クソッ……このデータ、何としても持ち帰って圧縮したい……」


個人では手に入れることのできないデータ、特に群体指揮が機能しているデータなんてそれこそ超貴重な汎用データ(シルバーデータ)だ。


「このデータさえあれば、もっと仲間との連携が上達するかも知れん」


そうすれば守れた命があったかも知れない。そう思うと、データ集めにも力が入った。


瓦礫から伝わる熱などお構いなしに地面に匍匐して、彼女たちの同行を見守る姿はさながら歴戦の戦場カメラマン───あるいはただの変態にも見えた。


自分を客観視することは恐ろしい。


俺は余計な事を考えず、目の前の状況に意識を集中させた。


昼下がりの陽射しが暗雲から差し込み、埃っぽい空気の中に緊張が漂う。


陽射しを受けた《プシュコポンポス》は神々しさを放ちながらも、その視線は中ポリになく、ただひたすらに破壊の限りを尽くしているようにみえた。


攻撃をされないからやり返さない、そんな人間界のルールを守るような《プシュコポンポス》は、地形の八割を火の海に変え、その炎に炙られるように空中で停滞した。その異変に一番に気づいたのは、多分俺だったと思われる。


「アイツ……炎を食ってるのか……?」


燃え上がる地上を見ながら、愉悦にでも浸っているのかと思いきや、その炎が柱となって空中に浮かぶ《プシュコポンポス》の体に吸収されて行っているようにみえた。


俺は目の倍率機能を上げ、上空の《プシュコポンポス》を確認する。


額には【Ver.Ⅱ】の文字だ。


「アイツの進化条件は火を食らうことか!」


《プシュコポンポス》の目的は外敵の排除以上に、自分自身の強化にあった。


火柱から熱のエネルギーを吸収することによって自分を羽化させる。そのために中ポリを無視して、アーケード街を火の海に変えているようだった。


「いやでも……どうにもできないぞ!」


中ポリは殆ど帰りのバスに乗ってしまった。


最後に残った秋子がバスに乗り込み、プシュゥー、と扉が閉まる。

発進と同時に《プシュコポンポス》が熱線をバスにぶつけたが、バスはそれを反射させて《プシュコポンポス》にぶつけると、スピードを出して国道まで逃げて行く。


「わっ、ちょっと待って貰いたいんだが……もう遅かったな」


ただ成長するのを傍観することしかできない俺の耳に、次は新しいバスの音が聞こえてくる。流線形のイカしたフォルムは言うまでもなく、黒色に塗られた車体には黄金の装飾が品のある豪華さを演出している。高ポリ組のバスだ。


降りてきたのは三人、キャシーともう二人、一人はキャシーに勝るとも劣らない高解像度の執行者だった。


少女漫画のようなキラキラとした大きな瞳は睫毛の一本一本が物理演算で動き、それとは対照的なパンクなファッションが目立つ。


体にフィットした鋲付きの革ジャンに下はホットパンツに、左右非対称な網タイツ。

髪は派手なネオンマゼンダにパープルのインナーカラーを入れた、乱雑なポニーテール。

指先で薬莢を弄び、もう片方の手でバタフライナイフを舐めるその様は、典型的な悪者のようだ。


彼女はキャシーの後ろからバスに降りてくると、辺りを見渡して次いでに《プシュコポンポス》を仰ぎ見た。


「キャシーちゃん、あの子チョ~可愛くない⁉」


キャーかわいいー、と瞬きしながら目でシャッターを切るギャル。今から殺す相手を写真でとる猟奇的な趣味があるようだった。


「カレンさんそれよりも、大事なことを忘れてますよ」


「え? ……あー、なんだっけ。いるの? ほんとに」


「はい! 間違いありませんよ! アルムヴィルに到着した避難民の少年からの情報ですから! 灰色の髪をした低ポリの男性、正しく先日お話した姫守さんです!」


キャシーは目を輝かせながら、なぜか俺の話をしている。

そして話の中に出てきた避難民の少年とはブーシェのことだろう。

彼が無事に町に辿りついたことが何よりも嬉しかった。


「非番だったくせに、来るほどなの?……めっちゃ好きじゃん」


彼女は懐のホルダーに入れた《リボルバー》を抜きながら、クルクルとトリガーに指を挟んで回して遊んでいる。見た目もさることながら、その武器も高ポリにしか持つことを許されない後負荷の武器だった。


「あっ! 姫守さん! やっぱり生き残っていらっしゃいましたね!」


別の方向から声が聞こえてくる。


視線を横にずらすと、グポーン、と兜から赤く目を光らせ、周囲のスキャンをしていたキャシーと目が合った。


「よかった~! 姫守さんならまたどこかの瓦礫に隠れているだろうと思いました!今度は見つけられましたよ!」


前回ビルに隠れて、最後の最後まで出てこなかった時のことをまだ根に持っているのだろうか。


重い鎧を着こんだまま、ゆらゆらと腰を揺らしながら手を振ってくるキャシーに俺は身構えた。もう片方の手で握られた大きな薙刀が獲物を求めて、鈍く光っているように見えたからだ。


「あの人がキャシーちゃんの言ってた低ポリ?」


「はい! 不思議生命体さんの姫守凌空さんです! クールでカッコいいです!」


「……下手したら視界から、いつの間にか消えてそうな人だね」


「そこがまた良いんです! 細マッチョなのに、普段は……フフッ……モザイクみたいに目立たないんですよ。フフッ……ほんと、大好き……」


二人とも情報量があり過ぎて、話について行けるか俺は心配になった。

でもこれだけは言える。

コイツらは二人とも性格が悪い。






リアクションされると喜びます。

それではまた、次のお話でお会いしましょう。(´・ω・)ノシ

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